「タワー攻略戦(2)」Ⅱ
ーSide・サルタナ
「暗視スコープと集音マイクに切り替えたんだよぉ♪ この子、この人型兵器は内緒で作ったから君は知らないよねぇ~♪」
うつ伏せになったオレの上から、あの軽やかで皮肉めいた声が響く。暗い部屋の空気は湿って重く、壁に反射する非常用電灯の弱い光が揺れるたびに、青い金属の光がちらちらと視界の端に映った。背中に圧し掛かる重みは、ただの物理的なものではなく、精神にまで押し付けるような圧迫感を伴っている。逃げようにも動けない。体を捻ろうとしても、足で押さえつけられ、手足の自由は奪われ、胸の奥まで締め付けられるような感覚に襲われる。息を吸い込むたび、背中の痛みが骨の奥まで響き、思わず呻き声を漏らす。
「まあ、犬にしちゃあ~、狙いはまぁまぁ良かったんじゃないかなぁ♪」
「うっ……」
その声には嘲笑と楽しげな調子が混ざり、聞く者の神経をじわじわと削る。踏みつける圧力が一瞬緩む。ほんの一瞬だが、そのわずかな隙間を逃すまいと、オレは体をわずかに捻ろうと試みる。全身の筋肉が緊張し、痛みが全身に波紋のように広がる。背中を蹴られた衝撃が脊髄を伝い、頭の奥まで痛みが走った。吐き気が胸を押し上げ、口の中に苦味が広がる。
「君にしては中々いい演技力だ……よっと♪」
言葉が終わるや否や、再び蹴りがオレの背中に繰り出される。勢いが中途半端なのは、相手の狙いがオレを殺すことではなく、遊ぶように追い詰めているからだろう。蹴りの衝撃が体中に連鎖するたび、肩や腰、肋骨が痛みで悲鳴を上げる。オレは体を丸め、痛みを耐えながら、次の瞬間の行動を探る。血と汗が混ざり、袖や手がべっとりと濡れ、床の冷たさがわずかに背中に伝わる。呼吸を整えつつ、限界に近い体に鞭を打つ。息を吸い込むたび、胸の奥が焼けるように痛むが、痛みに屈するわけにはいかない。
博士は蹴りを止めず、まるで独り言をつぶやくかのように語り続ける。その声の抑揚には楽しげな響きがあり、裏に隠された冷たい狂気が滲んでいた。オレは耳をふさぎたくなる衝動を必死に抑える。耳障りな声が、まるで意識を侵食するかのように迫ってくる。
「僕がどれほど君のことを気にかけ、面倒を見ていたか知ってたか~い? 君のお姉さんをどれほど愛していたかわかるか~い?」
蹴られた衝撃が、脳の奥まで震わせる。痛みで思考が途切れそうになるが、必死に耐え、心を集中させる。意識の中で、姉の笑顔や笑い声がフラッシュのように浮かぶ。守るためにここまで来た。ここで諦めるわけにはいかない。背中を蹴られ、地面に叩きつけられるたび、体中の筋肉が悲鳴を上げ、意識が遠のきそうになる。
「……」
(チッ……意識が飛びそうだ。)
冷たい床の感触が背中を伝い、皮膚の感覚が鋭くなった。手のひらに感じる汗と血の感触が、現実を思い知らせる。床に敷かれた薄いマットの下から伝わる固い床の感触が、オレの痛みを増幅させる。だが、痛みに意識を取られるわけにはいかない。姉を守るため、ここで耐え抜くしかない。
「……あのアマはぼ、僕のプロポーズを即断りやがったんだよぉ。」
(……それがどうした?)
オレは蹴られながらも、頭の黒バンダナを目と耳を隠すようにずらした。視界の端に、青い金属の光がちらつく。博士の軽やかな足取りと、鋭い蹴りのリズムが、まるで音楽のように体を揺さぶる。痛みの中で、オレはわずかに体を捻り、次の瞬間に備える。息が荒く、胸は焼けるように痛むが、意識を切らさず、心を集中させる。背中を蹴られ、床に叩きつけられる衝撃が、全身を貫く。血と汗が混ざり合い、指先まで冷たくなっていく感触が残る。それでも、オレは耐え続ける。痛みの中で、守るべき人の笑顔を思い浮かべ、次の行動のタイミングを探る。




