終末を呼ぶ乙女
神癒奈達が戦う一方、空中では、フィアネリス単機と他の沢山の天使達が激しい空戦を繰り広げていた。
「なんだあの天使⁉︎ 墜とせない!」
「こっちとの戦力差は何倍もあるというのに、一撃も擦りやしない!」
マイルズ側の天使がそんなことを叫ぶ。大量の天使が都市の防衛戦力が迎撃する中、飛び交う。そんな中でフィアネリスは、空を自由に飛んでいた。誰よりも高く、誰よりも速く、
「尾翼のマークを確認! ……なんだこのマーク、終末のラッパに、翼⁉︎ ラグナロクを表す機体だと言うのか!」
フィアネリスの装備の尾翼には、新たにマークが描かれていた。翼の乙女がラッパを吹くと言うエンブレム。それに対して、天使達は気味悪がった。
「捉えた! 墜ちろ!」
ガンが放たれるが、フィアネリスはバレルロールでそれを避けると、背後につき、波動砲で消し飛ばした。
「くそっ! また一人やられた!」
「どれだけ喰らい付いても、たった一機でこの状況で舞い続ける……奴は、終末の使いだ!」
彼女達がそんなことを言う中、無線では、鼻歌が聞こえる。とても心地よく空を飛び、散歩気分で戦う、彼女の歌声が。
「化け物…がぁ!」
また一人、また一人と天使達が墜ちる。都市の制空権を握っているのはマイルズ側のはずなのに、その天使は単機でひたすら舞い続ける。時に空を切り裂き、時に竜鳥を描くように。その翼は戦い続ける。
「空は自由でいいですね、この青空の下では、何もかもが等しく小さく、儚い存在のように思えます」
誰もいない中、天使はそんなことを言う。通信を聞いた天使達は思った。"馬鹿げている"と。
この状況下で、空を飛ぶことを彼女は楽しんでいる。そのことに、天使達は恐怖を感じた。
「しかし、私一人だけの空というのもつまらないのではないでしょうか? 一人でピアノを弾くよりはたくさんの仲間とオーケストラを楽しみたいですねぇ、そうでしょう?」
「奴の後ろについた! 今度は波動砲で消し飛ばしてやる!」
背後についた天使が、対艦槍を輝かせる。その時だった。
高高度からビームが飛んできて、フィアネリスの後ろについた天使を撃ち落としたのだ。
「ようやく到着しましたか、待ちくたびれましたよ」
フィアネリスは高高度を見上げる。すると、通信機越しに音楽を流しながら、声が聞こえてきた。
「大丈夫ですか? センパイ」
「えぇ、私は五体満足です、翼の修復は終わったようですね、アン」
高高度からの狙撃はアンフェリアからの狙撃だった。
この日、アンフェリアは四課にはおらず、天界に翼の修復の経過観察に行っていた。翼は完全に修復され、空が飛べることが確認された。そして、検査を終えると、都市に天使達がきていると情報が通達され、彼女はやってきたのだ。
「ギガ波動砲精度確認よし、IFF確認。ラグナロック2、これより戦線に入る」
バイザーを持ち上げると、アンフェリアはイヤホンから流れる音楽を心地よさそうに聞きながら。都市上空まで急降下を始める。
「天使が、もう一体⁉︎」
高高度からの狙撃で一体ずつ墜とされる中、マイルズ側の天使は脅威を確認する。
「いや、あいつだけではない! この反応は⁉︎」
その時、フィアネリスのHUDに映ったレーダーに、多数の機影が確認された。識別からして友軍機、二個小隊が来ていた。
「こちらラストダンサー隊、ラグナロック1、貴方の戦いに参加してもよろしいでしょうか?」
「ええ、構いません、空を飛ぶのは多い方が楽しいですからね」
一つ目の小隊は、最終究極互換機のラストダンサー隊、アステリスが率いる部隊だった。
「こちらアローヘッド隊、これよりゼウス神の下した裁きを実行へと移します。ラグナロック1、空は貴方だけの物ではありませんよ」
「おや? お堅い天使長様直々にやってきたのですか? これは派手な戦いになりそうですね」
二つ目は最も旧式の装備のアローヘッド隊、ミカエルの部隊だった。ミカエルが出てきたとなると、ゼウスは今回の事態に本気で対処に来たらしい。
彼女達の装備は旧式といえど、その中身は全く別で、ガワだけは旧式だが中身は最新鋭の装備となっていた。
そして、舞い降りてきたアンフェリアがフィアネリスと合流すると、二人並んで飛ぶ。二人のコールサインは終末、決戦兵器の彼女達におあつらえな名前だった。
これで計十機の翼が、戦場を飛び上がる。
「さぁ花火の中に突っ込みますよ!」
フィアネリスがアンフェリアを連れ、弾幕の飛び交う戦場を駆けていく。
「たかだか天使が増えたところで!」
別の天界の天使達が旧型汎用装備、ストライクボマーでフィアネリス達を追い込もうとする。だがこの場にいる天使達は皆どれも最新の装備だ、更に言えばフィアネリスとアンフェリアは決戦兵器、通常の天使のマニューバではとても追いつかない。
「センパイ、撃っちゃいましたけど、コイツら全部片付けていいんですよね?」
「えぇ、彼女らはゼウス様を裏切る天使達、全員地上に叩き落として構いません」
「了解、あたしもこういう天使達は嫌いだし、バイブス上げていくよ」
アンフェリアが音楽の音量を上げる。流される曲は国民的ロボットアニメとかで有名な作曲家の流す曲だった。全員の通信機にその音楽が流れると。フィアネリスはにっこり笑う。
「いい趣味してますね」
フィアネリスはビットを展開すると後方から来る天使に向けてビットのガンを撃つ。天使達は避けながらミサイルを撃つが、フィアネリスは急旋回で空へと上がると振り返りざま空中からマルチロックを行った。
飛んでくる量からして、フレアを炊くまでもない、ミサイルをロックすると、剣やビットによる銃撃によって全て撃ち落とした。
「うあああああ!」
やけになった天使が一人突貫してくる。フィアネリスは剣と対艦槍で鍔迫り合いになるが、その時、ビットで天使の翼を切り裂いた。
「墜ちる! くそぉおおおお!」
羽を舞い散らせながら、天使は落ちていく、直後、アンフェリアの砲撃が天使の胸元を穿ち、撃墜した。
「全く、いつになってもこんなことをして、天使ってホンットくだらない」
アンフェリアがフォースシールドビットを利用してガードしながら、こちらも一機ずつ確実に撃墜する。伊達に彼女も決戦兵器ではない。
「邪魔っ!」
向こうの天使たちも後がなくなったのか、ついに偵察型まで戦場に出てくる。そのうちの一機を、アンフェリアが斧で両断した。
「私達をこの程度で墜とそうというのが、そもそも無理な話なのです♪」
天使たちの乱戦の中を、二つの翼が飛ぶ。今この空で誰よりも自由なのは、間違いなく、彼女たちであった




