↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Re:ガンマン  作者: アダス
「タワー攻略戦」
56/80

「タワー攻略戦(1)」Ⅰ

ーSide・サルタナ


高さ六百四十五メートル。百階建てに加え、地下十階を擁するこの超高層タワー──『ヴィソコクラスナヤ・バシュニャ』ことプレミアムタワー。

その最上層は幹部クラスの居住区とされ、上層階のほとんどは指令センターや迎賓室で占められている。

そしてオレがいまいるのは、地上階層に設けられた研究エリア。

巨大なビルの内部構造は迷路のように複雑で、フロアをつなぐ通路は延々と続く銀色の洞窟だ。


イーゴリの言葉を思い出す。

三十階にいる幹部たち以外、この下層に多くの私兵を配置する余裕はないはず。

だが――油断は命取りだ。

この建物自体が要塞のようなもの。見えないところに罠がいくらでも潜んでいるだろう。


オレが向かうのは、一階の最奥にある「研究第七区画」。

そこに、姉が囚われている可能性が高い。

例の人型兵器がいるかもしれないが……構うものか。

姉を取り戻す、それだけが目的だ。


(……あの男も、オレが来ることを望んでいるはずだ。)


脳裏に、白衣を着た若い博士の姿が浮かんだ。

気味の悪い薄い笑みを浮かべ、いつも何かを隠しているような、道化のような眼差し。


床の照明が靴音に合わせて鈍く反射する。

空調の唸り、ガラス壁の向こうで規則的に点滅する端末の光。

走り抜けるたび、静まり返ったフロアの空気がわずかに揺らぐ。

そんな中で、通路の奥に微かな気配を感じ取った。

息を殺して、立ち止まる。


(……いる)


オレは腰からアサルトライフルを構え、レバーを引いた。

金属が噛み合う乾いた音が響く。

弾倉を確かめ、トリガーに指を添える。

心臓の鼓動が徐々に速くなっていく。


(姉さん、無事でいてくれ。オレが……サルタナが迎えに行く)


次の瞬間、オレは腰の手榴弾を外し、ピンを抜いた。

金属のピンが小さく鳴り、指先をすり抜ける。

手榴弾を軽く放ると、それは通路を転がって角を曲がり──炸裂した。

衝撃波が壁を打ち、炎と煙が一瞬で広がる。

もし誰かが待ち伏せていたなら、跡形もなく吹き飛んだはずだ。


立ち込める煙が通路全体を包み、白と黒の渦が視界を歪ませる。

オレは身を低くして前進した。

研究室の厚い防爆扉が視界に入る。

腰のホルダーから黒い球体を取り出し、表面を軽く叩いて活性化させる。


ベチャッ。


粘着爆弾が扉に貼り付き、わずか数秒後に爆発。

扉がひしゃげ、金属片が宙に舞う。

衝撃で照明が瞬く中、オレはすかさず突入した。

煙の向こうに、動く影が複数。

反射的に引き金を引く。


銃声が密閉空間に反響し、鼓膜を揺さぶる。

弾丸が壁をえぐり、人影が次々と崩れ落ちる。

床に赤い線が走り、ガラスの破片と血液が混ざり合う。


「うわあああああっ!」


絶叫が響く。

敵の一人が恐怖で引き金を乱射するが、照準は定まっていない。

弾丸が金属ラックを弾く音が連続し、火花が散った。

だがオレには一発も当たらない。

本能がすべての動きを先読みしていた。


(姉が見つかるまで、全て喰い尽くす)


胸の奥で野生が蠢く。

血の匂いが呼吸に混じり、身体の奥が熱を帯びていく。

その瞬間、背後から声がした。


「たいした暴れようだねぇ~♪」


「っ!?」


思考より先に身体が跳ねた。

反射的に床を蹴り、脇へ飛ぶ。

一瞬前までオレがいた場所に、何かが立っていた。

煙の中に、青い人影。


照明の反射で青い外装がかすかに光る。

細身のシルエット、金属質の輪郭、だが立ち姿は人そのもの。

機械でありながら、まるで感情を宿したかのような存在感。


「人型兵器か!?」


思わず声が漏れる。

それはわずかに首を傾げ、愉快そうに口角を上げた。


「よく戻ったねぇ……飼い犬に手を噛まれた気分だよ♪」


その声が途切れた瞬間、世界が歪んだ。

青い人影が消えたかと思うと、腹に激痛。

気付いたら三メートル宙に吹き飛ばされていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。