92話 約束の日_2
「おまたせ~」
「長かったねぇ」
エマは私のベッドの上で漫画を読んでいた。それはこっちの世界で見つけた百合漫画で、エマはそれを興味深そうに読んでいる。
「エマはそういうジャンル、初めて読んだ?」
「うん……もちろんこういうのがあるのは知ってたけど、奏の本棚にあるのはやっぱり不思議。前見た時は男の子の本ばっかりだったから」
「前までの本も一応あるよ、全部ダンボールの中だけど」
「そうなんだ?」
それは何時の日か突然、私が戻ってしまった時のため。……その可能性だってもうほとんどないと思うけど。
「ふーん……」
「どうしたの?」
「……奏もこういうこと、私としたかったりするの?」
と見せてくれたページは、二人の女の子が制服を半分はだけさせながら、キスしているページ。
「え、エマ! それちょっとえっちなやつだから!」
「ふーん、へ~、女の子同士ってこんな感じなんだぁ」
エマが読んでいる漫画は、私が持っている中でも濃厚な絡みがあるもの。年下でしっかりものの後輩が、先輩を誑かして責め立てる、そんなような……じゃなくて。
「わ、私がレズなことは分かってるでしょ? あんまり誘惑しないで……」
「誘惑したらどうなるの?」
「……言えない」
ぎりぎりで踏みとどまる。もしエマが指先一つ私の背中を押したら、今日まで押し固めていた防波堤は一気に決壊してしまう。
私は何も言えなくて、エマはそんな私をベッドの上から見上げていた。読んでいた漫画をパタンと閉じると、ベッドの上であおむけになる。
「はじめよっか、電気、暗く出来る?」
「うん」
エマがどうしたかったのか分からないまま、私はカーテンを閉めて、電気を消した。
電気を消したといっても、まだ日は高い。部屋の中はぼんやり明るくて、エマの姿も良く見える。
「全部脱いだ方がいいんだよね?」
「汚れちゃうかもしれないから、あっ、あっち向いてる?」
「うん、そうしててぇ」
私がドアの方を向いている間に、後ろからもぞもぞと服の擦れる音が聞こえてくる。エマがすぐ後ろで脱いでいる、その事実に布切れの音さえいやらしく聞こえてしまう。
「……いいよ」
過剰反応しちゃダメ、今日はエマを手伝うだけなんだから。
そう思っていても、ベッドの上で生まれたままの姿になったエマは、凄い迫力だった。そしてどことなく、艶めかしい雰囲気をまとっていた。
腕で隠そうとしている胸は本当に先端しか隠れていなくて、隠しきれない胸が零れ落ちている。Iラインも自分で処理しているのかつるつるだった。
「……えへへ、奏の前でも、やっぱり恥ずかしいねぇ」
それは照れ隠しのような言葉。
「ご、ゴメン、そういえばタオルあるから、これで隠して」
「え、なんだ。そうだよね、ありがとう」
ハンドタオルを数枚渡して、エマは寝転がる。胸と恥部だけ隠して、私を待っていた。
そうだ、私がしないと始まらないんだ。と気づいて、ベッドの横に座る。そして机の中から、長細い棒を取り出した。
「あ、やっぱりそれ」
「うん、いろいろ迷ったんだけど、これが一番いいかなって」
この世界では、男の子と関係を持つ前に処女喪失が当たり前だから、それ用のグッズも数多く売られていた。私が買ったのはその中でもメジャーな、ただ貫通させるための棒。先端は少しだけ太くなっているけれど、つるんと肌触りはいい。ローションをつければ初めてでも入りやすいと思う。
正直、エマに男性を模したもの入れるのは、めちゃくちゃ嫌だったんだけど、これに関してはただの棒って感じだからぎりぎり許した。本当にぎりぎりだけど。
私と白ちゃんの時みたいに指ですることも考えたんだけど、指ってあんまり奥まで届かないしやっぱりちょっと痛いから、苦渋の決断でグッズの力を借りることにした。
「その前に、軽くほぐすから身体の力抜いてね」
とはいえ最初から突っ込むことなんてしない。
ある程度濡らしてから、と思って恐る恐る下に手を進めると、エマのそこはすでにぐっしょりと濡れていた。
「……エマ?」
「し、仕方ないじゃん……私だって緊張してたんだからぁ」
「そんな風に見えなかったけど……」
「あんまり私が緊張してると、奏が気にするかもしれないと思ったから」
それは私のことを考えてのことだった。
今日会った時だって、本当はかちこちに緊張してくるかなと想像していたくらいなのに、エマはいたって普通のテンションでいた。むしろ自分から積極的に私にくっつきたがるほど。
「……そうしてないと、すぐに考えちゃいそうだったから。奏に、してもらうこと」
「うぐっ!」
エマの超ド級の可愛さに、胸を打たれる。
「エマ、こんなに可愛かったっけ……?」
「か、奏に言われてもなぁ……ね、それより私も緊張で大変だから、早くシテ……?」
「う、わ、分かった」
そこからは……夢中になってたと言うほかない。
私が指を少し動かすだけでエマは可愛い声を上げるし、それを私が上げさせていると思うと興奮しかなかった。
それでも辛うじて自我を保てていたのは、エマの処女喪失をちゃんとサポートしよう、という気持ちが残っていたからだと思う。
エマの声に夢中になりながら、十分に中をほぐした後、補助用の棒を手に取る。
「……そろそろ良さそうだから、入れるね」
「うん」
私の持った棒を、エマは見ないように視線を逸らした。本当は怖さもあるんだろうけど、エマは少しもそんなことを言わない。言葉にしても、私がやりづらくなるだけだと分かっているから。
「奏、手ぇ、握ってていい?」
「もちろん」
エマの手を優しく握る。その手は微かに震えていたけれど、安心させてあげるように私は笑顔を作った。そしてエマが少しだけ頷いたタイミングで、私は手に持った棒でエマを貫いた。
「……どう? 大丈夫?」
「うん、平気。まだ違和感はあるけど」
全部終わって、エマは新しいタオルをまとったままベッドの上に座っていた。エマの純潔が染みたタオルはすでに洗濯機の中につけてある。
「でも、思ったより痛くなかったかも。なんかふわふわして、夢みたいだなぁって思ってる間に終わっちゃった。奏が手を握ってくれたおかげかも?」
と言いながら、私達はまだ手を握っていた。私の横にはぴったりエマがくっついているし、それは友達との距離としてはちょっと近すぎる。
私はその距離を意識しないように心の中で頑張っていた。
エマのあんな姿を見てしまって、正直心は昂ったまま。お母さんが帰ってくるのも夜遅くだし、エマが帰った後一人ですることはもう決まっているようなものだった。
「でもこれでお役目もちゃんとできるよぉ。実は幸太郎君の次のお役目、年が明けたらすぐなんだけど、その時に付き合う予定になってるの」
「それってもう一週間とか、十日後ってこと?」
「うん、だからその前に済ませたかったんだよねぇ。雑誌とかだと簡単そうに書いてるけど、実際するってなったらちょっと怖かったし、奏に付き合ってもらってやっぱり良かったかも」
そうは言うけど、私はその事実の方に落ち込んでいた。つまり冬休みが終わった時には、お役目を終えた時につける指輪を、エマがしているということ。
「……お役目って、月一の搾取についていくだけだったよね? 本番はしないんだよね?」
「うん、搾取のお手伝いするだけ。本番は……幸太郎君はみんな卒業してからって言ってて……」
「えっ、そうなの? じゃあ紅葉も?」
「うん。幸太郎君、そこだけは譲らなかったんだって。だから紅葉さんもまだのはずだよ」
他のクラスじゃ、枠に入った子が妊娠したのでお休みってことも何回か聞いていた。というかこの世界では女の子の方が積極的で、枠に決まったと思うとすぐに子供を欲しがるし、男の子もさっさと済ませてしまうことが多い。
だから幸太郎君みたいに高校卒業後というのはあんまり聞かない気がする。
三年生の途中でエマが妊娠しましたーとかなると残りの学生生活悲しすぎるし、私としてはその方が都合いいんだけど。
「なんだかちょっと変わってるよね、幸太郎君」
「うん、でも私は幸太郎君でよかったなぁ。他の男の子は、ちょっと乱暴そうだし……男の子に選ばれるのは光栄なことなんだけどね」
幸太郎君で良かった、というのはその通りなのかもしれない。エマが男の子に乱暴されるなんて、普通に復讐案件だし。
幸太郎君なら大丈夫そうだけど、ちょっと釘刺すくらいはしておきたいなー……って三年生になったらもう来ないんだっけ。話すタイミングなさそう。
「ねぇ、奏」
「ん、なぁに?」
と私がそんなことを考えていると、いつの間にかエマとの距離はもっと近くなっていた。私の腕にエマの豊満な胸が当たっている。
「……奏は、私でもどきどきしてくれるんだよね?」
「うっ……そ、そうだね」
少し甘えるような、声と表情。どきどきどころじゃない、もう私の心臓は暴れ散らかしていて煩いくらい。
「私、それ聞いて嬉しかったんだよ。私より可愛い人なんて沢山いるし、こんなに胸だけ大きくてもみっともないし。自己評価も、奏となっちゃんのおかげでちょっと前向きになれたけど、そこまで高くない。でもね、奏みたいな理想の女の子を私でもどきどきさせれるのは、すっごい自信になるっていうか……なんだろうね、優越感に近いのかな」
エマの言う事は、正直私には理解できなかった。いったいなにを言いたかったのかも。
「だからね、もっと奏をどきどきさせてみたいなって……えいっ」
「わっ!」
ぽすん、と今度は私がベッドに倒される。私の胸の上にはバスタオルを半分はだけさせたエマが、初めてみる、どこか不敵な笑みを浮かべて私を見つめていた。
「親友としてはちょっとはみ出しちゃうかもしれないけど……私もちょっと女の子同士ってどんな感じなのか興味があるの。もし奏がいいなら……私でどきどきしてくれてるなら、良かったら私にもさせてほしいなぁ」
私の上に馬乗りになって、エマは自分からバスタオルを広げた。エマの頬は赤く染まっていて、目は爛々と輝いている。その瞳を見て、エマが私と同じタチだとすぐに分かった。
「知識は沢山あるけど、するのは奏が初めてだから、痛かったら言ってね?」
「んぅ……っ!」
普段は聞くことなんてない、エマの甘い、発情しているその声。それだけで私の身体は軽くイってしまった。もうすっかりエマを受け入れる準備は出来ていて、私は服のボタンを外されるのを、心の中で急かしていた。




