反撃の狼煙
一日が経ち、永戸達が反撃の準備をしていると。フィアネリスから招集された。
「では、作戦について説明します。今回行われるのは、ここにいるレジスタンス全員を使った大規模反抗作戦です。やる事は、レジスタンス側は複数人でチームを組み、王国側の勇者と激突し、最終的に王城と、勇者達の居所の制圧をしてもらいます。王城の方には召喚陣がありますのでそれの破壊を、勇者達の居所には、天使達が囚われてます。彼女達を救出してあげてください」
レジスタンスに説明を終えると、その中の一人が、フィアネリスに向けて手を挙げた。
「質問、円卓のメンバーはどうするんだ?」
「円卓に関しては、主要の3人は我々5人がそれぞれ相手をすることにします。マスターと神癒奈さんがアディール、私がキンベル、火乃香とアンはティアを相手にします。その他の円卓は皆様が戦ってください。なお、撃破次第、我々も制圧に参加します」
それを聞くとレジスタンス側はざわついた。本当に彼女達だけであのアディール達を個別に倒せるのかと。
「心配せずとも、我々はこの手の相手のプロです。必ず撃破してきますので、任せてください」
そうして作戦が決定され、それぞれが所定の位置へと動き出す。そんな中だった、転移で黒いケースが永戸の前に届いたのだった。
「お父さん、もしかしてそれが…」
「あぁ、今回俺に支給される武装らしい」
火乃香に言われる中永戸がケースの中を開けると、そこにはリヴァンジェンスⅣと、先端が血の色に染め上げられた弾丸『血清』が12発入っていた。
永戸はケースからリヴァンジェンスⅣを取ってはその中に聖剣を差し込むと、バスターマグナムモードへの変形をチェックする。いざ変形させてみると、ちょっとしたライフル並みのサイズとなった。
「で…こいつが今回のキモになる決戦兵器…の試作型か」
永戸が手に取った弾丸、血清だが、確かに白銀と自身の血が使われた弾丸のようだ。だがしかしこれが果たして効果があるのかは試してみないとわからない、12発をそれぞれブレイズエッジⅡに装填すると、ホルスターにさした。
感覚を確かめ、転移ゲートの前に立つと、永戸は一同に振り返っては言う。
「分かってはいるだろうが、ここから先は、勇者同士の殺し合いだ、気が抜けたやつから死ぬ。この国の未来をよりよくするために、戦う覚悟はあるか?」
『おーっ!』
永戸の言葉に勇者達が雄叫びをあげる。その覚悟だと永戸はほくそ笑むと、最後に一言言った。
「よし、ならば、見せてやろうじゃないか、弱者にも強者を屠る牙があるってことを。研ぎ続けた鋭い牙は、やがて巨大な獲物を噛みちぎるほどの威力を持つようになることを、出撃!」
永戸達が走りだすと、勇者達もついていき王都の各地に広がり始める
「それでは皆様、ご健闘をお祈りします」
「お父さん、お母さん、頑張って!」
「まっ、適当に頑張って生きて帰ろう」
「あぁ、みんな頑張れよ」
「必ず勝ちましょう!」
永戸達はそれぞれのチームに分かれると、そのチームごとにフィアネリスの指示を受けて動く。
Eフォンのマップには指定された勇者の位置情報が載っており、すぐに向かえた。
永戸達が走るごとに、王都の各地で戦闘が始まり、皆が勇猛果敢に戦いだす。
そして永戸達も目的地に着くと、ターゲットはいた。
「…来たか、待ってたよ」
マントを翻しながら永戸達と向き合う王国側の勇者の男、アディールが喜ばしそうな顔で立つ。
「英雄物語には、やはり英雄物語が対峙するのが一番だ」
「あ?」
「君達が英雄として戦う物語があるように、僕もこうして勇者として戦う物語があるのさ」
演劇をするように仰々しいポーズを取るアディール。アディールは続けてこう言った。
「君達もそうだろう? 数多の英雄譚を終わらせてきた君達なら分かるはずだ。歪んだ誰かの物語は、相応の力で、誰かの手で終わらせられるものだと!」
手を広げては顔を上げて笑うアディール。
「だから僕が終わらせる。君達の泥にまみれ、足掻いてきた物語を、僕が終わらせる。そして僕が、異世界黙示録の物語を継ぐんだ! 『ヒトの異世界英雄譚』ってさ! どうだい? ファンとしては申し分ない展開だろう」
その直後だった、永戸からの零を纏ったパンチが、アディールに炸裂したのだ。アディールは一回転しながら壁に激突するが、永戸の拳に手応えはなかった。だがそれでも構わない、"物理攻撃ができること"さえ確認できれば
「……言いたかったことはそれだけか?」
永戸が殺気の混じった目つきでアディールを睨む。アディールは壁から降りてくるが、殴られた跡があっても怪我をした様子はなかった。
「痛いじゃないか、能力がなかったら僕は死んでいた」
アディールはほくそ笑む、だが永戸は睨むのをやめない。
「さっきから訳のわからないことばかりゴタゴタ言って、意味が分からない、だが一つ聞きたいことがある、俺たちが世界を守るためなら、ならお前はなんのために戦っている?」
永戸のその言葉でアディールが目を見開いた。それは理解が及ばないことへの驚愕だろうか。
「何って、それは僕も世界を救うために…!」
「違うな! 今の話を聞いて、それはないと感じた! お前は世界を守るために戦ってるんじゃない」
「なら僕は何のために戦ってると言うんだ!」
アディールが焦るようにそう聞くと、永戸は静かに答えた。
「ただ、己が欲望のためだけに戦ってる、哀れな愚者だ。俺たちを倒そうとするのも、その自分の物語に拍車をかけるためとか、そんな理由だろう」
「僕は世界を守る勇者だ! 世界を守るのは、当然の義務じゃないか!」
「なら問おう! お前に世界を背負えるだけの度量があるか!」
永戸達も、ただ戦うだけの人生であったわけではない。時に世界の破滅を見届け、時に世界を救う運命を背負わされた。彼らはそんな中で葛藤や苦悩を持ちつつ、世界の、いや、多くの生き物達の運命を背負ってきたのだ。
だが目の前の男はどうだ? 永戸を超えるだのなんだのとほざくばかりで世界を救う覚悟などこれっぽっちも持ちやしない。ただの地位と名声の為に戦うだけの哀れな男だ。
アディールは英雄達の言葉に、一歩二歩と下がる。
「黙れ! たかが人を殺して英雄になったくらいの男が! 僕に語るな!」
「たかが? お前ならわかってるはずだ。俺のファンだとして、俺たちが今まで、どんな戦いをしてきたかを」
「っ⁉︎」
アディールは返す言葉を失った。永戸の重みのあるその言葉と目の前の脅威を恐れぬ胆力に。その覇気に、アディールは恐怖するかのように剣を抜き、構える。
「黙れ黙れ! 黙れ! 僕は勇者だ! 世界を救う英雄なんだ! こんなところでくたばる者じゃない!」
「ならばこちらも、全力を持って相手するとしよう、改めて言うぞ、俺の名前は陽宮永戸、多くの英雄を殺してきた英雄殺しで、そしてこれから、お前を殺す者だ、行くぞ、神癒奈」
「はい!」
二人で構えると、永戸と神癒奈はアディールに挑むのだった。




