学生生活の裏側で
学校にて、朝、二人は登校してくる。
「おはよ、アン」
「火乃香もおはよう」
「顔色悪いよ? 何かあったの?」
「いいや、いつものセンパイに付き合わさられての実弾演習をやらされただけ」
学校内に入りながら、火乃香とアンフェリアは話していく。
「でもアンの翼まだ治ってないんだよね? 空飛べないんじゃ?」
「空飛べないというのに、陸戦機動ならできるって言われて、格闘戦だの射撃の練習だのさせられた、あのセンパイ、訓練になると本当に容赦ないんだから」
「あはは、フィーネはああ見えてスパルタだから、私もフィーネから剣を教わる時泣かされるまでやらされたなぁ」
教室にて、カバンから筆記用具と教科書を取り出しながら、二人はそんなことを話す。アンフェリアの脳裏には、下衆な笑みを浮かべながらにじり寄るフィアネリスの姿が焼き付いていた。
「火乃香はまだこっちの世界での戦闘経験ないんでしょ? 別次元から来たって言うけど本当なの?」
「本当だよ、向こうの世界でずっと暮らしてたの、向こうでは訓練しかしたことないし、こっちで戦ったことといえば、魔物の処理で数回程度、本当の戦いはまだ経験してないなぁ」
火乃香は机に肘を置きながら、戦いって何するんだろ、と考える。アンフェリアはそれを冷めた目で見つめ、こう答えた。
「戦いなんて、怖いだけ、あたしは生き残る為に戦うけど、別に何かを守ろうとかそんな大層な思いにはなれない。隊長とか、神癒奈先輩とか、あんな風にはなれない」
「お父さんとお母さんは本当にすごい英雄だからね。第一、四課のみんなが眩しく思えるなぁ、みんな世界のために戦おうとするんだから」
「本当に、眩しいよね」
片耳にイヤホンをかけながら、もう片耳につけて、火乃香の話を聞きながらアンフェリアは音楽を聴く。
「何聴いてるの?」
「最近出た飛行機のゲーム内に出てくるバンドの曲、この曲が流れるタイミングが胸熱でさ、かっこいいから聴いてる」
「ふぅん、聴いてもいい?」
「いいよ」
そう言うとかけてたイヤホンを火乃香に貸す。火乃香はイヤホンをつけると音楽を聴くが、熱いギターとボーカルが、彼女の耳に流れてきた。
「なかなかイイね?」
「でしょ? あたし、ギターもやっててね、こういった曲を弾くのが趣味なんだ」
「へーすごい! 動画とかある⁉︎」
「あるよ、イセチューブで数千回再生されてるから、ちょっと人気はあるよ」
「おお! 見せて見せて!
二人はアンフェリアがギターを弾くところを見ながら時間を過ごす。そうしているとホームルームの時間になり、先生がやってくる。すると、こんなことを聞いた。
「皆さん、今週末に八番街にある植物園に見学に行きます。そこで植物を調べ、異世界にはどんな植生があるのかを学んでいただきます」
そう聞くと教室内はざわめくが、火乃香は聞いた。
「八番街?」
「この都市のリゾート地、基本的にはセレブが行くリゾートとかあるけど、植物園みたいな異世界の学術を学べるところもあるの」
「ふーん」
火乃香はどんなところだろうと考える。
「というか火乃香は都市出身でしょ、覚えてないの?」
「小さい頃のことだから覚えてないなぁ、まだその時私本当に小狐だったから」
「今も小狐じゃん」
「それはそうだけどぉ…」
火乃香を困らせると、アンフェリアはほくそ笑む。と言うわけで火乃香とアンフェリアは、学校の行事で植物園に行くことが決まった。
ーーー
放課後、宿題も終えてフィアネリスの鬼の勉強から解放されると、二人は自由な時間を過ごすようになった。
「はい、女性冒険者に今人気のドラゴンアイスパフェ」
「ありがと、先輩」
「わぁー! Eスタ映えしそう!」
今日もギルド、エルデバの酒場にて、二人は気ままな時間を過ごす。火乃香が写真を撮る中、アンフェリアはパクパクと食べていっていた。
「うっま、何これ、新商品?」
「そうなの、男ばかりの暑苦しい職場だから、女性ウケのする商品を開発しようってなって作ったの」
「めっちゃ美味しいっす」
アンフェリアが先輩ギルド受付嬢にサムズアップする。そうしていると、高らかに笑いながら一人の男が近づいてきた。
「はっはっは! 退社したかと思えば大御所に入ったアンフェリアじゃないか!」
「うるっさ、ギルマス、今日は友達と来てるからもう少し静かにできないの?」
ギルマスと呼ばれた男はそう言われるとまた高笑いし、二人を見つめる。ふと思ったことを火乃香は聞いた。
「っ? ギルドマスターということは? この人がエルデバさん?」
「そっ、ギルマスであたしの元上司」
「バカ言え、俺からすればお前は今でも可愛いバイトの受付嬢だ」
「こんな感じで、基本うるさい人だから、まぁ気にしないで」
そう言われてもまた高笑いをするエルデバに、火乃香はあははと乾いた笑いをする。して…とエルデバは聞いた。
「イストリアからは話を聞いてるぞ、なんでも、都市にスライムの化け物が出たってな? 名前は、なんて言ったかな」
「オメガの事?」
「そうだそれそれ、俺達ギルドも表、裏、総力を上げてその調査を行なっていてな、冒険者を各地に派遣しては異常がないか調べてるんだ」
「ふーん、お疲れ様」
パフェを食べながらもアンフェリアは言う。エルデバは話を続けた。
「都市の学術院によると、すでに次の襲撃の日時は割り出せていてな、今週末、8番街に出現するらしい。イストリアはエージェントを派遣していて、既に厳戒態勢になってるって感じだ」
「8番街って」
「はぁ…あたし達が見学に行くとこ、うーわ最悪、タイミングぴったりで襲ってくるじゃん」
二人はそれを見るに、週末の植物園の見学中に襲ってくるだろうと予測する。
「まぁそう言うわけだ、華の四課に所属してるんだ、しっかりと都市を守ってくれよ」
「なんであたし達が戦う羽目になるんですか、あたし達、まだ所属して一ヶ月も経ってないんですよ」
「そうそう、私なんて戦闘経験ほぼゼロなんだから」
そう二人は言うが、エルデバは品定めをするように二人を見る。
「ふうむ…そうとは、思えんなぁ」
「ちょ、あんまジロジロ見ないでください」
「…そんなに私達って戦えるように見えるの?」
「あぁ、お前達は、見た目こそ新米冒険者のそれだが、いざ戦いの場に出れば先陣を切れる奴らだと思っている」
「それは……ギルドマスターとしての勘、ですか?」
火乃香が問いかけると、エルデバは頷いた。
「俺の勘はよく当たる、曲がりなりにも俺だってベテラン冒険者だ、周りを指揮する事もある。お前達の実力は、未経験なだけで戦えられるようになっていると俺は信じている」
「このおっさん、腹芸でおだてるの上手だから、あまり信用しないで」
「はっはっは! それはまたきつく言われたものよ!」
高笑いしながらエルデバは言い、去ろうとするが、去り際にこんなことを言い残した。
「生き残れよ、二人とも、俺から言えるのはそれだけだ」
そうしてエルデバは去っていくが、火乃香とアンフェリアはぽかんとした顔で見るしかなかった。
「生き残れ、かぁ」
「まぁ、仕事だし、スライムの化け物がどれだけ強くても、絶対生き残るよ、あたしはここで、死にたくないし」
「うん、そうだね、絶対生き残ろう!」
二人は誓いを立てると、パフェを食べながら週末の戦いに備えるのだった。




