森伸一
相変わらずの隣の部屋からの漏れた音はうるさかった。しかし、今ではその音が安心させられるようにさえ感じた。俺には理解できなかった。あそこであったことを思い返すと今でも寒気が奔る。それにしてもだ、なんで裕文はあんな風になってしまったのだろう。今までの交流ではあんな姿を想像できない、誰かが裕文を変えたのだろうか。それとも元から裕文はそのような感じで仮面を被っていたのだろうか。そうであればそんなことは許せない。
「そうだ、唯に伝えなきゃだ」
俺はふと何を思ったのか今日あったことを唯にと伝えることを決めた。もしかしたら俺が知らないだけで同じ学科である彼女なら何か知っているかもしれないからだ。
電話を掛けるとすぐに唯は出た。俺は落ち着いて、簡易的に言った。しかし、俺はカラーのことについては教えず、何らかの調査をしていると伝えた。
『そうだったの、裕文君ありがとう。でも、私はそれでも会いに行くよ。もう一度、みんなで笑って会話したいからさ』
ここまで唯は裕文のことを想ってくれていると思うとあの時言った「理解できない」との言葉が言いすぎたのだと痛感して分かった。そうだ、裕文は俺の、唯にとっても掛け替えのない友なのだ。そうだ、今からでもやり直せるに決まっている。俺は安心したのか、それとも信じてなのかは分からないが安堵の声で「分かった」と言い電話を切った。
「俺もあいつを信じてやらないとな」




