↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Re:ガンマン  作者: アダス
「死の天使」
44/80

「死の天使」Ⅲ

「オラオラオラオラァッ!」


俺の左右連続攻撃を、サルタナはダガーナイフで受け止める。刃と刃が交わるたび、鋭い金属音が夜の港にこだまし、瓦礫に反射した光がちらちらと揺れた。波が岸壁に打ち付ける音と、遠くで揺れる船の軋みが、戦闘の緊張感をさらに引き立てる。


(ほんと……すげぇな。でも、いくら身体能力が高くても、隙は必ずある。)


俺は心の中で呟く。ジャックナイフの刃がサルタナのダガーナイフに触れるたび、衝撃が手にビリビリと伝わる。刃の角度を微妙に変えながら突き出す。サルタナの刃に阻まれた瞬間、柄をひねって躱す。わずかに彼の腕に浅い傷を刻みつけるが、同時に右肩に鋭い痛みが走った。サルタナの刃が俺の肩に深く突き刺さったのだ。


互いの呼吸が荒くなる。血の匂い、擦れ合う金属音、瓦礫を踏みしめる足音。火の光が俺とサルタナの影を揺らし、煙が夜風に漂う。遠くで消防車のサイレンがかすかに響き、港の喧騒は戦いの熱に呑まれていた。


「……クゥッ!?」


サルタナの顔が一瞬歪む。俺の攻撃の勢いが増していることに気付いたらしい。しかし、それは錯覚だ。正確には、サルタナの動きがわずかに鈍くなっている……だけだった。実は俺のジャックナイフの刃には麻痺薬が塗ってあり、少しずつ効き始めているのだ。


(普通に殺り合ってたら、コイツには勝てねぇ……だから俺は、頭を使う。)


俺は間合いを慎重に詰め、タイミングを見極める。左手のジャックナイフをサルタナの左手の甲に突き刺す。たまらず彼はダガーナイフを落とす。続けざまに右手のジャックナイフを右手の甲に突き刺す。血が滴り落ち、赤い飛沫が夜風に揺れる。瓦礫の間を伝う火の光が、それをさらに鮮やかに照らす。


サルタナは必死に立とうとするが、麻痺で足がもつれ、倒れそうになる。その目にはまだ執念が宿っていた。口から漏れる低いうめき声、血まみれの指先で瓦礫を握りしめる手の動きが生々しく映る。


「ぐうぅぅぅぅ……なぜだ?」


サルタナは血まみれの両手を見つめ、唸る。立つことさえ精一杯だが、まだ死の影はない。執念がまだ燃えていた。


俺はジャックナイフを両腕のホルスターに戻す。武器なしで仕留める決意を固めた。麻痺薬で動きは鈍く、サルタナは立つのがやっとだ。俺は一歩距離を詰め、右手で拳を握り、顎に打ち込む。衝撃が脳を揺らし、サルタナは脳震盪を起こす。


「……ッア。」


膝をつくサルタナ。口から血を垂らすが、目にはまだ死の影はない。瓦礫に体を押し付ける音、鉄骨が崩れる軋み、遠くの港に響く汽笛……すべてが戦いの余韻として重く降り注ぐ。潮の匂いと焼けた鉄の匂いが混ざり、鼻を突く。


「すげぇ執念だな。尊敬するぜ。」


俺は上に跳び、膝を高く引き上げ、全体重を乗せた膝蹴りをサルタナの顔面に叩き込む。


「安心しろ、殺しはしないさ。」


グシャリッ!


瓦礫にぶつかる衝撃と共に、サルタナの頬や鼻に痛烈な圧力が伝わる。彼は仰向けに倒れ、血が瓦礫に滲む。火の光が赤く反射し、周囲には崩壊したビルの壁や鉄骨、火花と煙が入り混じった地獄のような光景が広がっていた。瓦礫に散らばったガラスの破片が月光にきらめき、夜の港をより冷たく見せる。


息を荒くしながら、俺は一瞬視界を確認する。港の夜景、揺れるコンテナ、遠くに見える灯台の光……すべてが混沌に染まっていた。戦いの余韻が体を重く包む。


「……はぁ、連戦とか勘弁してほしいぜ、まったく。」


俺は血まみれの体を引きずりながら、瓦礫だらけの火の海を背に歩く。炎が夜空を赤黒く染め、遠くから消防車のサイレンがかすかに聞こえる。汗と血で重くなった体を引きずり、戦いの余韻を噛み締めつつ歩く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。