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男女比が狂った世界に転移したレズはどうしたらいいですか?  作者: シキ


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85話 くるみのリベンジデート_1


 文化祭が終わると、一気に年末感が漂ってくる。


 冬休み前にはテストもあるし、先生も就職や進学の話を良くしてくる。進級すればますます速くなるだろうし、なんだかどことなく落ち着かない日々を過ごしていた。


 そんな中、私にはこの冬、3つの大きなイベントがある。


 一つは言わずもがなエマの処女卒業のお手伝い。冬休み中の予定で、意識してしまうとエマが近くにいるだけでドキドキしてきてしまうから、なるべく思い出さないようにしている。

 もう一つがクリスマス。去年と同じようにみんなで過ごす予定。来年は受験間近だし全員で集まれない可能性もあるから、しっかり楽しみたい。

 そしてもう一つが、私の誕生日! 誰かの誕生日には毎回みんなで集まってパーティしているから、今年も楽しみにしていた。

 冬は白ちゃんのお仕事も落ち着く時期だし、私的には誕生日の近くでデートできないかなぁと考えていたりもしていたんだけど……。

 白ちゃんとの都合はなかなか合わないまま、誕生日前の休日、私は駅前で待ち合わせをしていた。


「奏先輩、お待たせしました!」


 そんな声と共に駆け寄ってきたのは、すっかり分厚いコートを着たくるみだった。



 ★ ★ ★



 くるみとのデートの発端は、文化祭が終わってすぐ、私が翠ちゃんのことを二人に相談した時の事。

 翠ちゃんがいつ戻ってくるか分からなかったけど、もし戻ってきた時に一人ぼっちじゃ寂しいかなと思って、同じクラスのくるみと星羅に話しかけてみてほしいとお願いした。


「奏センパイ、焼きそば神と知り合い?」

「焼きそば神?」


 チェーンのカフェで二人に飲み物を奢っていると、星羅からは変な単語が出てきた。


「それはどうでもいいんです! いつ彩野さんと知り合ったんですか!? 私聞いてないんですけど! それって浮気じゃないんですか!?」


 落ち着いた星羅とは違い、まさか同じクラスの名前が出てくると思わなかったのか、くるみは一人憤慨していた。

 そういえば文化祭中はちょっとすれ違うだけで、結局二人と回ったりはしなかったからな。くるみから連絡は来てたけど、途中からそれどころじゃなかったし。


「文化祭の時たまたまねー」

「知ってます! 奏先輩と彩野さんが一緒に歩いてたのはクラスで噂になってましたから。千歩譲ってそれは我慢するとして、私が怒ってるのは最近全然私と遊んでくれないことです!」


 くるみのいう通り、思い返すと前にちゃんと遊んだのは夏休みのオウルの時な気がする。と言っても全然会ってないわけじゃなくて、学校じゃ私を見かけるとすぐに抱き着いてくるし、それでよく詩帆ちゃんと睨みあったりもしている。

 私としてはそんなに怒るほどかなぁと思ってしまうけど、くるみは大層ご不満らしい。


「奏先輩のお願いですから、彩野さんのことは引き受けます! その代わり、奏さんの誕生日に私と二人きりでデートしてください!」

「それは別にいいんだけど、私の誕生日平日だよ?」

「じゃあその前の週の日曜日がいいです!」

「そこにこだわりはないんだ」


 星羅の呟きを無視して、くるみは私に詰め寄ってくる。


「それなら同じこと頼んでる星羅も一緒ってことにならない?」

「あたしは遠慮しまーす。彩野に話しかけるのは別にいいですよ、仲良くなれるかはわかんないですけど」

「そこは相性あるからね、気が合わない場合もあるだろうし、最初だけアプローチしてくれればいいよ。ありがとね」

「むぅ、なんか星羅に優しくないですか……?」

「そんなことないって、それよりデートするんでしょ?」

「はっ、そうでした! 早く完璧なデートプランを考えないと……奏先輩! 覚悟しておいてくださいね! 私のこと絶対一番にさせてみせますから!」


 そんなことを言って、カップをぐいーっと飲み干して、「それでは!」と鞄を持って走り去ってしまう。私と星羅はその後ろ姿を見送った。


「大丈夫かなぁ、気合入りすぎてない?」

「まぁ、大丈夫じゃないですか? くるみいつもあんな感じだし」

「あれがいつもって言われるとちょっと心配になっちゃうね……」

「今を生きてる感じがして面白いんですよね、くるみって」


 星羅はゆっくりホットチョコレートを傾けながら、くるみが走り去った方向を見つめる。


「……でもくるみも頑張ってると思いますよ。最近は勉強もちゃんとしてるし、クラス活動も率先してやってるし……奏センパイはくるみにトラウマあること、知ってるんですよね」

「うん、というか星羅も知ってるんだ」


 くるみには小さい頃男の子から酷い扱いを受けたトラウマがある。前に私と一晩お泊りした時は、そのトラウマが色々な行動に出てしまっていた。


「くるみから直接聞いたわけじゃないですけど、オウルにもそういう子は結構いたから、なんとなくわかるんですよね」

「そうなんだ」


 確かに児童福祉施設のオウルなら、そんな子がいても不思議じゃない。それは悲しいことだけど。


「まだたまに情緒不安定になりますけど、今は結構変わってると思うんで、奏センパイもくるみのことちゃんと見てやってください」

「なんか星羅がそういう風に言うの、意外かも」


 というと、星羅は校則違反のピアスを揺らしながらにっと笑った。


「これでもあたし、くるみの友達なんで」



 ★ ★ ★



 そんなことがあって、今日はくるみにおまかせのデート。

 くるみは会った時から超ご機嫌だった。服装は少し派手めで可愛いコートに、ミニスカートにタイツ姿。毎回思うけど、見た目は楚々とした感じなのにゴテゴテした服装をするからそのギャップが可愛かったりする。

 そんなくるみは私の右腕にぎゅっと抱きついて歩いていた。


「こうすれば歩幅がズレることもないですよね」


 くるみがそう言いながら上目遣いで見上げてくる。本当に嬉しそうにしていて、思わず仕方ないなぁって気持ちになる。


「ちょっと歩き辛いけど……私の誕生日ってことは忘れてないよね?」

「もちろんです! 私の幸せを、先輩にも伝わるように抱き着いているんですよ~」


 くるみと前に二人で歩いた時は、私の一歩分後ろを歩いて付いてきていた。それは昔、くるみが男の子に言われて、すぐ隣を歩けなくなったから。

 実はその歩き癖がすっかり治っているのは、星羅から聞いている。だから別にここまで密着しなくても普通に歩けるはずなんだけど。


「奏先輩、まずはお昼食べに行きましょう! 新しく出来たパン屋さんがあるんですよ~」


 くるみが嬉しそうだから、まぁいっか。と私はくるみに引っ張られながら歩くのだった。




 くるみが案内してくれたのは、真新しいパン屋さんだった。近寄っただけで焼きたてのパンの匂いがして、お腹が空いてくる。


「ここは先に席を取るんですよー。あ、二人でお願いしまーす!」


 カウンターにいた店員さんへそう伝えて、奥にあるイートインスペースの席を取る。


「奏先輩はソファ席をどうぞ!」

「ありがとう」


 イートインスペースは普通の椅子とソファが対面していて、くるみにソファ側を勧められる。私が座ると、くるみはさっとメニューを差し出してくれた。

 ペラペラとめくって、オススメ! と書かれたページを見せてくれる。


「このお店にはイートイン限定メニューがあるんですよ! このパンケーキとかどうでしょう?」

「うわ、美味しそー! でもお食事系じゃなくて、こっちの甘いのもいいな」

「これも美味しかったです!」

「くるみは一回来てるんだ?」

「あ……そうですね。えっと、今日のデートコースは星羅と翠と一度回っています……」


 どうりでスムーズだと思った。イートインスペースにも自然に案内されたから、来ていない方が不思議って感じだったけど。


「うぅ~、バレるの早すぎ……」


 バレたことが恥ずかしいのか、なんだかくるみはしょんぼりしていた。


「別にデートの下見くらい、恥ずかしがることでもないでしょう。というか翠ちゃんとも仲良くしてくれてるんだね」


 翠ちゃんが学校に復帰したのはちょっと前のこと。復帰初日に私にも会いに来た。その時はまだくるみも星羅のことも言ってなかったけど。


「ちょっと気に食わないところもありますけど……翠は勉強できるので利用してあげています」

「一緒に勉強会してるんでしょ? ふふ、仲良くなってくれて嬉しいな」


 図書室で3人が勉強している、というのは図書室常連の詩帆ちゃん伝いで聞いていた。

 私も気になって一度見に行ってみたことがあるけれど、思った以上に翠ちゃんは二人と馴染んでいるように見えた。


「きょ、今日は別の女の子の話は禁止です! それより何にします? どれも美味しいと思いますけど」

「私のために下調べしてくれたんでしょ? それならくるみが美味しかったのを食べたいな」

「奏先輩……やっぱり大好きです!」

「はいはい、分かったからとりあえず注文ね」


 テーブルの向こうからハグして来ようとするのをメニュー表で阻止する。

 私はくるみがこの間食べたというナッツといちじくのパンケーキ。くるみはシンプルなイチゴとチョコのパンケーキを注文した。

 前は選ぶことそのものが苦手っぽかったけど、それも克服したのかな?

 豪華なパンケーキを食べながらくるみのことをそっと見ると、くるみは私に向かってあーんと口を開けていた。仕方ないなぁと思いながら、クリームたっぷりのパンケーキをフォークに刺した。


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