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蛮勇皇后烈女伝 ~後宮はバトルコロシアム~  作者: kiyoaki
後宮激闘篇

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45/56

第45話 カリスマ主夫大公に邂逅し、伝説の武器を手に入れる③

「す、すごーい……」

 案内されて衝天八武殿に入った美玲は、あまりの豪華な作りに口をあんぐり開けた。

 御殿の贅沢な仕様にひたすら圧倒される。

 天井や欄間の飾り、漏窓(ろうそう)の透かし彫り一つとっても精緻な文様が刻まれ、芸術的な美しさである。

 室内に設えられた家具や調度品も上等で、触れるのも躊躇うくらいピカピカに磨きこまれている。

 美玲は半ば茫然としながら、各部屋や庭をふらふらと歩き回った。

 嬉しいというよりは、これまでの貧乏生活との落差に思考が追いつかない。これは夢ではないか、何かの間違いではないかという気がしてならない。

 まさか八武嬪になれるとは思わなかった。

 本来は皇女・王女クラスの姫たちが叙される位階である。

 妃になれたといっても自分は身分が低いし、皇帝に気に入られて召し出されたわけでもない。せいぜい個室が持てる程度で、女官たちと雑居なのだろうと考えていた。

「もしかしてドッキリ? 騙されている?」

 何かの罠ではないのか……と疑ってしまったくらいだった。


 八武殿は広大な敷地内に、最多で八人の嬪が同居するが、庭園を囲むようにして建つ殿舎は独立しており、入り口も異なっている。

 庭や談話室など共用スペースもあるが、他の妃に気兼ねせずに生活できるよう設計されていた。

 美玲は八武嬪の一人目なので、八武殿内の施設はどこも貸し切り、独占状態であった。

 専属の侍女や宦官たちがいてまめまめしく仕える。

 彼らに逐一しきたりを教わりながら、美玲は後宮での生活を始めた。

 さすがに着古したボロボロの麻の服を着て過ごすのは恥ずかしい。お小遣いを貰ったら新しい服を作ることにし、取り急ぎ侍女に服や装飾品を借りて身につけた。

 ひびやあかぎれで荒れた手は、薬が塗られ包帯が巻かれた。過酷な労働や家事から解放され、今後はしなくていいことに美玲はホッとした。

 豪華な食事に感激し、すべすべした絹の布団にくるまって(やす)んだ。


 素寒貧(すかんぴん)で入宮した美玲は、翌日になると、もうすることがなくなってしまった。荷ほどきする荷物もない。何か没頭できる趣味があるわけでもない。

 早朝、宦官相手に棍の練習を終えると、どうにも手持ち無沙汰になってしまった。

 夢見たセレブ生活を送れること自体は嬉しい。

 しかし、八年間も食うや食わずで働きづめだった上、家事をこなし、家族の面倒も見てきた美玲は貧乏性が染みついていた。

 何かしていないとどうにも落ち着かないのだが、急に自由な時間を与えられても、何をすればいいのかわからない。

 まだ十八なのに、定年退職後に時間を持て余し、一日中窓からボーと外を眺める中高年のような無気力な状態に陥りかけてしまった。


 公務や後宮の運営で何かと忙しい皇后とは違い、側室に仕事らしきものはない。家族以外の人間とは縁が切れているため、来客もない。

 入宮して側室になっても、すぐに皇帝と会えるわけではない。

 まずは占いで吉日をいくつか選び、皇后の許可が下りると決められた日に霓龍殿へ召し出される。

 皇后が主催するサロンに侍っていると、皇帝が偶然を装って霓龍殿にやってくる。

 そこで、皇后から紹介されて初めてお目見えがかなうという、しち面倒くさい段取りを踏まねばならなかった。

 房事に関しても、まずは皇后に対してお伺いが立てられ、許可が下りると皇帝が通ってくる。

 後宮では、一事が万事この調子のようだった。


 恐ろしく暇なので、美玲は古参の侍女に側室がやるべきことはないのか聞いてみた。

 侍女は答えた。

「日々のお務めは特にありませんが、あえていうなら皇后さまへのご挨拶がお仕事かと。今はそうでもありませんが、昔は一日一回必ず挨拶に行かねばならなかったと聞きます」

「挨拶か……。そうだね、上司だものね」

 侍女は遠慮がちに続けた。

「後宮では何をするにも、皇后さまのお気持ち次第です。皇后さまのご信頼を得れば、後宮での行事の差配などをお任せくださるかもしれません。ただ出しゃばりすぎてもご不興を買うかも……」

「気に入られないと干されるわけ? じゃあ、とにかく挨拶に行くわ。八武嬪にしてもらったお礼も言わなくちゃいけないもの」

 美玲は側室の務めとして、まずは烈に挨拶に行くことにした。

 手土産一つ持っていけないのは恥ずかしいが、ない袖は振れない。

 カチコミしたときと同様に、開き直って霓龍殿へ出かけていった。


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