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男女比が狂った世界に転移したレズはどうしたらいいですか?  作者: シキ


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86話 くるみのリベンジデート_2


 その後はくるみに連れられてウィンドウショッピングに出かける。

 くるみは常に私にくっついてきて、他の人からは恋人同士みたいに見えていたと思う。けれど別に後輩がくっついてくるのは嫌じゃないし、最近は遊んであげられなかったのもあったから好きにさせてあげていた。


「先輩! このスカート可愛いです! お揃いで買いませんか?」

「確かに可愛いかも! いいよ~」

「セットアップもこれとかどうですか? ほら、お値段もお手頃ですっ! 一緒に買いましょう!」

「あっ、本当だ。可愛いのに意外と安いんだね。これくらいなら買いかなぁ」

「先輩先輩! ついでにお揃いの下着も買いませんか?」

「いい……え? 下着?」


 普通に服を選んでいたのに、なんか話が飛んでいた。くるみを見るとバレたか、という顔をしている。


「下着一緒は、さすがにちょっと違くない?」

「先輩と一緒の下着してるってだけで、なんか燃えてくるんですよぉ!」

「見えないのに?」

「一緒の下着を持っているって事実さえあれば、見えない方がよくないですか? 今奏先輩と同じ下着してるんだ……って思えるじゃないですかぁ!」


 期待の視線で私をみるけれど、くるみの胸は確かな膨らみはあるけれど、平均的で成長途中って感じだ。

 この世界は私がいた前の世界より数倍下着が種類も豊富だから、お揃いにできないことはないと思うけど下着一緒にしよって言われるのはさすがの私も初めて。


「……いいのあったらね」

「やった! 言質取りました! 絶対に奏先輩が気に入るの見つけます!」


 そんな一言に張りきって、そこからひたすらランジェリーショップを回ることになった。くるみ的にはおそろのスカートより下着の方が大事みたいで、何店舗も回って試着を繰り返す。

 店員さんもすっかり私達のことをカップルだと思ったらしく、くるみと協力して色々な下着を着せようとしてきた。

 ほぼ布の面積なくない? みたいなものもくるみが興奮して持ってきたけど着せるならまだしも自分が着るのは恥ずかしいからそれだけは断固拒否した。

 結局くるみの粘り強さと積極性に負けて、お揃いのショッパーを手に持ってランジェリーショップを出た。

 下着探しに結構時間を使ってしまって、ちょっと休憩しようと近場にあったカフェに入る。


「お疲れだと思いますので、注文は私がしてきます! 奏先輩は座っててください!」


 私を先に座らせて、くるみはカウンターへ向かっていく。カウンターには何人かの人が並んでいて少しだけ時間がかかりそうだった。


 くるみの後ろ姿を見ながら、私は思う。

 今日のくるみのデートコースは、たぶん最初に私とデートしたコースを真似ている。

 その中でくるみは、きっと自分の成長具合を見てもらいたかったんだろう。

 実際、くるみは私と再会した当初とは全然変わっていた。挙動不審になることもないし、以前は苦手だった自分の意志で決めるということもちゃんと出来ている。くるみの目標は、いろいろな意味で私の隣を歩けるようになることだから、その目標には着々と近づいている。


 そんなくるみに対して私は、今日はそこまで気のない態度を取っていた。

 というのも、くるみの好意に今の私はそこまで答えられないからだ。


 いろんな女の子の端っこをちょっと食べさせてもらう……というのは別として、私の本命は白ちゃんで、今くるみと付き合うのは私の気持ち的にちゃんと向き合う事ができない。

 くるみはまっすぐな好意を私に伝えてくれている。今や私にとっては可愛い後輩なんだけど、逆に言ったらそこまでともいえる。私がくるみの人生に責任を持てない以上、つかず離れずの距離くらいが丁度いい。

 まぁ本気でくるみと付き合う事になったら、ちょっと束縛されそうっていうこともあるけど……。

 私が高校卒業する時くらいになれば、いろいろな関係にも区切りがついているのかな。


「奏先輩、お待たせしました!」


 そんなことを考えていたら、トレイを持ったくるみが席に座る。私はお礼を言って、そのグラスを受け取った。




「最後に来てほしいところがあるんですよ!」


 くるみにそう言われて連れてこられたのは、古びたアパート……くるみが一人暮らしをしている家だった。


「そういえば、あれから来てなかったね」

「そうですよー! 私はいつでも歓迎なのに、なかなか言ってくれないんですもん。奏先輩ならお泊りもOKですからね?」


 カン、カン、と階段を踏みながらくるみは鍵を差し込む。

 前に入った時はおおよそ女の子の部屋じゃなかったけど……ちょっとは変わったのかな? とくるみにドアを開けてもらうと、その中は以前と全く変わっていた。

 床にはナチュラル色合いのラグマットが敷かれ、新しめの小さなテーブルがある。テレビも小さいけれど新品に変わっていて、家電は端にまとめられているわけじゃなく、電子レンジはキッチンへ、ケトルは机の上へと機能的に設置されていた。カーテンも可愛い柄に変わっていて、部屋の端には勉強用の机もある。壁には木製のラックが積み重なっていて、その上には写真立てがいくつも置かれていた。半分くらい私の写真だったのは謎だけど、小さなプランターも置かれていて女の子らしいカラーでまとめられている。

 その中はすっかり女の子らしい部屋になっていて、別の部屋と言われた方が信じそうだった。


「……ずいぶん変わったね」

「はい、頑張りました! 沢山アルバイトして、雑誌とかも読んで勉強して……少しでも奏先輩に近づけるようにと思って」

「そっか」


 私はくるみの部屋を見渡す。前の部屋を知ってるからこそ、その努力はまっすぐ伝わってきた。

 少しだけ、複雑な想いが胸を締め付ける。

 くるみはこれだけ私を追いかけてくれているのに、今すぐそれに答えてあげられないことに。

 でも、くるみが本気だからこそ、やっぱりそう簡単にくるみの好意に答えてあげることはできないとも思った。


「いい部屋になったね、びっくりしたよ」


 くるみの小さな頭を撫でる。くるみはくすぐったそうに、でもとても嬉しそうに笑ってくれた。




「本当は今日、すっごく緊張していたんです」


 くるみの部屋で暖かい飲み物を飲みながら、くるみはそう口を開いた。


「そうなの? 全然気が付かなかったけど」

「それなら成功ですね! 実はまだ、気をつけないと昔の癖が出てしまうことがあるんです。そういう時星羅には注意してもらうようにお願いしてるんですけど、長年の癖はなかなか直りませんね。奏さんには気づかれましたけど、今日のルートも事前に全部決めて、迷うことがないようにして……」

「ってことはお揃いの下着買ったのも?」

「あ、あれは違います! テンション上がっちゃっただけです。星羅と翠と同じ下着は、さすがに仲良すぎ……」


 私とはいいのか……と思ったけど、それを言うのは無粋かな。


「そ、それで、あの……もう一つ、奏さんにはプレゼントがあって」

「プレゼント?」

「だって今日、誕生日デートじゃないですか?」


 あ、そうだった……今年の誕生日は平日だから、今日になったんだっけ。途中からそんなこと意識しないで普通に遊んでた。


「よかったら、受け取ってください!」


 と、渡されたのは綺麗にラッピングされたプレゼント、手のひらよりは少し大きなサイズのそれは、なにか箱のような感じ。


「ありがとう、開けていい?」

「はい、ぜひ」


 くるみが見守る前でその紙を開くと、シンプルな写真立てが出てきた。


「可愛い写真立て、私の部屋にも飾りやすそう……っていうかこれもお揃い?」

「そうです! 私のはあそこにあって……」


 そう言われて視線の先を見ると、それだけ写真がまだ収まっていなかった。


「? 中の写真は?」

「それは今撮りたいんです。私がそれを現像して奏先輩にお渡しするので、同じ写真を入れてほしいなーと」

「なるほどねぇ、いいよ、撮ろうか。でもここでいいの?」

「はい、ここがいいんです」


 景色がいい場所とか、人気のフォトスポットとかじゃなく、くるみはここが良いらしい。

 くるみの隣に座ると、くるみの腕が私をしっかりと抱きしめた。インカメラで何度か撮影する。

 それは派手でも綺麗でもなく、日常を切り取ったようなわりと普通の写真。でもそんな写真が、くるみがプレゼントしてくれた写真立てには合うような気がした。


「はい、これでばっちりです! 写真にしたら奏先輩に渡しますね」


 何枚か撮り直して、くるみは納得したようだった。くるみが見せてくれた写真の中ではとっても幸せそうな笑みをしたくるみと、柔らかい表情の私が並んでいた。


「あの、できればもう一つお願いがありまして……」

「なぁに?」


 今日はくるみの頑張ったところをたくさん見せてもらった。大抵のお願いなら聞いてあげよう、と気持ちで答えるけれど。


「さっき買った下着で、撮影とかって……」

「うーん……それは嫌かな!」

「えー! せっかくいいって言ってくれそうな雰囲気だったのにぃ!」

 騒ぐくるみを無視して、私はもらった写真立てを大切に抱きしめた。

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