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第4話『裏社会最強のおっさん魔術師は、全てを失う』

 魔術式大量破壊兵器を所持しているギルド炎帝の拠点制圧。


 成功すればカズイチの輝かしい経歴となっただろうが、現実は違った。


「本審査会は、全会一致でサエヤマ・カズイチの魔術師資格はく奪並びにギルド・リュウゼツ解散を命ずる」


 マホガニーの長机に付いた三人の審査官による無慈悲な宣告が大理石で造られた部屋に反響する。


 部屋の中央に置かれた椅子に座るカズイチの動揺を尻目に、審査官たちは長机の上に広げた自分の資料を手早くまとめた。


「それでは、みなさんお疲れ様でした」


 審査官たちがまとめた資料を手にして続々と席を立ち、部屋を去ろうとした。


 冗談ではない。これで終わりになんかさせない。このまま行かせてなるものか。


 カズイチは必死の形相で扉の前に立ちふさがって審査官たちの足を止めた。


「ちょ、ちょっと待ってくれ! 納得いくわけねぇだろうがァ!!」


 カズイチが声を荒らげると、三人の審査官の男たちは侮蔑の眼差しを返してきた。


「君の独断の結果、大量破壊兵器を所持するギルド炎帝の構成員全員を取り逃がし、軍の人員に甚大な被害を与えた。当然の結果では?」

「だからよぉ! 潜伏場所のビルには罠が仕掛けられてたんだって! 突っ込んだからやられるから待つように俺が言ってもウィル小隊長が突入を強行させたんだ!!」

「そう主張するのは君だけだ。君が独断で突撃。君を助けるため多くの人員が負傷。さらに大量破壊兵器とギルド炎帝を取り逃がした。君以外の全員の証言が一致している」


 違う。軍の人員が負傷したのは、ウィルの無茶な突入指示によるものだ。


 カズイチは、小隊を守るために力を尽くした。全員軽傷で済んだのは、そのおかげだ。


 それなのに小隊はカズイチに全ての責任を押し付けた。こんなことを受け入れられるはずない。


「軍が俺をはめてるんだって! 俺に責任おっかぶせて尻尾切りしてんだよ!!」

「まだそんなことを言うのか! いい加減にしたまえ!」

「あなたとギルドは、これまでも度々法律に反する行為をしてきていますね。今回の処置はそうした過去の事案も考慮してのことです」

「そもそもギルド炎帝の構成員を逃がしたのも君ではないのかね。金を積まれてとか」

「とにかく決定は決定だ。受け入れたまえ」


 三人の審査官は、カズイチの話に耳を貸そうともしない。


 でもゴウから受け継いだものを失うわけにはいかない。


 カズイチは、審査委員の一人の両肩に手を置いて訴えかける。


「頼むよっ。俺の魔術師資格はどうでもいい。ギルドは……ギルドの解散だけは考え直してくれねぇか!? ギルド解散されたら仲間が路頭に迷っちまう……ギルド・リュウゼツはよ、俺の師匠が作ったギルドなんだっ! 俺の一番大事なもんなんだよッ!!」

「くどい! もう決定は下されて覆ることはない!! 竜王とまで呼ばれた男が情けない」

「所詮裏社会の人間ということ。こんな者を信用した点では、軍にも問題はありますな」

「女王陛下は公務で役に立たず、受け入れた孤児の教育も行き届いていない。まったく」


 アルティシア女王への罵倒を聞いた途端、カズイチを律していたものが音を立てて切れた。


 自分を悪く言われるのは、構わない。いくら蔑まれてもいい。


 だけど母のように慕っている人への侮辱は許さないし、許せない。罵倒を放った審査官の襟首をカズイチが掴んだ。


「てめぇ! 陛下まで悪く言うんじゃねぇ!!」


 先程までの偉そうな態度から一転、審査官は、親に叱られた幼子のように取り乱した。


「ひぃぃ! やめないか!! 暴行罪で刑務所に入るつもりか!?」

「警備員! こいつをどうにかしろ!!」


 他の審査官の呼びかけで警備員が十数名飛び込んで、カズイチに掴みかかってくる。


 相応の手練れがこの数、さすがに劣勢となり、カズイチは審査官の襟首を離した。


 悲鳴を上げながら審査官が退出すると、カズイチは警備員に解放される。


 身体に力が入らず、支えを失ったカズイチはその場に両膝を付いた。


「師匠……すんません……俺は……」


 大切なものを全て失った。何一つ守れなかった。なんて不甲斐ない男なのだろう。


 自嘲を浮かべていたカズイチは、やがて込み上げる涙を堪えきれず赤子のように嗚咽した。

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