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蛮勇皇后烈女伝 ~後宮はバトルコロシアム~  作者: kiyoaki
後宮黎明篇

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第15話 烈女、新たな舎弟を増やしつつ、ゴージャスライフを満喫する③

 客あしらいを終えると、烈は専用の大浴場へ行き風呂に入った。

 水風呂、蒸し風呂も併設されており、サウナと冷水浴で肌を引き締める。

 のんびりと湯に浸かったあとは横になり、按摩師に全身マッサージをさせた。

 マッサージのあとは高級な塩と香油を擦りこみ、ミネラルを多分に含んだ泥と蒸したよもぎを浸した布を巻いてパックした。極上のエステを味わいながら、のんびりと昼寝をした。

 三毛猫も浴場に入ってきて、ちゃっかり主人のそばに横たわり、世話係に揉まれた。


 夜になると舜がやってきた。

 仕事を終えて疲れているというのに、彼は新たな恐怖に直面することになった。

 ただでさえ禍々しい居間の高座に、異形の女が座していた。

 高く結った髪は剣山のように鋭くそびえ立ち、額のすぐ上には、地獄で血を吐く鬼女とネズミの化け物が死闘を繰り広げる人形がデコられている。

 イバラと毒蛾とサソリがうごめくおどろおどろしい衣装は、レインボーカラーで無駄にきらめき、岩愛好盤娘(ロックンロールバンギャ)傾奇者(かぶきもの)を通り越して奇天烈を極めていた。

 その膝の上には、目つきの悪い肥満猫が抱かれ、しきりにガンを飛ばしてくる。


 舜は動揺して怯え、じりじりと後ずさった。

「わしはとうとう大宇宙を越えて……人外魔境に迷い込んでしまったのか? ここはパンクな羅刹女の巣なのか?」

「何アホなこと言ってんの。ここはあんたの家だし、私はあんたの嫁だよ」

 舜は震える指で烈の頭を指差した。

「服も狂気の沙汰だが、そのぶっとんだ髪型はなんなのだ。呪いの人形を頭にすえて、邪教の儀式でも行うつもりなのか」

 烈は髪に触れながら得意げに言った。

「これ? 今流行りの『吐血鬼女対窮鼠邪神転生超絶死闘不倫絶許スタイル』だよ。盛りすぎてちょっと重いけど、皇后たるもの、官民のファッションリーダーじゃないといけないからね」

「絶対騙されておるぞ」

「そんなわけないでしょ。一流のスタイリストが揃えたものだし、舎弟にも大人気だし。私の最先端かつ前衛的なファッションに嫉妬しないでよね」

 と烈はプリプリしながら反論した。


 主人が侮辱されていると感じたのか、膝の猫が立ち上がり、舜に向かってシャアアと牙をむいた。

 舜は猫に憐れみの目を向けた。

 ぶくぶくに太って大きな毬のようだが、どことなく王者の風格がある。

「今夜はヤンキーな猫を食べるつもりなのか」

「食べないよ。これは進物で私の舎弟。蓬莱から来た三毛猫の犬ちゃんだよ」

「猫なのか犬なのかはっきりして欲しい」


 新たに加わった三毛猫の犬ちゃんに上等な煮干しや干し肉をやりつつ、二人は夕食をとった。

 酪茶でさえ、高級食材を駆使したすさまじい凝り方である。

 食事として出てくる中華料理の複雑な調理の行程、その奥深さ、繊細な味は語るまでもない。

 美食の数々を堪能しながら、烈は目の前でもそもそと食事をする男を眺めた。

 嫁いできてからわかったことだが、暁は想像以上に豊かな国であり、舜はとんでもないリッチマンであった。

 烈が贅沢を望まずとも、皇后の体面を保つという理由で贅沢の方が三つ指ついてやってくるのである。

 妹の身代わりとはいえ、自分の決断は間違ってはいなかった。

 オラつきまくって皇后の座を奪取した甲斐があったと思った。


 烈は頬を紅潮させながら、興奮気味に言った。

「私……あんたと結婚して本当によかったよ」

「そ、そうか?」

「うん、好き」

 急に告白めいたことを言われて、舜はドキッとした。

 結婚してよかった上に好き……ということは、もしや自分にラブめいたものを感じ始めている……? 

 すでに結婚してしまったが、ここからドキドキな恋愛が始まっちゃう……?

 ラブ、それは至高の愛である。

 殺伐とした政略結婚から芽生える恋模様、皇帝と皇后のめくるめくラブストーリー……まったくもって悪くない。


 舜は居住まいを正し、コホンと咳払いした。

「烈女よ、そなたもなかなかに愛いところがあるではないか。やっと、わしの魅力がわかってきたのだな。もっと頼りにしてくれてもよいのだぞ」

 烈はこれ以上とない大輪の笑顔で言った。

「うん、めっちゃ頼りにする。あんたは最高の財布だよ」

「財布?」

「本当に大好きだからね、あんたの金が」

「……」


 恋愛の甘い夢は、刹那のまぼろしだった。

 舜のラブ昇華への期待は、木端微塵に砕け散った。

 特に意識したわけではなかったが、烈はやはり任侠の娘であった。

 持ち上げておいてから地獄に突き落とす、攻撃力カンストの反社の極意である。

「わしは財布……。財布とは……すなわち銭入れ?」

 呆然と呟きながら、舜は気が遠くなるのを感じた。


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