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幕間『裏切り』

 エリックは、カズイチと同じ孤児院で育った。


 性格は違ったけど、不思議と気が合って親友になった。


 子供の頃、魔術師の才能を持ちながらもエリックは臆病な性格で、魔術師の才能がないカズイチに守ってもらってばかりであった。


 カズイチがリュウゼツ・ゴウに引き取られて孤児院を去った時、エリックはカズイチに対して強い怒りを抱いた。ずっと一緒に居てくれると思っていたのに裏切られたのだと。


 居なくなってしまったカズイチを思いながら「裏切り者!」と罵り、泣きわめくエリックをアルティシア女王は優しく抱きしめてくれた。


「友を裏切るのは、世界で一番恥ずべき行為です。でもカズイチの行為は、裏切りではありません。きっと彼は、あなたを迎えに来ます。その時まで待っていてあげてください」


 それから十年以上経った頃、エリックは無名の魔術学校を出て魔術師の資格を得る。


 けれど、第一志望の近衛隊はおろか、どの職場もエリックを相手にしてくれず、就職先が見つからなかった。


 途方に暮れるエリックの元を突然カズイチが尋ねてきた。


「俺ギルドマスターやってんだ。でも人手が足りなくてよ。手を貸してくれよ、親友」


 カズイチが差し伸べた手をエリックは取った。


 彼との仕事の日々で足を引っ張ったことは一度や二度ではない。


 それでもカズイチは、嫌な顔一つせずに助けてくれる。


 だれど今のカズイチは、魔術師の資格とギルドを失ってしまった。


 対照的にエリックは、近衛隊に入る夢を叶えることとなる。


 カズイチが炎帝を討伐した日の夜エリックは、アルティシア女王の私室に呼び出された。


 豪奢な調度品で彩られた部屋の中でも、もっとも美しく輝くアルティシア女王は、エリックの頬を両手で包んだ。何故呼び出された。何故触れてくださる。


 理解が及ばないエリックを、アルティシア女王の瞳が見つめてくる。


「あなたに昔教えたわよね。この世でもっとも唾棄すべきものは何か……覚えている?」


 氷のように冷たい声が心を突き刺してくる。言葉が出てこない。声が絞り出せない。


「私は、友を裏切ってはならないと教えた。裏切りはこの世で一番唾棄すべき行為よ」


 アルティシア女王は、怒りを抱いている。途轍もない怒りだ。怖い。敬愛するお方の顔を直視出来ない。もしも視線を合わせたら――。


「ぼ、僕は、あなたに忠誠を」


 目を逸らそうとすると、アルティシア女王は両手の爪をエリックの頬に突き立てた。


「裏切りは、絶対に許さない。私は、決して許さない」


 だめだ。この人は、全て見抜いている。逃れられないことを悟ったエリックは――。


「僕は……」


 全ての罪を告白することにした。

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