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蛮勇皇后烈女伝 ~後宮はバトルコロシアム~  作者: kiyoaki
後宮激闘篇

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第54話 烈女、ポポンヨーと都の観光スポット・覇喇呪区へ繰り出して無双する③

 夕方になり、霓龍殿に皇帝光臨の先触れが来ると美玲は八武殿へ帰っていった。

 舜がやってくると、いつものように晩餐が始まる。

 待っていたように、三毛猫の犬ちゃんが食堂に入ってくる。

 舜の足もとへ行くと、ゴロゴロと喉を鳴らし、しきりに頬をすり寄せた。

 犬ちゃんは後宮で暮らすうちにすっかり舌が肥えてしまい、今や人間顔負けのグルメ猫と化していた。

 普段与えられる餌では満足できず、皇帝専用の皿に乗って運ばれてくる豪華な魚料理や肉料理を虎視眈々と狙っていた。

 この日は皇帝しか食すことのできない最高級魚が献上され、料理人たちははりきって調理をした。

 巨大な蘇眉魚(そうめいぎょ)(ナポレオンフィッシュ)を丸ごと酒で蒸したものや皇魚(こうぎょ)(チョウザメ)を使った炒め物、深皿に盛ったキャビアなどが運ばれてくる。

 犬ちゃんは魚が欲しいのか、舜を見上げてニャアニャアと鳴いた。

 舜はチョロすぎるチョロ皇帝なので、おねだりをすればくれる……はずだったが、食卓には烈の目が光っている。


 旦那の食事を狙う猫に気がつくと、烈は声を張り上げた。

「コラ! 犬ちゃん、だめだよ。皇魚は皇帝のための魚なんだから。さっちゃんにしばかれるよ」

 烈の叱責に、うっかり魚を与えかけた舜も慌てて手を引っ込める。

「舜も甘やかさないで。いけると思ったら、いくらでも食いついてくるんだから。骨の髄までチューチューされるよ」

「う、うむ……」

 犬ちゃんは不満そうにニーと鳴いたが、烈や幸子が怖いのかおとなしく引き下がった。

 今度は、烈がいないときを狙っておねだりしようと企んでいる。

 メシをくれぬなら用はないとばかりに舜から離れ、世話係が運んできた餌に食らいついた。


 舜は食事に夢中なデブ猫の背中を、どこか寂しげに見つめた。

「こやつは、餌が欲しいときだけすり寄ってくるな」

「畜生も人間もそんなもんだよ」

 冷静に返した烈だったが、実のところ犬ちゃんに負けず劣らず旦那におねだりする機会を伺っている。

 街へ遊びに行きたいことを、いつ切り出そうかと考えていた。


 舜は大皿に乗った蘇眉魚を改めて眺めると、切り分けた一部を八武殿に届けるよう命じた。早速にも、給仕が取り分けを始める。

 皇帝しか食べられないとされる最高級魚でも、高位の妃は特別である。

 皇帝の子を産む可能性が高い女たちであるから、最優先で栄養価の高い食べ物が下賜される。烈と美玲は相伴に預かれるのだった。

 舜が箸をつけたあとは、烈も当然のように蘇眉魚や皇魚を使った料理に手を伸ばし、それらに舌鼓を打った。


 魚料理に加えて、エビがたっぷり入った餃子や焼売(しゅうまい)も出てきた。

 調理されたエビを見て、烈は破顔した。

「今日は美玲と一緒に大膳房へ行ったんだよ。エビの殻剥き競争をして遊んだよ」

 厨房には新鮮なエビが山盛りになっており、それを見た美玲は殻剥き競争を持ちかけたのだった。

 殻剥き女工として鍛えた美玲の手さばきにかなうはずもなく、烈は呆気なく負けてしまったのだが、勝負そのものは新鮮で面白かった。

 美玲としても、烈をやりこめようという思いはなく、単純に遊びたかっただけである。


「王貴人とはうまくいっておるのだな」

 烈の屈託のない話しぶりに、舜は安堵した。

 妻たちがいがみ合って争い、都度後宮を破壊されてはたまらない。仲良くしてくれるのなら、それに越したことはない。

「同い年だしね。美玲といると楽しいよ。北でも舎弟はたくさんいたけど、友達はいなかったから。美玲とはポポンヨーになれるかも」

「ポポンヨーとはなんなのだ。北の方言か?」

「うん、親友という意味。友達は朋友(ポンヨー)だよ」

「それはわかる。なぜ親友がポポンヨーになるのか……」

「大親友はポポポポポンヨー。ポンヨー・ポポンヨー・ポポポポポンヨーの三段階で活用する」

「先頭のポが倍で増えるのか。活用が不規則すぎであろう。意味がわからんぞ」

 使うことはないだろうが、やはり北の方言は謎すぎる。


「それで、これは競争で剥いたエビ。折角だからエビ餃子や焼売を作らせたんだよ」

「な、なに?」

 舜は身を乗り出し、卓上のエビ餃子や焼売をまじまじと見た。

 ……とすると、これは烈が自分のために作った料理なのか。

 いわゆる「彼女の手料理」というやつなのか。

 彼女の手料理……それは万年モテない男たちの垂涎の的、憧れのラブラブアイテムである。

 彼女が自分のために食事を作り、尽くしてくれるという愛情の証、幸せの象徴であった。恋愛強者の勲章とも言える。

 烈とはすでに結婚しているので彼女ではないが、舜の中では勝手に「彼女の手料理」に置き換わっていた。

 恋愛小説でしか見たことのない伝説のラブラブ手料理が、今目の前に……!


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