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ヒトとキツネの異世界黙示録Ⅱ  作者: 遊戯九尾
第二部第五章 蒼天のブレイブズ

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VS円卓 sideフィアネリス

「何だぁ? 勇者と戦えると思ったら、随分と小綺麗な天使が出てきたな」


 コキコキと首を鳴らしながら目の前に立つキンベルに対し、フィアネリスは空から舞い降りるとお辞儀して礼をする。


「失礼ながら、マスター達のところへは行かせません、私は熾の天使フィアネリスと申します。以後お見知り置きを」


 翼をたたみ、最大級の礼をするが、その時、キンベルの持っていた鎖付きの斧が彼女を掠めた。


「天使如きの名前なんて誰が覚えるか、道具なら道具らしく黙って使われてればいいんだ」

「あら、失礼、何か気に障りましたか?」


 フィアネリスはクククと笑うが、キンベルは睨みつけてくる。


「俺の事が誰かわかってて言ってるのか?」

「いいえ、全く存じません。ペットシッターのキャンドルさんでしたっけ?」

「魔物使いのキンベルだ! てめぇ! わざと俺の名前を間違えたな!」


 今度は錘が飛んでくるが、フィアネリスは寸前で避ける。魔物使いとは言ったが、なかなか破壊力のある攻撃だ、彼単体で見ても普通の勇者からしたら脅威だろう。


「まぁいい、大口を叩けるのもいつまで持つか、今に俺の可愛い魔物ちゃん達が、テメェを貪り食うのだからな! 行け! ガルム! フェンリル!」


 そう言ってキンベルは狼型の大きな魔物を二体解き放ってきた。それがフィアネリスへと襲いかかるが、フィアネリスはビットと剣を構えると叫んだ。


「お座り!」


 剣からの波動砲と、ビットからの斉射で、前脚の片方を撃ち抜き、狼型の魔物二体を転ばせる。


「俺の魔物ちゃん達が⁉︎ 捕獲に苦労した魔物なのに!」

「おやおや失礼、傷物にしてしまいましたか? 病院代はいくら払えばよろしいでしょうか? いい動物病院を紹介しますので」

「抜かせ! ガルム! フェンリル! 奴を噛み砕け!」


 転んでから立ち上がった狼の魔物達は、フィアネリスを噛みつこうとする。フィアネリスはそれをフォースシールドで防ぐが、ガジガジと噛まれ、防御が徐々に崩されていく。


「ははは! いいぞその調子だ! そのまま鶏肉として食ってしまえ!」


 キンベルが高笑いをするが、だがフィアネリスにとってこの程度は想定内、機剣ホワイトレクイエムを構えると、一回転して振り払った。

 そして彼女は空へと飛び立つ。


「空中戦に持ち込めば、こちらに対抗できる魔物も減るのでは?」

「空中なら安心かと思ったか? 残念だったな! レッドドラゴン! 相手してやれ!」


 キンベルが檻を召喚すると、中からかなりの大きさの赤いドラゴンが出てきた。大きさだけで言えば竜の国のドラゴンに比類できるだろう。

 飛び上がったドラゴンは真っ直ぐにフィアネリスに飛びたっていく。


「いいでしょう、空を制するのがどちらか、証明して見せましょう」


 フィアネリスは火球を吐いてくるドラゴンの攻撃をするすると避けながら飛び、宙を綺麗に舞う。伊達に長年友達に付き合わされて空を飛んではいない。飛行技術は出来上がっていた。


「せーのっ!」


 フィアネリスの剣が、ドラゴンの背を切り裂く。ドラゴンとしては二流の物か、魚を捌くときのようにスムーズに刃が通った。


「まけるな! 叩き落としてやれ!」


 次の瞬間、ドラゴンが勢いよく尻尾で叩き、フィアネリスを地上へ落とした。彼女は地面に勢いよくぶつかるが、ダメージはフレームが軋んだ程度、まだまだ戦えた。だが地上に落とされたと言うことは、それ即ち狼の魔物に狙われることを意味する。


「っ!」


 フィアネリスはすぐさま飛び退くと、魔物がフィアネリスのいたところを噛み付いていた。

 すると、フィアネリスの左腕が、斧に絡み取られ、鎖で巻きつけられる。


「へへへ、捕まえたぜ! これでお前は逃げられねぇ!」


 キンベルが力強く引っ張ると、空中に逃げようとするフィアネリスの体が引っ張られる。フィアネリスの飛行出力を上げて引き剥がそうとするも、キンベルの方が力が上か、どんどん引き寄せられた。


「お前達! 餌の時間だ! たんと食えよ!」


 空中からはドラゴンが、地上からは狼型の魔物がフィアネリスに襲いかかる。するとフィアネリスは思わぬ行動に出た。


「左腕をパージ!」


 何と自らコマンドを入力し、左腕を切り離したのだ。それを見た途端、キンベルは唖然とし、同時に力任せに引っ張った反動で転んだ。


「お前⁉︎ ただの天使じゃなかったのかよ⁉︎」

「おや、言ってませんでしたっけ? そう言えば。私は機械の天使、たとえ片腕が失われてもお構いなしなのです」

「美味しい鶏肉かと思えば、汚ねぇ鉄の塊かよ! こいつらに食わせられねぇなら、壊すまでだ!」


 キンベルはフィアネリスが自切した腕から斧を剥がすと、もう一度斧を投げる。だがフィアネリスはそれをするりと避けると、キンベルに近づいた。


「ぁっ!」

「獲った!」


 フィアネリスは片手に持った剣を振り下ろす。だが、キンベルは鎖を巻きつけていた腕を盾にして防いだ。


「へへへ…惜しかったなぁ! 俺は手負いの獲物でも気は抜かねぇ主義でな、こう言う時に備えているものよ!」

「お見事、ですが、これならどうでしょう」


 フィアネリスからビットが射出され、キンベルの片腕をを切り裂いた。


「ぐっ!」


 キンベルの腕が垂れ下がり、フィアネリスに攻撃のチャンスが再び訪れる。だがキンベルは斧を振り上げては思いっきり振り下ろしてはフィアネリスから距離を取った。


「いてぇ! てめぇ…よくも俺にダメージを与えたな!」

「相手を侮らない貴方には賞賛しますが、少々迂闊でしたね、私にはまだ武器があると」


 フィアネリスは自切した片腕を取ると、もう一度繋ぎ直す。接続された腕は再び動き、シールドを回収した。


「フェアリーの治癒があって良かったぜ……備えあれば何とやらだな」

「ふむ? 貴方、豪傑な見た目の割には意外と慎重派なのですね? そこも評価します」

「伊達に勇者を束ねちゃいねぇからな、だが、テメェもここまでだ」


 キンベルが斧をかざすと、狼の魔物が雷撃を行おうとし、ドラゴンが空から大きな火球を落とそうとする。おそらく大技だろう。


「確実に仕留めにきてますね…」

「そして! テメェはもう逃げられねぇ!」


 気がつくとフィアネリスの下に魔法陣が敷かれており、フィアネリスの足が縛り付けられていた。


「……なるほど、チェックを叩きつけられたわけですか」

「いいや、もうチェックメイトだ! やれ!」


 彼が斧を振り下ろすと、雷撃と火球が落ちてきて、地上が砕け散る。キンベルは勝利を確信した。最大級の一撃だ、彼女も死しただろうと。

 だが……。


「まぁ、所詮はその程度ですよね、私の翼をもぐには、まだ足りない」

「……なっ……ありえねぇ……あの一撃を受けて、無傷⁉︎」


 無傷のフィアネリスが立っていたことに、キンベルは驚愕する。翼一枚ももげずに、彼女は立っていたのだ。


「生憎と天界の技術は進んでおりましてね、魔物を操る程度のチートでは倒せないレベルに防御装甲はアップデートされてます。まぁ、羽一枚焦がす程度には、火力はございましたが、痛くもなんともございません♪」

「バケモノが!」

「そして、今度は私がチェックをかける番です」


 斧と錘が同時に投げられ、フィアネリスを囲うように襲いかかる。だがフィアネリスは盾でそれらを弾き返すと、バク宙で空中へと跳ね上がり、脚部から戦術ミサイルであるバルムンクを撃ち、狼の魔物の頭を吹き飛ばす。更に、チャージしていた波動砲をドラゴンに撃つと、それはドラゴンの心臓を貫通し、空から撃ち落としたのだった。


「たった一瞬で、俺の魔物が! クソォおおおお! お前らも行けぇえええ!」


 その時、召喚された檻の中から大量の魔物が溢れ出てきた。それらがフィアネリスへと一斉に襲いかかる。だがフィアネリスは不敵に笑った。


「見せてあげましょう、決戦兵器(エリミネートデバイス)の本領を。武装限定展開、FCS全てリンク、全武装の照準を設定。火力全開(オープンファイア)!」


 その瞬間、新しい翼のように次々と展開されていった武装が、やがて一つの大きな翼のようになるとやってくる魔物の方に向けて、全火力が集中した。

 対艦槍にビット、フォースシュートの雨霰によって、魔物達全てに風穴が空く。


「嘘だ…俺の魔物達が…全部……」


 魔物達が落ちて散る姿が映る中、キンベルはその奥にいる天使の顔を見て恐怖した。"笑っている"。魔物とは言え、大量の殺戮をして、笑っていたのだ。その姿に、キンベルは、彼女の本質を見てしまった。


「あ、悪魔だ……お前は天使なんかじゃない……殺戮と混沌を呼ぶ、悪魔そのものだ」

「まぁ、悪魔だなんて失礼な、私は善良な天使ですよ、えぇ、まぁ最も、貴方に渡せるものは地獄行きのチケットなのですが」


 フィアネリスは手を掲げると、手に持っていた剣が変形し、一つの長大な砲へと変わっていく。


「ひっひぃいいい! 殺さないでくれぇえええ!」


 どんどん巨大になり、彼女より大きく、長く伸びていく砲を見ては、キンベルは逃げ出す。だが、彼女が易々と逃がしてくれるはずがない。長大な砲の展開が終わると彼女の身の丈の数倍以上ある砲が姿を現した。彼女は構え、地面にアンカーを打ち込むと。その装備の名前を呟く。


「惑星破壊用超長距離砲撃型装備『スターバスター』、この攻撃から、逃れられるとでも?」


 フィアネリスはキンベルにターゲットロックをし、同時に周辺の安全確認を行う。射線上に構造物や民間や戦ってる人はいない。撃つなら今だと。


「この対局、チェックメイトです。対戦ありがとうございました♪」

「死にたくな……⁉︎」


 次の瞬間、最低限の威力で収束された波動砲が砲撃されると、キンベルの姿は、跡形もなく消し飛ばされたのだった。

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