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Re:ガンマン  作者: アダス
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「少女」Ⅷ

『気を悪くするかもしれないが、我々は君をあまり信用してない。よって、後からついていこうと思う。それでいいかね? 』


俺の耳に付けたインカムから、先程の白髪交じりの男の声が低く響く。その声音は落ち着いているのに、どこか鋭さがあり、長年の経験で培われた余裕が滲んでいた。声の抑揚や微妙な間合いから、彼が多くの危険や緊張の場を潜り抜けてきたことが瞬時に伝わってくる。背後で歩く九人の気配も、影のように一定の距離を保ちながら付いてくるのが肌で感じられる。足音や体の揺れ、軽く衣擦れする音までも、無言の圧力として存在感を放っている。彼らの動きは一糸乱れぬ精密さを持ち、周囲の雑踏に紛れても、異質な緊張感を漂わせている。群衆のざわめき、車のクラクション、遠くで鳴る自転車のベルなど、都市特有の喧騒は一切耳に入らないかのように、しかし視線は常に周囲を捉えている。


「別に構わねぇよ。」


俺は襟元の小型マイクに向かって淡々と応答する。肩の力は入っておらず、歩幅も自然だ。警戒されるのは最初から予想できていたことで、特に意識する必要もない。俺の視線は常に少女を確認しつつ、周囲の人々の動きや背後のSPの配置にも自然に行き渡っている。呼吸も整い、慌てることなくいつも通りに、足取りも軽く、だが仕事なので確実に安全圏を確保しながら歩き続ける。微かに群衆がぶつかる衝撃や、横から飛び出してくる人間も、体の感覚だけで先読みして避けられる感覚。


少女のSPである九人は、少し距離を置きつつも警戒を怠らない。黒いスーツに身を包み、無表情で肩幅の広い彼らは、周囲の雑踏に紛れてもなお目立つ存在感を放っていた。歩くたびにわずかに揺れる手や、足取りの音、衣服の擦れまで計算されたかのように統制されている。通行人の視線や声かけにも動じず、真剣な表情で少女の護衛に徹している。その距離感は絶妙で、近すぎず遠すぎず、いざという時には瞬時に間合いを詰められる位置に整えられている。


「うわぁー!すごいたくさんの人がいますね!」


都内の、歩行者が四方八方に一斉に横断できる交差点――通称スクランブル交差点に差し掛かると、少女は大きな瞳を輝かせ、歓声を上げた。普段の生活では目にすることのない光景に、彼女は完全に圧倒されている。信号が変わると同時に動き出す人々の波は、方向も速度もバラバラで、まるで都市そのものが生き物のように蠢いている。群衆の流れは計算できない動きをしているように見えるが、都市に慣れた俺の感覚では、微妙な流れを読み取り、少女を中心に最適な動線を確保することができる。


「今は少ない方だけどね。」


俺は答えながら、少女の真後ろで、歩行者を最小限の動きで避けつつ視線を絶やさない。群衆の中で目立たずに、あくまで彼女を守る保護者として自然に振る舞う。万一の事態にも即座に対応できるよう、体の動きや視線の軌道を微調整する。群衆の中で突発的に飛び出してくる者や、接触してくる可能性のある者も、自然な感覚で把握している。背後の九人の配置も無言で確認し、群衆に埋もれながらも、常に少女を守る態勢を維持している。


歩行者の波は徐々に厚くなり、足元で靴音やバッグの擦れる音が複雑に混ざり合う。信号の変化に合わせて人々が動くたび、俺は体を張って少女を守りながらエスコートする。黒いスーツの九人も影のように距離を保ち、必要に応じて微調整を行い、群衆の中でも確実に彼女を守る態勢を維持していた。周囲の雑音や視線など、一切気にする必要はなく、すべては任務の一部として淡々と遂行されている。


俺の返事に少女が後ろを振り返った。

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