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蛮勇皇后烈女伝 ~後宮はバトルコロシアム~  作者: kiyoaki
後宮激闘篇

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第52話 烈女、ポポンヨーと都の観光スポット・覇喇呪区へ繰り出して無双する①

 烈は後宮のしきたりにのっとって、吉日に美玲を霓龍殿に召し出した。舜に美玲を紹介し、舜も美玲を第二夫人として承認した。

 美玲は舜から距離をとって平伏し、慇懃に挨拶をした。

 皇帝の承認の儀が終わると、烈は庭に出て、集められたお目見え以上の女官や宦官に王貴人をお披露目した。下僕たちは、美玲の前に恭しく跪いた。

 今後、入宮してくる妃の位階によって序列は変わるが、現時点での後宮のナンバー2は八武嬪の王美玲であることが周知された。

 こうして、舜は二人の妻を持つことになった。


 妃が増えても、皇帝の夜の生活は皇后のお気持ち次第である。舜も美玲とはどうなるものではないとわかっていた。烈が他の女との房事を許すわけがない。

 そのため、美玲が側室になったあとも舜が八武殿に通うことはなかった。当然美玲との関係は、上司と部下以上のものはない。

 当初、舜は夫婦生活について、烈と美玲が揉めるのではないかと心配した。

 なにぶん、恋に恋する恋愛脳なので、結婚したからには、美玲も自分と夫婦になりたがるだろうと考えたのである。

 もし二人の妻が自分を取り合って戦えば、後宮はたちまち炎上し、仁義なき抗争に突入してしまう。殿舎が破壊されると、再建費用も莫大なものになってしまう。


 ところが美玲の態度は、恋愛のれの字もない恬淡としたものだった。

 接遇は丁寧だが、思わせぶりな様子は一切ない。

 霓龍殿にて三人で過ごしていても、烈が席を外しても、意味深な目線一つよこさない。皇帝としては敬い、尊重もしているが、異性としてはまったく興味がないようだった。

 身体的接触も明らかに避けている。美玲は舜には指一本触れなかったし、自身に触れさせもしなかった。舜が美玲に近づくと、近づいた分だけ美玲は下がる。

 武道でいうところの「一足一刀の間合い」が基準なのか、皇帝の周囲、半径二メートル以内にはけして入らない。


 外廷では女官たちに逃げられてしまい、酒と女とプロレスが大好きなヤカラ官僚や宦官に取り囲まれ、汗の匂いと加齢臭が漂うむさくるしい職場および居室で過ごす羽目になっている。

 野郎だらけの環境に息が詰まりそうなのに、後宮でも新しい妃に避けられるのか……と思えば舜は憂鬱になったし、密かに傷つきもした。

 自分の何がいけないのだろうか、女たちに嫌われてしまうのはなぜだろうと思い悩み、悶々としていた。


 美玲からすると、皇帝とはいえ好きでもない男を取り合って烈と対立するのは愚の骨頂である。妃にはなれたが、色恋の面倒ごとは絶対に避けたかった。

 皇后の烈が持つ権力は絶大である。

 美玲個人の能力は烈と互角であり、全力で戦えば打ち負かせるのかもしれないが、その他の差は歴然としている。

 自分の位階や立場や命など、吹けば飛ぶようなものであることを、彼女はよく理解していた。

 後宮のみならず、宮城の外でも同じである。

 烈は垂逸の王太女。彼女を本気で怒らせれば、その矛先は美玲だけにとどまらない。

 ただひと言命じるだけで、都にいるであろう配下が美玲の家族を拉致し、北へ連れ去るだろう。

 国外に出てしまえば暁の法律は通用しないし、助け出すこともまず不可能である。拉致した人間は、煮るなり焼くなり売り飛ばすなり埋めるなり、どうにでもできる。烈にとって王氏を、美玲やその家族をひねりつぶすのは造作もないことなのだ。

 皇帝の寵愛を得たいとは思わない。そんなものを得たら最後、地獄の修羅場一直線である。

 強固な後ろ盾がなく親族の援助も受けられない以上、皇帝に気に入られるよりも、皇后とうまくやっていくことの方が大事だった。


 そういうわけで、三人の間に色めいた波風は立たなかった。

 表向きは伝統的な後宮制度を踏襲しつつ、烈は舜との一夫一妻を維持していた。

 午前中は外廷へ行き、午後に後宮へ戻ると美玲が挨拶にやってくる。二人は軽食や飲茶を楽しみ、庭園を散歩したり、後宮内の施設を見て回ったりして過ごした。

 烈が颯爽と馬を乗りこなすのを見て、美玲も乗馬を習うことにした。

 どうせやることもなくて暇であるし、高位の妃たるもの、馬くらい乗りこなせなくては恥ずかしいと考えたのである。烈が早駆けする際にも、遅れずについてゆきたかった。


 うららかな午後、庭園の池の傍に建つ(あずまや)にて、烈と美玲はお茶を飲んでいた。

 池の水面には鮮やかな新緑が映り、陽光を弾いて眩しい。

 烈は正面に座り、茶を飲む美玲の姿を眺めた。

 まだ入宮して日は浅いが、美玲も妃にふさわしい豪奢な装いをするようになり、嗜みとして乗馬も始めた。後宮生活にも慣れてきたようである。

 美玲は入宮する前は都で暮らしていた。

 そのことを思い出すと、烈は口を開いた。

「ねえ、都のイケてるスポットはどこ?」

 美玲は顔を上げると微笑んだ。

「イケてるスポット……? 観光地みたいな?」

「うん、ヤング向けの遊べるところ。獅庭に来たのはいいけど、そのまま宮城に入っちゃったからさ。都のことはよくわかんないんだよね」

 後宮での生活にも馴染んだことだし、そろそろ外へ遊びに行きたいと烈は思った。手始めに都見物としゃれこみたい。


 美玲は、記憶を探るように数度瞬きをした。

「そうだなあ、覇喇呪区(はらじゅく)かなあ……?」

「そこが一番イケてんの?」

「名前はおどろおどろしいけど、確かそこが一番の人気スポットだよ。あたしも子供のころに行ったきりだから、今は違うかもしれないけど」

「どんなところ?」

「元々は異国人の居住区で、店には異国の珍しいものが売られていて……。屋台もたくさん出ていて、食べ歩きも楽しかった。土産物屋も多いから、観光客は必ず立ち寄るところみたい」

「そうなんだ」


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