森伸一
翌日のことだった。朝早朝に俺の所に渚沙教授から電話が掛かってきた。詳しいことはその場で話すと言われ、俺は言われた時間である十二時に間に合うように渚沙教授の部屋にと向かった。そう言えば今日唯が裕文に会って話に行くのだったと思いながら今頃話し合っているのだなと思いながら足を歩かせた。
言われた時間には少し早いが十分くらい早かったため問題は無いと思い扉を叩いた。すると奥から渚沙教授の「どうぞ」との声と共に扉を開けて中にと入って行った。
渚沙教授は椅子に座っており、コーヒーの入った紙コップを一口飲んでから俺の方を見て、相変わらず落ち着いたような声で言った。
「突然と呼んでしまってすまなかったね、伸一君。私の方からでも見させてもらったよ」
「そうですか、それでどうでしたか?処理はできたんですか」
俺は渚沙教授の用意してくれた椅子にと座り、渚沙教授と向かい合って言った。渚沙教授は顔に掛けていた眼鏡を外して難しい顔をして語りだしてくれた。
「はっきりと言おう。君の言った通りあれはカラーと言うモノだ、あれの処理は自然的か物理的刺激を与えなきゃダメだ」
「そうですか、そもそもカラーとは何なんですか?」
これを聞けばもう戻ることはできないと分かっていた。だが、それでも俺は向き合いたかった、裕文が研究していたことについて。渚沙教授は俺に確認する。俺は静かに顔を頷かせた。
「カラー、宇宙からのモノだと言うのは確かだ。ライフサイクルははっきりしておらず確認できているモノでも今回のケースでやっと二回目だ。カラーは隕石と共にやって来る。そしてカラーはそこで食事をして充分な栄養素を吸収した後再びどこかに飛び立つとされている。そんなところだな」
「そう、ですか・・・前から思ったんですがあなたはどっちが本物なんですか?」
明らかに別荘区跡の入り口で会った時のように渚沙教授は初めて会った時との様子、口調が違かった。当然カラーのことについても知りたかったがこれ以上は詳しいことは探れそうに無かった。
「そうだね、多面的な性格だからね。どれが本物とかは無いよ。それと、君の友人のことだが、頼めるかい」
渚沙教授は多面的な性格と共に俺の友、裕文のことだと思われることを言った。頼めるとの言葉をオウム返しのようにして聞くと、渚沙教授は俺にとバッジを投げ渡して言った。
「カラーをどうにかするにしても居場所が分かってないとならない。君はそのバッジを付けて彼と話をして聞き出せ。――いいか、私の憶測ではもう彼は人として踏んではならない一線を踏んでいる、かつての友人としては見ない方がいい」
その一言は俺の友人、裕文の否定であった。俺は身を乗り出して「どう言うことですか」と反射的に聞いていた。一方渚沙教授は椅子から立ち上がり、外の風景を見るように窓を眺めて言った。そこにはどうしようもないような声にも聞こえた。
「カラーって言うのはね、土壌や動物に影響を与えるんだよ。最初こそはネズミとかの小動物なのだが、最終的には人間にも影響が及ぶ。例外なんてないんだよ。裕文って言ったけ、彼の場合は精神が狂っているにも関わらず精神がある程度落ち着いてるんだよ、いわば天邪鬼と言ったところか」
そう言われると裕文の様子が変だったことにもある程度は理解できた。それと同時に既に裕文が手遅れだと言う事も分かった。だったら、より一層俺は裕文を何とかしてあげなければならないと思った。今から行くと言われてでも俺は行くであろう。そのため「やります」と俺はいつの間にか自然と声が出ていたのであった。
渚沙教授が何かを言おうとしたその時だった。突如と俺のスマホが鳴りだした、俺はゆっくりとスマホを取り出した。渚沙教授は「構わない」と言い出るようにと促した。俺は会話ボタンを押して電話に出た、声の主は裕文であった。裕文はただ「昨日の小屋の前で待ってる」とだけ言うと切れてしまった。その時の裕文の声は酷く落ち着きすぎていた声に聞こえてしまい妙に奇怪に思えてしまった。




