八ノ瀬裕文
今までのことに後悔が無いかと問われればそこまで無かった。唯一あるとすればこのことを知るのが少し遅れたことだった。
父さんは俺にカラーのことを教えるのを少し拒んでいたようであったがそれは過去だ。それに、父さんがいない今は俺カラーを調べなければならない。例え友人が理解できなくともいつかは理解できるはずだ。そして、気付くであろう。我々人間は宇宙の中のちっぽけな存在だと。そのことを教えてくれるであろう。そしてちっぽけだと言う事と同時に人間たちは再び理解するであろう、我々は宇宙からの恐怖、理不尽極まりない地球の科学の枠を超えた存在を。
「僕は、それらを理解するためならどんな物だって捨てられる、その覚悟がある」
僕は試薬である薬を握りポケットの中にと入れて握りしめた。その試薬は父さんの実験データと僕の実験でできた自信作だった。元々はゲル状の物であったが、何度かの試作で遂に固体としての錠剤の物ができた。
父さんは僕の計画に反対だった。宇宙からのモノだと理解し、どんなに恐ろしいものかを理解したからだった。だからと言ってそれを利用しなとの理由にはならないのに。その時ついぞ僕は父さんが臆病だったのかを知った。そして失望もした。恐ろしさは未知な故は分かる、だがそれを知っているが故に父さんは怖れた。
だから僕は父さんを使った、僕は父さんとは違う事を証明するために。父さんは宇宙からのモノに身を守るための研究をした。僕は違った、僕は宇宙からのモノを凌駕するために研究をする。
「さぁ、僕に見せてくれないか。宇宙からのモノを凌駕するかもしれない一欠けらを」
僕は握りしめていたポケットの中の薬を取り出して眠っている実験体の口にと流し込ませた。




