第3話 手に入れた
僕は気づけば高校に進学した。進学校というには環境が悪く、Fランというには普通すぎる校風の高校だった。
中学生の頃に診断がくだった統合失調症は悪化も進行していなかったと思っている。同じ中学だった友達には恵まれず、この高校には僕1人でぼんやり過ごしていた。
気づけば教科がかなり細かく細分化され、意味がわからないことになった。
これまでの嫌な記憶もよく返ってくる。
さらに、追い打ちをかけるように先生の言う言葉もよくわからない。ギリギリわかるのは数学の乗除算だ。今は数学Aの時間で集合Aと集合Bには……という授業だ。
急に目の前が真っ暗だ。
——あぁ、なんて変なタイミングで僕は死ぬんだろう。
周りから誰かの荒い呼吸が聞こえる。
——仲間がいるのか。
『おーい、おーい、○○ー』
先生の声が聞こえる。意識が急にグォンと現実に戻ってきた。僕はここですよー。
手を振ったつもりだ。
何かバラエティ番組で芸人が大げさに驚く時の電流が流れている時のような感覚が1番近そうだ。
手が動かない。動かせない。まるで重りをつけているかのようだ。
気づけばチャイムがなって授業が終わった。せめて、終わりの挨拶だけでも立たなくてはいけない。
体が動かない。いや、誇張した。動かないより動きたくない、今、この無気力のままでいたい。
「少し話をしないか?」
保健室の先生が教室に来て僕を運んだ。
「なにがあった?」
「……わからないです」
保健室の先生は2人いる。普段は被ることなくどちらかの勤務との噂を聞いたことがある。今日は2人ともいる。
「えっと、君の入試の時学校からもらった内申書を見たんだけど、『統合失調症』を患ってるらしいね」
「……えぇ、まぁ。最近は症状は落ち着いてたんですけど」
「先生とは言っても私たちは医師じゃない。診察はできない」
「では、何か……?」
「勝手な憶測になるから、真に受けないでほしいんだけど……」
保健室の先生2人とも何か難しそうな、それを伝えていいのかどうかという雰囲気をしている。
「その……診断書次第では……」「いや、それこそ主治医次第……」
「次の診察、近いので診断書お願いしてみますね」
そのままその日は開放された。ただ、目の前が真っ暗な日は増えた。
次の診察の日が来た。
すべて話した。不安が多いことや目の前が真っ暗になること。それに過去が勝手に返ってくることなど。もちろん、学校の先生が診断書を勧めてきたことも。
「……ふむ、たぶん、学校が診断書勧めたのは手帳の取得をうながしたかったんでしょう」
「手帳……? それならどこでも売ってますよ」
「あぁ、失礼、精神保健福祉手帳、いわゆる障害者手帳です」
「……その……僕に障害があるということですか?」
「それを明確にするためにそういう制度があるんです」
「……それはどういったものですかね?」
先生は『ケースワーカーに聞いてくれ』と今日の診察は終わった。ケースワーカーから障害者手帳のことを聞いた。
名前を聞いた時はてっきり『あなたは障害がある』ということだけでそれによる何も割引や福祉制度がないと思っていた。
実際は娯楽を始めとした様々な割引があることがわかった。メリットはある。ただ、デメリットをケースワーカーが話さなかったことが怖い。
買い替えたばかりの携帯電話で調べよう。どのサイトを見てもデメリットらしいデメリットは書いていない。強いてデメリットと言えるのは『更新が2年に1度ある』とはどこのサイトにも書いている。
……診断書はお金もかかるし母さんに相談するか。
母さんは次の診察についていき、母さんも話を聞いて判断するということだった。
母さんは納得して申請手続きを進めた。2ヶ月くらいして僕は精神保健福祉手帳2級を取得した。そのとき一緒に自立支援医療制度も申請していたが、それも認められたらしい。
第4話 探す




