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ヒトとキツネの異世界黙示録Ⅱ  作者: 遊戯九尾
第二部第五章 蒼天のブレイブズ

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雪、氷、極寒の地にて…

 ホワイトアウトしそうな雪の景色の中、全身厚着をした者達が歩く…。

 ここは極寒の雪の地、遠くには氷河が見え、肌を突き刺す寒い空気は一団の気力を削ぐ。


「なんで…こんなところで仕事あるんですか⁉︎ センパイ!」


 凍りついた羽を定期的に振っては氷を落とすと、一人の天使が言う。


「し、仕方がないでしょう? 依頼があるならどこへでも出張するのが我々四課流ですから!」


 もう一人の天使も、体を震わせながら歩く。


「寒い寒いと思うから寒いんだよ! 寒くないって思えば…やっぱクソ寒いよ!」


 一団の前を歩く男は、一番分厚い服を着て歩く。普段からコートを着込んでいる彼だが、今はより着込み、寒さに耐えていた。


「そんなに寒いですか? まぁ確かにちょっと寒いとは思いますけど」

「お母さん、お父さん達はお母さんと違って寒さに弱いんだよ? フィーネだって震えてるもん」


 そんな中二人の狐は、いつもよりちょっと着込む程度で歩いていた。あまり寒くないのか、ほっと一息をつくと、白い息が出る事に、少し楽しさを覚える。

 そんな一団がなぜこんなところに来る事になったのか、時は少し前に遡る。


 ーーー


「というわけで、これが君たちの新しいオフィスだ」


 新しくなった四課のオフィスは、以前よりさらに広々としたオフィスだった。第二支部のメンバーや、火乃香やアンフェリア達を迎えてもなお、広さを誇る広々とした空間が用意された。武器庫も給湯室も備わっていて、オマケにちょっとくつろげるソファーと椅子まで用意された。


「おー! これがフロー達のにゅーわーきんぐすぺーすでありますな⁉︎」


 フローレアがソファーでゴロゴロしながら喜ぶ様を皆で見る。


「ここまで来るといっぱしの部隊だな…」

「あぁ、英雄達の活躍のおかげだ」


 クレスとランジーはそれぞれの椅子に座ると、コーヒーをいただく。


「パソコンも新しいのに変わってますね」

「気遣いか他の課の差し入れまである」

「椅子も前よりふかふか、心地いいな」


 メルトはパソコンをカタカタと弄り、南雲は差し入れの飴を取っては舐め、煉禍は椅子に座り込む。第二支部メンバーが満喫する中、ユリウスはさて、と早速仕事の話をする。


「では、本日届いた依頼を頼む事にしよう、本日の依頼はここの異世界において、転生、並びに転移した勇者達の活動が活発化している、その調査に赴いてほしい」

「またろくでもない依頼ですね? 課長、その勇者達がまた問題を起こしたのですか?」


 永戸はオフィスは変わってもまたいつもの汚れ仕事かと「やれやれまた自分の出番か」と重い腰を上げる。

 だがユリウスからは意外な言葉が出た。


「"半分は"そうだね」

「半分? 桐枝の時みたいな"全員"ではなく?」


 不思議に思った永戸が聞き返す。

 いつもなら「この勇者が問題を起こしている殺してこい」で済むが、今回は集団という例だけでなく、明確に"半分"と定義された。


「うむ、それが、現地の勇者達から直接依頼が来てね、我々に助けてほしいとコールが来た」

「勇者達からの依頼?」


 これまた珍しい。勇者が問題を起こしているならともかく、勇者に助けを求められるのは珍しい例だった。


「それで? その内容は?」

「それが…現地の気象の影響か、助けてほしいまでしか受信できなかった。イストリアのない世界ゆえにね」

「…ちなみにその場所ってどこです?」


 永戸が嫌な予感を感じとり聞くが、ユリウスが次言った言葉で、永戸達は文字通り凍りつくこととなる。


「北極圏、だーれも開拓しようとしない僻地から来た」


 ーーー


 というわけで現在、彼らは北極圏を彷徨う事になっていた。


「冷てぇえええ! 吹雪だぁあああ!」


 永戸が突然狂ったように叫ぶ。


「かぁさぁあああん! ぼぉくはいま北極圏にいまぁあああす! 北極圏は! 今日も吹雪でぇえええす!」


 寒さでとうとう狂ったのかと神癒奈が心配になる中、永戸は寒さに耐えながら歩く。


「気が済みましたか?」

「気が済んだよ」


 永戸が寒さに耐える姿に、フィアネリスも涙を禁じ得ない、だがここで涙を流すと涙まで凍りつく。正真正銘の凍てつく大地にいた。


「本当にこんなところに勇者がいるのかよ! もう帰りたい!」


 永戸があまりの寒さにギブアップしたがるも、仕事だから許されはしない、と、その時だった。


「前見てください! 何か建物のようなものが見えますよ!」


 一同はその方へ必死に歩き出す。そうして進んでいくと、ちょっとした大きな城が見えたのだった。


「こんな所に…」

「お城?」


 あまりの場違いさに二人はきょとんとする。城の門はしまっていて、開けられそうにもなかった。

 ひとまず永戸はどんどんと勢いよくノックする。


「そこに誰かいるかー⁉︎」


 永戸が叫んでも、悲しいかな吹雪の音でそれが掻き消えてしまう。だが、反応はあったのか、ガチャリと門の鍵が開けられ、中から男の人が出てきた。


「君達は?」

「い、いいいイストリア異世界特別調査隊四課の者だ! 勇者達からの依頼を受けてここにきたが何か知っているか?」


 震えながら永戸は手帳を見せる。するとその者は顔を明るくすると永戸達を手招きした。


「イストリアの人だ! よく来てくれました! この僻地の吹雪は寒かったでしょう! どうぞ中へ!」

「本当に⁉︎ 助かったぁ!」


 どうやら依頼主達のいる場所だったようで、永戸達は寒さから逃げるべく、駆け込むように城の中へ入ったのだった。

 城の中は石造りであるにもかかわらず、各所で焚き火がされており、寒さは和らいだ。


「まずはスープでも飲んで、体を温めてください」

「た、たすかる……」


 永戸達はスープを受け取ると、少しずつ飲んだ。味は薄いが、まろやかな風味で、親しみやすい味をしたスープだ。


「…なぜこのような所に住んでいらっしゃるのですか?」


 まず出てきた質問がそれだった。フィアネリスもこの寒さには応えたのか、因縁をつけるように聞いた。


「それは……ひとまず、天使様を呼んでくるので、少々お待ちを」


 そう言うと、男は城の奥へと行ってしまった。


「流石に寒そうですし、もう少し温めてあげますよ、『狐火』」

『はぁ…温まる…』


 ぽっぽっと狐の焔が現れると、永戸やフィアネリス、アンフェリアの前まで行っては彼らを温めた。外は相変わらず吹雪が横薙ぎに吹いているが、今この場では暖かく落ち着けそうだった。

 すると、男は先ほど言っていた天使を連れてやってきた…が、その天使の姿は、彼らの予想とははるかに違っていた。


「貴方達が、ええと……私達を助けにきてくれたイストリアの方々なのですね? ボクはイリエル。ここの勇者達の啓示を担当しています……」


 その天使の姿は、フィアネリス達とは違う、とても見窄らしい格好をした天使なのだった。

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