「死の天使」Ⅱ
「……。」
サルタナは一切口を開かず、ただじっと俺を見つめている。
「別に、俺はお前のやりたいことを邪魔するつもりはないさ。仮にもお前に命を救われた恩がある……だけど」
俺は歩みを止めた。視線を鋭くサルタナに向ける。
「俺の仕事の邪魔は、許さない。」
道路脇にある車の陰に身を隠しながら、コルト・ガバメント.45で牽制射撃をする。弾丸は夜の闇に黒い閃光を走らせる。サルタナはまるで弾丸が見えるかのように身を屈め、ひねり、軽々と躱す。火花が散る窓ガラスの破片も物ともせず、その動きは獣のように滑らかで、恐ろしいまでの正確さだ。
「……なら、殺すまでだ。」
サルタナが低く呟くと同時に、AKMを構えて発砲した。俺の頭上で車の窓ガラスが砕け、鋭い破片が雨のように降り注ぐ。
しばらく撃ち合ううちに、俺のコルト・ガバメント.45の弾倉が空になった。
「チッ……」
急いでズボンのポケットから予備の銃弾を取り出そうとした瞬間、血の気が引く。
「……っあ。」
なんと、コルト・ガバメント.45の銃弾はあと二発しか残っていなかった。ほかの予備の銃弾はすべて、ジャケットと共に爆発で吹き飛んでいたのだ。
俺の動きが一瞬止まったのを見て、サルタナが貯水タンクから跳びかかってくる。瞬時に反応し、俺は最後の手持ちの手榴弾のピンを外し、サルタナに投げた。だが、彼は驚異的な身体能力で体を捻り、手榴弾をかわす。爆弾は彼の横を抜け、貯水タンクに直撃。轟音と共に水しぶきと破片が夜空に舞う。
「っ!」
「くっ!」
近距離での爆発。俺は車の陰に身を隠し、爆風をやり過ごす。サルタナは驚異的な速さで爆風を回避し、まるで無傷であるかのように立っていた。
風に乗った爆煙が俺とサルタナの間を覆い、視界を遮る。俺は煙を見ながら息を整える。弾切れとなったコルト・ガバメント.45をしまい、腰に用意していた二丁の拳銃を引き抜き、即座に乱射した。
このくらい撃てば、少なくともサルタナの動きを止められるはず……だった。
「何ぃっ!?」
しかし、予想をはるかに超えて、サルタナは煙を突き抜けて襲いかかってきた。AKMは投げ捨て、両手に黒塗りのダガーナイフを握りしめ、獣のように低い姿勢で俺へ駆ける。
「こっち来んなっ!」
俺は二丁の拳銃を向けたが、間合いはすでに縮まっていた。ナイフが俺の目の前で交差する。
「シィィッ!」
鋭い刃が空気を切る。俺は後転し、肌すれすれで刃をかわす。回転しながら姿勢を保ち、拳銃を撃つ。しかし、素早く動くサルタナを弾丸が捕えることはできず、弾は空を切る。近距離では逆に当てづらいのだ。
サルタナは弾丸をバックジャンプで躱す。
「フフ、お困りのようだな。」
黒バンダナの下の瞳には笑いはなく、冷酷な光だけが宿る。俺は歯噛みする。
(チッ、なんちゅう身体能力だよ……!)
再び狙いを定め、俺は眉間を直撃するコースで撃つ。しかし、サルタナは首をひねり、余裕で回避した。その瞬間を逃さず、俺は反射的に蹴りを放つ。銃弾を躱したサルタナの腹を蹴り上げ、顔を歪ませる。
「うぐっ!」
その隙に、俺は二丁の拳銃を手放し、両腕のホルスターからジャックナイフを二本抜き出す。後方に飛び、距離を確保する。逆手持ちで両手にナイフを構え、再び構え直す。
「ハァァッ!」
「シィィッ!」
距離を詰めつつ、俺のジャックナイフとサルタナのダガーナイフが連続して激しくぶつかり、火花を散らす。俺の右をサルタナの左が受け止め、サルタナの右を低く身をかがめてかわす俺。




