一匹でコン、二匹でコンコン、三匹揃えば牙を剥く
「ゆくぞ、神癒奈よ、まずはあの魔の女神を地上に落としてやろうではないか」
「やれる物ならやってみな!」
マイルズが衝撃波を何度も飛ばすが、玉藻前はそれを鉄扇で何度も受け流す。
「ンダト⁉︎ このオレの攻撃をただのキツネが弾くなんて!」
「ただのキツネとは、また甘く見られたものよな、覚えなくても良いが語ってやろう、妾の名前は玉藻前、三国を傾けた、日ノ本の三大妖怪にして、最強の妖狐、これより同じを地に落とす者の名よ!」
「迎撃しろ!」
マイルズのその言葉で、天使達が一斉に玉藻前に撃った。玉藻前は駆け出すと、停止の力場で砲撃を全て弾く。そしてそのままマイルズに切り掛かると、彼女を押し込み、地上へと落下していった。
「玉藻様が!」
「追ってください! 火乃香は私が!」
「いや、私も行く!」
「ですが、危険です!」
フィアネリスはあの戦いに火乃香まで連れ出すのはまずいと思った。玉藻前を追いかけて天使達も舞い降りていくが、その中に突っ込めと言うのだ。だが、火乃香は言った。
「ならフィーネは、他の天使の相手をして! 出来るよね?」
そう言われると、フィアネリスは静かに頷いた。
「仕方がありませんね、娘様の指示ならば従わざるを得ないと言うもの、神癒奈さん、火乃香を任せましたよ」
「分かってますよ、大切な娘ですから」
そうして神癒奈は火乃香を持ってビルから飛び降りていく、この前の自由落下とは違う、しっかりと着地の準備が取れた落下だ、フィアネリスは彼女なら大丈夫と思った。
「さて、ゴミ掃除といきましょうか」
こちらも、やれる仕事をしますかと、最終究極互換装備、カーテンコールを展開する。目の前には大量の天使達が、フィアネリスの行手を阻んでいた。
「ついてこれますか?」
フィアネリスが翼を六枚羽ばたかせると、ブースターが点火し、機剣ホワイトレクイエムを撃ち、道を作ると、彼女は飛び出していった。
ーーー
落下中の空中では、玉藻前とマイルズが熾烈な格闘戦を繰り広げていた。
「獣一匹に押されるとは、魔の女神というが実際のところは大した事ないのう」
「黙れぇっ!」
地上に叩きつけられかけるが、二人はしっかり着地体勢を取り、陸戦へと移る。
玉藻は鉄扇を振るい、マイルズはそれを手で切り裂くようにして弾いた。
「して、お主が操っておった教会の騎士とやらも残念よな、魔の女神を信仰してしまったのじゃから、なんじゃったかのう、西の大陸では、まじょがり? なんて文化があったか」
「これから天界の王になるオレを魔女というか! キツネェ!」
マイルズが目を光らせると、そこからレーザーが出る。しかし玉藻前は至近距離でそれを回避すると、鉄扇を構えた。
「焔月式舞術、零式!」
ふたつの鉄扇を交互に振るいながら、彼女は見事な乱舞を見せる。マイルズはそれを手で弾き。すると、腰に携えた六本の剣を一気に抜き放った。
「ちぇあっ!」
斬撃が玉藻前に迫るが、焔月の回避術である陽炎で攻撃をかわす。
「ちっ…前菜程度だと思ってたが、中々やるじゃねぇか」
「くっくっく、能ある鷹は爪を隠すと言うじゃろ、この姿、最近になってようやく安定して出せるようになったのよ、ちょうどいい試し相手ができて嬉しいわ」
「ゆかせ!」
そうして二人は激突していく。
「お母さん! お婆ちゃんが!」
「分かってます! けど今は!」
玉藻前を追いかける天使達を、神癒奈は加速の力場で追い越す。このままだと地面に激突するが、彼女は賭けに出た。
「全目標を捕捉! 『狐火繚乱!』」
すると、大量の狐火が現れると天使達に向けて飛び、天使達を飲み込んでは熱く燃やしたのだった。
「着地しますよ!」
着地寸前でゆっくりと停止の力場をかけ、ブレーキをかける。ストンと着地すると、神癒奈は火乃香をおろし、玉藻前の方へと向かう。
「シャシャシャシャシャ!」
六本の腕からなる斬撃を、玉藻前は二つの鉄扇の舞だけで全て受け止める。だが狩の神というだけある、彼女の攻撃は少しずつ玉藻前を押していた。
「どうしたどうしたぁ! オレの攻撃を守るだけかぁ⁉︎ 口ほどにもねぇなぁ!」
「そうかえ? まぁそうじゃの、お互い本気を出したとはいえ、妾とて一介の妖怪に過ぎぬ、本物の女神とあれば少しは劣りはしよう、だが…!」
玉藻前が焔と共に鉄扇を振り上げ、剣を弾いたときだった。
「そこっ!」
神癒奈の神速の抜刀がマイルズを襲った。マイルズはそれを防ぐが、手に持つ剣が、一本弾き飛ばされる。
「キツネが…もう一匹!」
「えぇ、でも、ここにいる狐は、もう一匹います!」
「なっ!」
マイルズが目を見開く。確かに先ほど、狐はこいつを含めて三匹いたと。
(一匹はこの女神、二匹目は大妖怪、ならば三匹目は⁉︎)
その時、上から一筋の光が線を描きながら落ちてきた。
「光よ蘇れ! イクセリオス!」
赤いマフラーを翻し、火乃香の斬撃が、マイルズの片腕を捉えた。ザクっと切られる音と共に、マイルズの腕が宙を舞う。
「あぁあああ! おのれぇ! キツネ如きにこのオレの腕がとられるなどぉおおお!」
今度はマイルズが斬撃を飛ばしてきた。三人は避けるが、避けたところがズタズタに切り裂かれたのが見えた。
「危ないよ!」
「じゃが! 奴の腕は一本叩き切れた!」
「残りは五本!」
各自が散開して動く、マイルズはそれぞれを追いかけて腕を曲げるが…。
「くそっ! クソクソ! クソが!」
(腕を曲げる方向と体の向き方には、限度がある!)
神癒奈はそう思い、玉藻前と火乃香が隙を作っている間に、攻撃の隙間を縫って、腕の一本を切った。
なぜこのようなことができたか。理由は単純、まず、三人を警戒するには、それぞれの位置を知って攻撃しなければならない。だが、三人に挟み込んで攻撃されると、仮に二人の位置を確認したとしても三人目の攻撃を背後から受け止めることはできない。
二つ目の理由は、単純に人体の構造的に、背後に柔軟に腕を振ることができないからだ。マイルズは流石狩の女神とも言うべきか、背後にもしっかり攻撃の対処をしてきたが、それでもやや防御に遅れを感じた。
よって、神癒奈の神速の抜刀術が、彼女の腕を切り飛ばしたのだった。
「こんな奴らに、このオレが! 押されるなんて! ありえねぇ!」
マイルズは斬撃と衝撃波を飛ばすと、神癒奈達を吹き飛ばす。幸いダメージは避けれたが、大きく隙を見せることとなった。
「ようやく一匹だ! よくもオレをコケにしてくれたな! 死ねぇえええっ!」
「やられる⁉︎」
火乃香が迫り寄ってきて、襟首を掴んで持ち上げてきたマイルズに対して目を瞑る。
その時だった。
バァンと銃声がきこえ、火乃香は地面に落とされる。何が起きたんだろうと火乃香は思うが、目を開いたその時、火乃香は見た。
「何ウチの娘に手を出してんだこの邪神が!」
永戸がリボルバー片手にマイルズの腕を吹っ飛ばしたところを。




