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火刑台の薬剤師〜いや、それ呪いじゃなくて病気です〜  作者: 大棗ナツメ
第2章

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11 死の舞踏5

 遥香は、自室の灯りの下で、ガラス瓶に入った丸薬をじっと見つめていた。


 指先で瓶を傾けると、ころり、と中で小さく音を立てる。


(分からない)

 女たちを踊らせた仕組みは解けた。

 だが――目的は何なのか。


(ただの騒ぎじゃない)

 考え込んでいると、階下がざわついた。 

 エルダの声に混じって、慌ただしい足音がする。


「遥香」

 そこにいたのは、騎士のギルバートだった。

「え、ギルバートさん?」

「副団長がお呼びだ。急げ!」

 その顔にはいつもの快活な笑顔はなく、険しい表情をしていた。

「何か、ありましたか?」

「詳しくは、後で」

(薬のこと、かな)

 遥香は一度部屋へ戻り、ガラス瓶を手に取った。


 遥香はすぐに二階へ戻り、瓶を手に取ってからギルバートのもとへ戻った。


「夜も遅いから、気をつけなよ」

 エルダはそう言うと、外套を掛けてくれた。

「ちょっと、行ってきます」

 そう言って、遥香はギルバートの馬に乗った。


 夜の街を、風を切って駆け抜ける。


 遥香を見送ったエルダは、小屋に戻り、暖炉の前の椅子に腰を下ろす。

 消えかけた火に薪をくべた、そのとき。


 ――コン、コン。

 戸を叩く音がした。


「何か、忘れ物かねぇ」

 そう呟きながら扉を開けた瞬間、エルダの表情が硬くなった。


 黒い服に、白いマント。

 異端審問官が二人、立っていた。


「ここに“遥香”という薬師はいるか」

 有無を言わせぬ声だった。

「いないよ」

 エルダは一歩も退かず、きっぱりと言い返した。



 *******


 地下の取調室。

 重たい扉の向こうで、遥香はギルバートに促され、中へ入った。


「お待たせしました」

 遥香はそう声を掛け、中に足を進める。

「間に合ったか」

 椅子から立ち上がったレオニスが、安堵したように遥香を見る。

「え?」

 状況が飲み込めず、声が漏れた。


「これは、お前を陥れるために仕組まれた事件だ」

 レオニスはそう言い、向かいに座る女を指した。

「この者に、見覚えはあるか?」

「えっと、今日旧劇場跡で……」

 そこまで言った瞬間。

「しらばっくれるな!!」

 アンの怒声が響いた。


「あんただ! あんたが、その薬を渡したせいで、私達は……っ!」

 アンは机の上の丸薬を睨みつけ、真っ赤な顔で叫ぶ。

「え? くすり……?」

 遥香は理解が追いつかず、眉をひそめる。


「この者は、お前からこの薬を受け取ったと言っている」

 レオニスの声はどこまでも冷静だった。

「ええっ! そんな、私そんなことしてません!!」

 遥香が必死に否定すると、レオニスは小さく頷いた。

「……なっ!!」

 アンは息を呑んだ。


「やはり、仕掛けて来たな」

 レオニスが目を細めた、そのとき。

「副団長!」

 騎士が一人駆け込んできた。

「異端審問官が、"遥香"を引き渡せと……!」

「来たか」

 低い声で呟き、レオニスは扉を睨む。


 ――ガン、ガン、ガン。

 扉が乱暴に叩かれた。


「騎士団副団長殿はいるか」

 扉越しでも分かる、圧倒的な威圧感。

 ゆっくり扉が開かれる。


「これはこれは、副団長殿。事件を引き起こした"遥香"という薬師を引き渡していただきたい」

 異端審問官の男は、不気味な笑みを浮かべて言った。


 その笑みと冷たい視線に、遥香の逃げ場はなかった。


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