第四話…… 『宮廷魔術師の後始末(おしごと) その4』
ああああああああああっ!!!!
あああああっ!!!
あああっ………
……………
《セイル森林地帯、 南側浅部》
突き刺さる様な無数の視線が、 ただ一人、 地面にゴシックなドレスを汚し蹲る少女を睨み見る、 うずうずと影が揺れるが、 その視線の中、 喉が破裂するのでは無いかと思わせる程に叫ぶ男が一人……
っ
「立てぇっ!! 『魔王』の生まれ変わりならば、 立って見せろっ! 天才なのだろっ! 最強なのだろっ! 立てよっ! リザァっ!!」
『魔王軍』、 『魔王』の配下として人間の殺戮を繰り返した者たち、 しかし、 等の『魔王』は死んだ、 もうこの世に、 混沌を産む者は居ない……
ただ、 人間への殺意を残された燻りの消炭、 小さく煙が立つそれが彼ら、 『魔王軍』の残党…… 衝動が焦がす、 衝動だけがここに在る理由……
………
「………その力はお前に不要だろう、 不憫な子供め、 それを寄越せ、 その為に俺達は、 地を舐める様な気分で憎い奴らの作戦に乗ったのだっ!」
奴ら……
人間の宮廷魔術師、 醜い人間だ、 仲間内すら争う、 騙し合う、 奪い合う、 醜い、 人間……
……直ぐに騙す、 直ぐに奪う、 直ぐに裏切る、 直ぐに疑う、 直ぐに…………
………ザッ! ………
「……そう、 奴らって言うのは、 うちのクズ共、 宮廷魔術師の腐った奴の事かしら? ……ジョシア・シーブ…… 学長は…… スパイだったわね」
………
「……リザ、 分かって居たような言い方だな?」
「ええ、 でもそっちは他の仲間に任せてあるから、 私はこっちを任されてるの………」
魔王軍残党、 ゼンはこの状況下でのリザの発言に眉を顰める……
スッ………
「おいイブリン、 何時までもリザの血なんぞを啜って居ないでさっさと首を跳ねろ、 それとも俺が頚椎を落とすか………」
リザの傍、 魔王軍残党のイブレイはゼンの能力により抉れた手首からリザの血を啜って居たが…… 妙だ、 ゼンの言葉に、 しかしイブレイは何も反応を示さない……
………奇妙な感覚だ ……
ゼン達の目的はリザの抹殺による『魔王』の解放 …… まあ、 それが出来た所でその後どうなるかは考えて居なかったのだが、 何にせよ、 リザを殺す為に人間の魔術師共と手を組み、 先んじて展開した魔力磁場の乱れにより描いた陣にて、 その地脈上のこの森に結界を展開した
人間は魔法を扱う際魔力を体内へと流している訳ではない、 杖と言う法器を媒介とする事によって著しく魔力の取り込みを限定し触れない様、 取り込まない様に操作している、 だからこそ人間の魔法は高い操作性が求められる癖に、 『魔王』と比べてもワンテンポ遅い
『魔王』ないし、 『魔王軍』の魔力に対する対応はモンスターのそれと同じ、 『魔王』は力その物が肉体をコントロールしているし、 『魔王軍』はそもそも『魔王』の死者蘇生の力によって蘇らされ服従を誓わせられる者たち、 死者の肉体には魔力の影響も何も無いのだ
その点で、 どれだけリザが魔力に適応し、 高い魔力理解を持っているとしても人間の魔法を使う内はプロセスは同じ、 それこそ『魔王』の扱う固有魔法、 『魔国式結界』を多様するなら話は別だが……
(……リザは『魔国式結界』を扱える、 ただそれが何か分かっていないのは先程の反応を見ても明らかだ、 リザは自分の前世、 『魔王』として君臨していた穢れた魂の事を知らない、 無意識の使用だ)
となれば、 やはりこの森では効いている、 かの陣はこの森に対する、 人間の魔法、 複雑過ぎる構築を破壊する細工を仕掛けている、 リザがどれだけ天才でどれだけ最適化しようと、 扱うのが人間の魔法、 そのプロセスである以上彼女に魔法は扱えない……
だが………
嫌な予感がする………
もういい……
「リザ、 今からお前の全身の骨を一本残らず舐り取る、 残った貴様の髪と皮を縫い繋げて、 そうだなドレスを作ろう……」
……今度こそ ………………
……………?
……………………………
ドザッ……
「………あっそう、 だいたい分かったわ、 この森には結界が貼られてるのね? あ~ 人間の魔法を、 なるほどね、 そりゃ魔法が組み立てられない訳ね」
………何だ?
リザが何か言い出した、 いや、 リザの腕に口を付けていたイブリンが急に倒れた、 彼女の大きくサイズの合わないドレスが地面に吸い込まれ汚れる……
キラッ!
光が反射し、 よく見れば、 リザが蹲り丸くなっていた地面には、 隠される様に何やら細く…… 杭が地面に打ち込まれて居る、 光を返したのはそれだ
あれは………
「逸物級魔道具・ケイラノキダシ」
魔道具、 いつの間に……
「アンタがベラベラ言ってる内に、 この子の影に刺したのよ、 まあケイラノキダシはただの魔力調査の測定器だけど、 逸物級であるからには、 それなりの…… 例えば、 魔力の流れや色の判別、 または魔力体、 精霊体との信号」
つまり……
「私は今、 この森と話をしていた、 知ってる? この森にどれだけの精霊体が居たのか? ……貴方達、 随分ここで暴れて千体以上殺してるわよね?」
でもね……
「例えば、 木や草花、 例えば動物、 例えば虫や微生物、 例えば岩や石、 土、 または、 この森に吹く風にすら、 精霊は宿っているのよ?」
『魔王軍残党』、 ゼンと、 イブレイを含めて『業魔刑』の能力者が九人、 その部下が凡そこの場に六百人、 それがリザを睨み見ている……
だが、 そんな事が馬鹿に感じる程……
「この森の在り方は、 私が少し前まで居た、 私がまだ『魔王』と呼ばれてた頃に、 最後に戦った、 こことは異なる世界、 異世界の国の古い信仰体系に似ている、 そこでは神様の事をこう言うの……」
八百万の神……
ギラッ!!
っ……
「ふふっ、 感じた? 早速数える事すら敵わない、 途方もない程の数の精霊体が貴方達を睨み見て居るのっ、 分かる? 貴方たちはただ荒らして喧嘩を吹っ掛けただけっ」
っ!
「リザァッ! 詭弁に語るなっ! 状況は変わらないっ!」
「あははっ! 変わったって言ってんのよ分からない? ほら、 見てみなさいよ」
?
リザの手首、 リザが自分の手首に触れる、 その手首は親指側の骨が抜け落ち血を吹き出す……
おや?
「治った、 大袈裟に言う事じゃ無いけど、 貴方達のプランにこれは無かったでしょう? だって貴方達はこの森の魔力の流れを掌握する為に、 その主導権を持った精霊体を殺して取り込み続けたのだから」
でも残念……
「中途半端に怒らせて、 喧嘩を売ったから、 確実にあんたらに報復を果たす為に、 この森の精霊長、 大精霊ニコラが、私にその主導権を一時的に寄越してくれた」
ザッ…… パッパッ
リザがドレスの土を払って立ち上がると、 奇妙に、 傍にて倒れるイブレイも同時に地面から立ち上がった……
グジュッ グジュジュッ!
肉が疼いて居る、 イブレイだ、 リザの手首がそうなった様に、 瞳から零れ落ちていた眼球が吸い込まれるように治り、 固まったシミの様な血が時を巻き戻す様に、 在るべき場所、 傷口へと戻って行く、 ご丁寧に古傷や薄汚れた体まで綺麗に、 繕う様に……
きっと人間の頃、 最も綺麗な頃のイブレイが姿を見表す…… ゼンは、 素の姿に何処か見覚えを感じた……
………
「イブレイ、 こっちを向きなさい」
リザが、 イブレイへ指図…… いや命令する、 イブレイはまるで当然の様にリザへと振り返る、 隷属、 その様が、 妙に癪に感じる
スッ……
「あら、 イブレイ、 よく見せて? ふふっ、 貴方、 美しい翡翠色の瞳をしていたのね、 本物の宝石の様………」
ッ
ジジッ!
『……おお村娘、 良く見れば貴様なんという美しい瞳だ、 まるで本物の宝石にも見劣りしない程の輝き、 欲しいっ』
……………
っ!
「やめろぉっ!!」
イブレイの顔の輪郭を撫でようと手を伸ばすリザに、 ゼンは無意識的に叫んで居た、 不思議だ、 さっきまでの憤りや、 『魔王軍』としての衝動が、 まるで薄っぺらに感じる酷の感情が沸いた……
「っ、 リザっ! その子に、 イブレイに何をしたっ!?」
それを叫ばせるのは、 まさか、 消炭の衝動では無いなら、 消炭にそれでも残った、 人間の頃の温もり……
ふっ
「別に? 何もしてないわよ、 でも特別に何かをする必要は無い…… 分かってんでしょ? アンタもさっき言ったじゃない、 私の中の、 混沌色の魂…… アンタの勘違い、 私はそれを何より、 誰よりも知っているの、 ちゃんと覚えてるわ、 私は、 例え転生しようと『魔王』よ、 変わらない」
リザは理解している、 自分は『魔王』の魂の生まれ変わり、 そこにある力が今もまだリザを助けるのなら、 同時にその力で過去に殺した命も、 犯した罪も、 その全ての責任を背負う覚悟をリザは人知れず固めている………
もう絶対に、 この苦しみから逃げようとはしない、 だからこそ、 今度は『魔王』、 この力を支配や殺戮では無く、 この力が今も自分を助けると言うのなら、 この力は、 あの人が、 私にそうしてくれた様に、 誰かの助けに少しでもなれたのなら……
何にだってなれた、 でもだから、 リザは『宮廷魔術師』を選んだ、 この仕事は、 魔法と言う可能性を大きく前へ進歩させ、 人の、 世界の未来を豊かにするために有るのだから
だから、 その為に、 遺恨も因縁も、 全部背負う、 全ての責任を取る、 ここで、 この残された消炭達をすべて片付ける、 『魔王』としてのケジメを付け、 これからは、 『魔法使い』として……
これは、 その為の戦い…………
ふふっ
……おや? 不思議だ、 今自分は存外に楽しんでいるのかもしれない、 口角が上がった……
(……私って、 こんなに楽しんだ事あったっけ?)
戦いを、 あの人に影響されたかな……
……なら、 笑えっ
ふふっ、 あははっ
「あははははっ! あのねぇっ、 どんな物語でも、 どんな世界でも共通の事が有るのよっ! それはっ! 血は、 上位者が下の者に与える盃、 儀式なのよっ! さっきまでこの子は私の血を飲んでたわよね?」
リザの血には、 『魔王』の魔力が混じっている、 これはゼン達が仕掛けた対人間の魔法に対する対策にはまるきり含まれて無い法則で、 ゼン達自身抜けていた認識だった
イブレイは、 リザの血を取り込み、 今一度、 自身との力関係を理解し、 当然の様に、 当たり前の様に、 彼女に支配される事を許容した
……まあ、 彼女を美しい生前の姿に戻してあげたのは、 これはリザのせめてもの彼女に対する御恩である、 それを受け、 イブレイは奉公する……
ジャァンッ!
イブレイが土埃を落としながら、 その細い腕で剣を垂直に構える、 前衛と後衛、 リザはその後ろで空に指で陣を描く………
ヒリつく空気、 それに触発される様に、 元来の性質が戦闘と殺戮を求め震え上がる様に、 燻りがそれでも残した熱に着火物が注がれた様にっ
最高潮に高まった緊張が、 この場に居る総勢六百を超える残党の将軍の立ち位置として立つゼンの一挙に血走った目を向ける……
そうして遂に、 ゼンは口火を切るっ……
っ
ドンッ!!
空気が揺れる、 魔力の流れ、 ざわめく森、 爪が、 牙が、 獲物を認識すると同時に、 震え上がる全身のヒリヒリと焦がす確かな熱量を感じた時、 今か今かと膨れた物が爆発するっ!
ッ!
「っ、 全員っ! イブレイ諸共リザを血祭りに上げろぉっ!!!!」
………………
ッジジジジッ!!!!
ビッ!
「っ、 業魔刑っ! 帯断妖技っ!!!」
ギギギッ!
ギヂッ! バギャアアンッ!!
ャアアッ!!
……!
開幕、 ゼンの業魔刑、 帯断妖技は対象から全身の骨を舐り抉り取る能力、 骨が抉り飛ぶと同時に痛みと出血が伴い肉体が果てしない痛みに悲鳴をあげる、 しかしこの能力は命を奪えない、 その果てに、 悲鳴を上げ続けるだけの肉皮に変わり果てる
肉体の一部を狙うのはゼンにとって寧ろ緻密で手間、 初めから全身を狙うのなら、 瞬く間に全ての骨を抉り抜き取る事が可能
そしてそれは、 真っ先にリザの前に立ったイブレイへと直撃するっ!
ビギッ!
ッ!
バジャジャアアアンッ!!!
ビジャアアアッ!!
「ぎゃああああああっ!!!?」
っ!!!?
悲鳴、 一瞬でイブレイは、 だった物へ、 全ての骨がやたらめったら吹き飛んで、 分解される、 決着は速い……
ふふっ
「ちょっと、 勝手にくたばらないでよ? 時間を稼ぎなさいイブレイ」
にっ
ッ
バジャアアンッ!!
音、 抜け落ちた骨はまだ一部宙を舞ってる最中、 内側から押し出す様に、 まるで永久歯が歯茎を割いて飛び出す様に……
っ!?
「っ! 骨の再生っ! 速すぎっ……」
ブワッ!
その時、 ゼンは見た、 それは初めてだった、 イブレイの剣が、 ブレる、 いや、 形が崩れ、 キラキラと砂粒のように大きく風に混じる、 流れる
これは……
「業魔刑・麗転誅伐っ!」
グッ!
イブレイが大振りで強く踏み込む………
「死んで」
ッ
ブッ! …………
ンッ!
ビジャアアアアアンッ!!!
っ
「うあああああっ!!?」
グルン……
砂粒となった刀身は伸び、 しかし術がその斬撃を補完する、 ゼンの腕が舞う………
ビッ!
「消し飛べイブレイっ! 業魔刑・轟喝是仁っ!」
ダンッ!
大男、 業魔刑の使い手、 ゲンドン、 ゲンドンの扱う業魔刑・轟喝是仁は特定の魔力周波を収束させる、 特に、 低周波の魔力は鋭さを持つ高周波魔力と違い遅く重く、 そして何より高密度に圧縮させる事によって、 擬似的な臨界破裂を起こすっ!
ボォゴォッ!!!
ッ
ジッ! ……ボッ!
ガァッ!
ッ
ボガァアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!
ドォオオオンッ!!
………
その地点で………
フワッ……
キラキラ………………
ッ
ビジャァンッ!!
………
っ
「………イブレイ、 貴様っ、 自分の体も砂状に……」
ドザンッ……
……
ゲンドンが倒れる、 首筋には深い刃の跡、 一見イブレイはその姿を消したかのように思ったが、 大きく膨れ上がった土煙の中でキラキラと光る……
剣だけにとどまらない、 自身の肉体への砂状化への適応、 フワリフワリと舞いこの時物理ダメージをほぼ無効化する、 そしてこの状態の真価……
ダッ!
「殺せぇっ!!」
「イブレイっ! リザを殺せっ!!」
「人間共を殺せっ!!」
魔王軍残党、 複数人の特攻、 リザ達に迫るそれは……
キラキラッ……
ギッ!
「殺せっ…… うっ!?」
ビジャアアアッ!! ………ゴンッ……
……首が、 一人の首が飛ぶ、 その切断面、 まるで内側から……
「なっ、 何がっ…… うぎゃっ!?」
「えっ!? いっ、 痛っ!?」
「ぐっ、 ごげっ!? すなっ………」
ビジャッ! ビャンッ! ビジッ!!
ッ、 ゴトッ! ………
っ!
これは………
「砂だっ! っ、 砂を吸うなっ!」
キラキラキラキラ……
ッ
「えっ、 うっ、 砂が勝手に口からっ、 うっ、 ギャッ!?」
ビジャンッ!! ……ゴロンッ……
ブワワッ!
砂、 イブレイの能力、 麗転誅伐は刃を砂状にする能力だが、 それは解釈により獲物を変える、 肉体を能力下に起き砂状別変える時、 舞う砂には、 刃の情報が定義される……
つまり……
全身刃、 イブレイという一人の少女の質量分の砂粒全てが鉄剣であり、 一定量呼吸などで取り込む事で、 肉体の内側から切断っ……
チッ!
ッ、 ベンッ!!
「あああっ、 調子に乗るなっ! 業魔刑・星嵐膿偽っ! 魔力磁場を引っ掻き回してやるっ!!」
ビビャビャビャッ!!
ジャジジャッ!
業魔刑の使い手、 ジン、 業魔刑・星嵐膿偽は魔力を自身の能力が定義する星流儀に示す流星の輪転を擬似再現し、 指定範囲内に魔力で固めた惑星を複数展開させ流転させる、 この時再現した銀河の中で最も強い魔力惑星を強制的に重力点とする
この重力点には、 その周囲の全ての魔力が一時的に吸い寄せられる、 それは、 例え発動中の業魔刑も同様
ッ、 バァアアンッ!!
ジュゥゥンッ!!
キキッ!
擬似星流儀が展開され、 高い魔力星が重力点となり銀河が流転する時、 周囲を漂う砂粒も同時に、 そして簡単にワンポイントへと吸い寄せられた……
っ
「今だっ! 叩き込めっ!!」
バッ!
「業魔刑………」
ッ
「「「「「「業魔刑っ!!!」」」」」
ゼンが残った片腕を向ける時、 他五人の業魔刑の使い手も同時に自身の能力をそのワンポイントへと向ける………
抑圧した緊張の糸がちぎれ飛ぶように、 限界まで高まった六つの力が全てその一点、 イブレイを確実に消す為に放たれ…………
…………
タンッ! ………
「……もういいわ、 時間稼ぎありがとう」
準備が終わった……
…………
ボッ!
っ…………………
息を飲んだ、 この場にいる『魔王軍残党』は背筋が凍る様な気配を感じた、 忘れていた訳ではない、 だがやはりイブレイは確かにその時間を稼いだ
膨大な魔力の使用による、 固有結界の構築、 『魔王』と言う存在の絶対性の誇示……
グググッ!
リザが立てた人差し指で虚空を叩く、 すると、 彼女の描いた奇跡を追う様に、 空気に焼き付く様に文字が円を描く……
魔法陣………
「魔晶印形成………」
ッ、グッ!
「魔国式結界・閉透唱掾鬼っ!!」
ググッ、 バギッ! グジャアンッ!!
…………
角が、 角がリザの頭を割って空に向かって生える、 目は真っ赤に、 深い血の様に染まり、 その中で陣がチラチラと光って見えた、 その悪魔の様な様こそ正に………
彼女が認めた、 認めた故に手放す事はしなかった力………
っ
「魔王顕現っ!!」
バァンッ!!
ビビンッ!!
ジッ!
汗が吹き出しては張り付く、 重圧が、 その存在を認める様に、 空気が恐怖に震え上がり押し付けられる……
今にも能力の発動を行う者たちが完全に動きを止めた………
その動きをただ、 目で追う事しか出来なかった………
リザの扱う魔国式結界は、 『魔王』の固有魔法、 その中でも魔国式結界・閉透唱掾鬼は一時的な全ステータスの超上プラス、 他の者が再現出来ない程の魔力の大量使用により強化された完全体が、 だからこそ更なる神業を構築する……
結界に法則と事象を与える、 正に世界の構築、 それが………
領域術……
「魔国浮顕」
…………………………
ボォンッ!
ボォンッ!
ボォンッ!
………………………
ボォンッ!
っ!
……?
ゼンが、 いやこの場の者が全員、 奇妙な浮遊感と共に気が付けば瞑って居た目を開けたそこは………
…………っ!?
紫色の空に浮かぶ、 血色の月が巨大な目玉でギョロリと覗く、 土ばかりのこの大地、 さっきまでの森の景色とは全く違う、 視界には最も巨大に、 赤い月明かりに照らされた、 巨大な魔王城と、 その天上にて浮遊する『魔王』、 リザの姿が見えた……
その存在の、 心を写すとも言う領域術、 セイル森林地帯の精霊から、 この森の魔力の操作権限を一時的に引き継いだリザが力任せに展開したコレは、 ある種の、 奇妙な感動を彼等に抱かせた……
………
ぁぁ…………
ようやくお戻りになられたのですね………
「魔王、 様………」
ふふっ……
「待たせたわねアンタたち………」
魔王は、 優しく等無い、 ただ絶対的であれば良い、 そんな姿を信仰する魔王軍の者達にとって、 彼女の言葉は正に安らぎを覚える程の非道……
これが……
スッ…………………
『魔王』としての………………
「……最後の命令」
………
「全員死になさい」
ッ!
…………………
……リザの指先から、 放たれた魔力弾、 領域と言うこの空間内で、 たった一発のそれは、 しかし、 全ての者にとっての自分を殺す一発と定義される、 その為、 一発で充分、 一発の魔力弾が、 六百数の彼等の心臓へと、 満遍なく……
爆裂したっ!
ドッ!
ッ
ガァッ!
ガァッ!
ァッ! ……………
ッ
ボガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!
ボォオオオンッ!!!
………………
ぁぁ、 ただ只管に白い、 眩しい程のスクリーンに、 走馬灯の様な人生の軌跡が、 周り、 走る………




