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男女比が狂った世界に転移したレズはどうしたらいいですか?  作者: シキ


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47話 私の知らない女の子_1


「話が重すぎる……」


 ハンバーガーショップの三階。

 位置情報を送って10分で来たくるみに、私との出会いを話してもらったけど、想像以上に重たーい話だった。


 身近にいる男の子が幸太郎君だから気にならないけど、この世界の一般的な男の子はくるみの幼馴染みたいのが多いんだと思う。そんな男の子の勝手な行動で、女の子が使い捨てられるのは珍しいことじゃない。

 ただくるみの場合、不幸だったのは味方が一人もいなかったこと。だれか一人でもくるみの話を聞いてくれる人がいれば結果は違ったかもしれないけど、他の女の子も先生も、お母さんでさえ味方をしてくれなかった。


 そんな時に現れた唯一の味方が中学時代の私で……今の話を聞けば依存されても仕方ないなと思ってしまう。

 ちなみにその総合病院は、私の記憶でも何度か行ったことがある。けどくるみに出会った記憶はなくて、同じような世界でもちょっとずつ過去は違うんだなってことを目の当たりにした。まぁ私は男の子探しに外出したりした記憶もないしね……。


 話しづらかっただろうに全部教えてくれたくるみを、女の子をオトすのに邪魔だから、と切り捨てるのはあまりにも非情に思える。もともとこの世界にいた男の子が好きだった私ならまだしも、今ここにいるのは女の子至上主義の私で、そんなこと出来るはずもなく。


 ただくるみを素直に受け入れるのはちょっと怖いんだよなー。普通に依存されそう……。


 くるみは後輩っぽい雰囲気あるし可愛いから、好かれるだけなら全然いいんだけど、独占欲がどのくらい強いのか分からない。この世界で私がしていることを知られるとなんか刺されそう。


「くるみはこれからどうしたい?」

「いつでも奏先輩と一緒にいたいです!」

「いつでもかぁ」

「はい、いつでも」


 んー……でもくるみってたぶん頭は悪くないんだよね。進学校の百合が原に入学してるのがその証拠だし。

 それならいつでも一緒っていうのがどういうことなのか、想像できないことじゃないと思うんだけど。

 いろいろ考えた結果、私がくるみのことを知らなさすぎるという結論に落ち着いた。私にとってはほとんどはじめましての人だし、まずくるみのことを理解するのが最初かな。


「ちょっとお試ししてみようか」

「なにをですか?」


 そう言うと、くるみはまっすぐな眼を私に向けた。


「いつでも隣にいたいんでしょ? 今週末の土日、私の親出張でいないから泊りに来る?」


 大きな眼がぱちりと瞬きをした後、ガタリと椅子が大きな音を立てる。


「同棲ってことですか!!!」

「いや、違くて! くるみが言う『いつも一緒』をやってみようって話。私もそれからいろいろ考えようかなって」


 呆然としたままくるみは椅子に落ち着く。同棲じゃないよ?

 でも一日一緒に過ごせばもうちょっとくるみのことも分かってあげられるかなって……え、なんで泣いてるの?


「あ、ちょっとちょっと! 今の会話泣く要素あった!? あーもー」


 鞄に入っているハンカチを押し付ける。それでもくるみは全然泣き止まなかった。その姿に仕方ないなぁと思ってしまって、自分でもなんだか絆されてしまっている実感があった。



 ★ ★ ★



 ただいつも付きまとわれるのは正直邪魔。

 そもそもくるみ一年生だし、毎回二年生の教室に来ると友達も作れない……くるみが友達を欲しているかは別の問題だけど。

 だから週末のお泊りを約束する代わりに、それまでは会いに来ないようにしてもらった。くるみは『約束』を過剰に守りたがる傾向があって、その約束の通り、次の日の朝から迎えに来なかった。


「おはよー」


 その代わりになぜか菜月が私の家の玄関先にいたんだけど。


「おはよう……なんか約束してたっけ?」

「いや? というか昨日連絡してなかったっけ? ……あ、ゴメン。メッセージしようとして送信できてなかった。ほいっと」


 ピコンとスマホが鳴ると、私達5人のグループチャットにこんなことが書かれていた。


『奏のお迎えリスト

 火曜日:私

 水曜日:エマ

 木曜日:詩帆

 金曜日:莉々』


「なにこれ?」

「読んだままだよ。くるみがまた家まで来たら面倒でしょ? だから日替わりで奏を迎え行こうってことにしたんだー」


 と菜月は話す。その気持ちは素直に嬉しくて、胸の中に温かい気持ちが溢れてくる。


「えー、なにそれ……でも嬉しい。ありがとう」

「どういたしましてー、じゃあ行こ。今日はまだ来てないみたいだけど、いつくるみが来るかわからないし」

「大丈夫、今日から来ないよ」

「そうなの?」


 歩きながら、昨日くるみととある約束したことを菜月に伝える。といってもくるみのパーソナルな情報は言わなかった。あんまり言いふらすような内容じゃないし。


「くるみはちゃんと約束をすれば言う事聞くよ。見合った約束にはしないといけないけど」

「奏は何を約束したの?」

「えぇっと……まぁ……ね?」


 ジト目の菜月に睨まれながらその内容も内緒にさせてもらった。


「そ、それより! 私は菜月のことも気になってて、菜月のお相手とはなにか進展会った? 前聞いた時から結構時間も経ったよね」

「露骨な話題そらしだー! まぁいいけどさ、私も聞いてもらいたかったし……実はね、前の春休みの時に顔合わせしようかっていう話が出たんだけど」


 菜月のお相手というのは、菜月のお母さんが経営している化粧品会社の取引先、その社員の子供のこと。その会社といろいろな取引があって、菜月はその男の子の種を貰う事が決まっているらしい。


「でも結局相手にキャンセルされちゃってさー」

「え、そうなの? どうして?」

「女の人と会うの怖いんだって。まだ小6だったみたいだし……今はもう中1か。私の方が少し年上だから仕方ないのかなーって」

「え、年下なんだ?」

「うん、でも中学になってもほとんど学校行ってないみたい」


 世の中の男の子はおおよそ2パターンに分けられる。くるみの話にあった男の子みたいに傲慢な人か、菜月の話みたいに女の子を極端に怖がるか。まぁ男の子が外を歩くだけで、襲われて種を絞られるこんな世の中じゃ、そうなるのも仕方ない。


「でもさ、菜月卒業する時にはまだ相手は中学三年生ってことだよね? お相手が高校卒業するまでってなったら……あと5年もある。その頃には菜月はもうお母さんの会社で働いてるんでしょ? できれば菜月が学生の内に会いたいよね」

「そうなんだけどねー、でも男子がそう言うなら仕方ないよ。私が心配してるのは高校の時まで不登校で、枠を一つも使わなかった場合」

「あー……そうだね」


 高校生の内に5人の婚約ないし妊娠が認められなかった場合は、政府の方から適当な人員が割り振られる。この適当、というのは政府にとっての適当であって、一般人から選ばれることがなく、政府関係者かまたはその子供ということになる。必然的に後ろ盾も政府になって、男の子は国の好きなように活動させられる。

 この仕組みは政府が男を独占している! とよくニュースでも問題になっているけど、男の人のデータベースは政府管理であることから、その実体はよくわかっていなかったりする。

 でもその仕組みをなんとなく理解している男の子は、高校生の内に5枠を埋めようと頑張る。まだ民間企業が後ろ盾にいた方が自由度は高いことは明らかだから。

 菜月の相手みたいにただただ女の子を怖がって時が過ぎてしまうと、高校卒業後はどうなってしまうかわからない。

 会社間の問題とはいえ、菜月は凄い良い女の子だから、一度会ってしまえば恐怖感もそんなにないと思うんだけど……と、そこまで考えて前々から頭の端にあった疑問も聞いてみる。


「……気になってたんだけど、菜月は男の子好きなんだよね?」

「えー、なにその今更な質問」


 菜月は私がいた前の世界とほとんど変わらない。こざっぱりした性格と、ストレートで友達思いな女の子。

 だけど菜月の話の中に男の子の話題が出てくることはそんなにない。よくエマからは幸太郎君の話を聞くけれど、それに食いつくとかもないし……そういえば男の子の写真集には食いついてたっけ。


「……まぁ男子は普通に好きだよ。あんまり男子の話をしないのは、もう相手がいるっていうのがやっぱり大きいかも。それに私こんな性格で、背も高いし男子受けしないじゃん? だからあんまりアピールしてもウザいかなって。幸太郎君にはエマがいるし」

「幸太郎君の枠まだ3つもあるんでしょ? エマと菜月が入ったって……」

「いや、なんでそこに奏がいないのよ……前から思ってたけど奏さー」


 あ、やばい。男の子に興味ないの気づかれた?


「やっぱ他に男いるでしょ!? 奏のスペックで男引っ掛けてないなんてありえないんだから! あっ! もしかしてあの皇族に紹介されたりした!?」

「うぇえ、透子ちゃんは関係ないけど! ゆ、揺らさないで、落ち着いて菜月!」


 がくがくと揺らされるまま、私の菜月は通学路を進む。こうやって二人でじっくり話すのは久しぶりで、なんだか楽しい通学になった。


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