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ヒトとキツネの異世界黙示録Ⅱ  作者: 遊戯九尾
第二部第五章 蒼天のブレイブズ

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外道の街

 その後、城にて一晩を過ごした永戸達は、イリエルによって改めて呼ばれ、転移ゲートが用意された。


「この先が王都です…街にはあちこちで勇者達が待ち構えてますので、くれぐれもご注意ください」

「わかった、ここまでありがとうな」


 イリエルに挨拶をすると転移ゲートに入りかけるが、その時、ふと、フィアネリスはイリエルに伝えた。


「王都を制圧したら天使間の通信で伝えます、救難信号と違って伝わりやすいと思うので、私の周波数を覚えておいてください」

「分かりました。健闘を祈ります…」


 今度こそ別れると、永戸達は南にある国、王国の王都へと入ったのだった。


「偽装は大丈夫か?」

「大丈夫です、皆装備してますね」


 偽装装備がしっかり起動し、永戸達は一つの旅人の一団に偽装される。武器なども隠されており、外見だけだと四課の者だとわからなくなっていた。


「これすごいね、私達、見た目じゃわからなくなったよ」

「こういうところで四課の衣装は目立つからな、これで隠すのがちょうどいいんだ」


 そうして街に出ると、見たところ普通の街だった。ただ一つ違うとするならば…。


「なんか、皆辛気くさい」


 アンフェリアが感じた違和感を言う。道行く人から感じられたこと、それは、皆笑顔が消えていて、何かに怯えるかのように過ごしていた。


「確かに、なんだかみんな、我慢してるように見えるね」


 火乃香もその違和感に気づくが、その時、フィアネリスに止められた。


「頭を下げてください」

「えっ?」

「見られてます」


 フィアネリスが目配せをすると、その先に、煌びやかな装備をした勇者らしき人物がいた。こちらを見てはギラついた目で品定めをしている。


「……何あれ、怖い」

「黙って俯き、静かに反転、その後移動しましょう、人の多い方へ」


 ゆっくりと俯き、振り返ると、永戸達は移動し始めた。だが、その勇者は、一定距離を保ちながら、こちらをゆっくりと追ってきていた。


「センパイ、ちょっと不味いかも、あいつ、追ってきてる」

「気づかないふりを続けてください。人混みの中にはいったら足早に…撒くのです」


 歩みは止めず、永戸達は商店街の方へ行き、人混みの中に隠れる。これで撒いたかと思うが、今度は別の勇者らしきものがこちらを睨んできていた。


「…なんで警戒されてるの? 私達、偽装は完璧なはずでしょ?」

「神癒奈やフィーネ達も素性を隠してるのに、こうも警戒されるだなんて、何かおかしいぞ」


 そうして歩いていると、勇者二名に正面を塞がれた。

 振り返ると、先ほど撒いた勇者が追いついてきていた。


「俺たちに何か用ですか?」


 永戸はいつもの吟遊詩人営業スマイルで勇者達と話す。周囲の人達は明らかにこちらを避けて進む中、勇者は言った。


「お前ら、ここらでは見ねぇ顔だな? 男一人が女四人を侍らせて、羨ましいじゃねぇか」

「彼女達は仕事仲間です。侍らせてる関係では…」

「あぁ? なんだお前タマ無しか? こんな綺麗な女連れてて欲情しないわけねぇよなぁ?」


 下卑た笑みを浮かべながら勇者の一人は神癒奈を触ろうとする。だがそこで、永戸が手を払った。


「彼女に触れないでほしい。これでも、恋人なんだ」

「恋人? なんだ、タマ無しかと思えば、ピュアな童貞ちゃんかよ」

「恋人か、いいじゃん、奪いようがあって、そそる」


 勇者達が近寄っては彼女達を舐め回すように見る。その様子に、火乃香は初めて感じた恐怖に震え、アンフェリアは目を細めた。


「キモい目でこっちを見ないでくれる? それに、道を開けて、あたし達はただの旅人なんだから」

「それはできねぇ相談だ、俺たちは王国から密命を受けてなぁ、役立たずの裏切り者の勇者達とその仲間を探しては捕まえるのが役目なんだ。お前ら、姿は普通の人だが、感じるなぁ、血の匂いを」

「……」


 こちらの正体に気付かれかけてることに、永戸は少し焦る。偽装装備は完璧に機能している。だが彼らの能力か、それとも本能か、そのどちらかが永戸達が危険な存在だと察知していた。


「まぁいい、どっちにしろ、こんな綺麗な女がいるなら、奪い取るまでだ」


 すると勇者は禍々しい装飾のタリズマンを出した。それを見た途端、フィアネリスは察した。


「魅了(チャーム)の呪具です! 全員! 目を塞いで!」

「もう遅い、お前ら、俺たちの女になれ!」


 その言葉でタリズマンが輝くと、永戸以外のメンバーが、動かなくなる。


「くへへ…呪具の効果は効いたらしいな。残念だったなぁ、恋人は俺のものだ」


 勇者がそういうと、動かなくなった神癒奈の胸に手を伸ばす。だが、自体は思わぬ方へ進む。勇者の手が、動かなくなったはずの神癒奈によって掴まれた。


「あん?」

「この程度で、私を御せられると本気で思ってたのですか?」


 次の瞬間、ゴキっと骨が折れる音が聞こえ、勇者の腕があらぬ方向に曲げられた。


「ぎゃああああ! な、なんでだ⁉︎ 呪具は効いたはず!」

「古来より私達(焔月)は、人を誑かし、化かし、時に騙してきた存在。たかだか安物の呪具の魅了程度、私たちの前では効きやしません」


 落とした魅了の呪具を神癒奈が踏みつけ、燃やして破壊すると、他の者の魅了が解ける。一方で、火乃香も魅了を受けてなかったのか、魅了が解けたアンフェリアを支えた。


「アン、大丈夫?」

「危なかった…神癒奈先輩がいなかったらあたし、どうなってたんだろう」

「危うく私も取り込まれる所でした、神癒奈さん、感謝します」


 フィアネリスとアンフェリアが安心する中、神癒奈は勇者と向き合う。


「こうなりゃもう容赦はしねぇ! 全員ひっとらえて奴隷にでもしてやる!」


 勇者達が剣を抜くが、永戸達は剣を抜くまでもなく、永戸が手に持っていたスモークグレネードを地面に叩きつけると、起爆させては煙を起こした。


「けほっけほっ! 野郎!」

「全員! 逃げるぞ!」


 永戸達は走りだし、勇者達から逃げる。だが勇者達も永戸達を逃す気はないのか、高速で追いかけてきていた。


「どうしますか⁉︎」

「イリエルに連絡するんだ! 追われていると!」


 永戸はフィアネリスに指示を出すと、ひたすら五人で逃げる。街の中を走り回っているが、土地勘は向こうのほうが上だ、すぐに別の勇者に回り込まれ、永戸達はどんどん逃げ場を失う。


「そっちはダメです! こちらの道を!」


 フィアネリスが、勇者達の動きを先読みして逃げ道を考えるが、勇者達に道を塞がれ、追い込まれていった。そして……。


「前!」


 火乃香の言葉で永戸達が止まる。前には勇者数名が立ち、後ろにも何人か勇者達が追いついてきていた。どんどん勇者が集まると、永戸達を囲む。


「こいつらか? 怪しい連中というのは?」


 すると、勇者の一団の中から、容姿端麗な一人の男がカツカツと鎧を揺らしながら歩いてきた。


「一つ、挨拶をしておこう、僕の名前はアディール。この国の勇者筆頭だ、この国へようこそ、反逆者諸君」


 にっと見下すように笑う彼の姿を見て、永戸達は焦りを感じつつ、向き合うのだった。

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