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【書籍化決定】ねえ親友。今日もキス、しよっか?  作者: ゆめいげつ
最終章 俺たちは幸せなキスをする

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第323話 『あの膨らみは、何だ……!?』

「ようこそ長谷川! この扉の先が俺の部屋だ!!」

「お、おぉ! 何か急にテンション高いな、赤堀!?」

「は、長谷川に貰ったプレゼントのおかげかな! ありがとう!!」

「おぉ! そんなに喜んでくれるか!!」


 部屋の前で馬鹿みたいに騒ぐ、と言うか俺から騒ぎ出した。

 何故ならこの部屋の中に、早霧とゆずるが隠れているからである。

 言わばこれはアピール。

 これから中に入るぞと言う、部屋の中にいる二人への警告だった。


「あ、あぁ! じゃあ入るぞ長谷川!」

「おうとも! 何だかんだで赤堀の家は初めてだからワクワクしてるぞ!!」

「そ、そうか! まあ普通だが、これが俺の……部屋だー!!」


 過剰すぎる演技にも乗っかってくれる長谷川のポテンシャルが凄い。

 くどいぐらいに声を張り上げた後、俺は大げさにドアノブをガチャリと捻り、ゆっくりと扉を開けていった。


「…………よし」


 そんな俺達を迎えたのは早霧とゆずるではなく、冷房の風だった。

 涼しい空気が肌に触れ、緊張の熱が冷めていく。


 どうやら二人とも上手く隠れられたみたいだった。


「あ、赤堀……!」

「な、何だっ!?」


 そんな俺の背後から、長谷川が声を上げる。

 マズい、バレたか!?

 そうだ長谷川はとんでもない大男だった。

 その背丈の高さから、俺には見えない何かが――。


「お前の部屋……可愛らしいな!!」

「……えっ?」

「だってすごい動物のぬいぐるみがあるぞ!!」

「あ、あぁ……」


 ――俺にも、見えているものだった。

 それは部屋のあちらこちらに配置された、動物のぬいぐるみ達である。

 灰色オオカミのレンジや丸もこ羊のサギリ、その他にも大勢のぬいぐるみが早霧の家から俺の家に浸食という名のお引越しをしていた。

 もう俺にとっては日常の一部に溶けこんでいたいたそれも長谷川からしたらとても珍しくテンションが上がるらしい。


 何はともあれ、早霧たちが見つからなくて良かった。


「それは早霧が連れてきたぬいぐるみ達だよ。日に日に増えていってる」

「なるほど! 八雲ちゃんの趣味か! ハッ!? 俺もゆずるちゃんの好きな物を俺の部屋に置けばいつでもゆずるちゃんを感じられるんじゃないか!?」

「そ、そう……だな……」


 頼む、黙ってくれ……!

 多分確実に間違いなく、この部屋にゆずるがいるんだぞ長谷川……!

 そうやって恥ずかしい事をサラっと言うと、後で、いや今現在進行形でゆずるがどこかで悶えている気がしてならない。


「ところで赤堀!」

「……ん?」


 そんなハイテンションまっしぐらな長谷川がまた話しかけて来る。

 ひょっとしてずっとこの調子なのかと俺は溜息を吐いて。


「あの膨らみは、何だ……!?」

「んんっ!?」


 一気に、背筋が凍りついた。

 長谷川が指差したのは部屋の角、水色の掛け布団が敷かれた、俺のベッドである。


 ――その掛け布団が、膨らんでいた。

 こんもりと。

 何て言うか、その、人が一人ぐらい丸まってるぐらいのサイズで。

 まるで、いやさっき見たなこれ……。

 拗ねて甘えた早霧が、丸まっていた時そのままのサイズだ……。


「い、いや長谷川……あ、あれは、そのだな……!」

「いや、いい! 全部分かってるぞ、赤堀!!」

「なっ!?」


 何とか弁明しようとするが、長谷川はそれを手で制した。

 全部、分かってる……!?

 まさか、あの純粋向くな長谷川が、この状況を!?


 マズいマズいマズいマズいマズい!

 それじゃあなし崩し的に全部バレて――。


「急に押しかけてすまなかったな! 赤堀も男だ! 人には見られたくない物の一つや二つあるだろう!!」

「……え?」

「大丈夫だ! 見なかった事にする! 突然押し掛けたのは俺だからな! 隠す暇も無かったんだろう! 分かる、俺にだってあるからな! だから、俺は何も見ていないぞ!!」

「……あ、ありがとう」


 ――バレて、無かった。

 誤解だが、ありがたい誤解をしてくれた長谷川がベッドから視線を外し、床に腰かける。

 確かに隠す暇はなかったし、今この場では見られたくない物って言うか者だけど、とにかくここは漢気ある長谷川に感謝だ。


「あ、すまん! 赤堀の部屋なのに、俺が先に座ってしまったな!?」

「いや、良いよ別に……。俺も座るし」

「すまんな!」


 何か変な所で律儀だ。

 この浴衣と言い、ひょっとしたら長谷川はその暑苦しさと五月蠅さに隠れているだけで実はかなり育ちが良いのかもしれない。


 そんな事を思いながら俺も長谷川と向かい合うように腰を下ろして――。


「…………」

「……いっ!?」

「ん? どうした赤堀」

「い、いや……思った以上に床が冷、たくて」

「ああ! 分かるぞ! 便器に座ってめちゃくちゃ冷たいとビックリするよな!!」

「あ、あぁ……」


 ――ゆずるを、見つけたんだ。

 それも長谷川の真後ろ、俺の勉強机の下、椅子の奥で丸まってこっちを見ている。


 身体が小さいのは分かるけど、何でそんな所に隠れたんだゆずる……!!


「…………」

「…………」


 ベッドの中に、早霧がいる。

 机の下には、ゆずるがいる。

 もっと、もっといい場所は無かったのか二人とも……!

 そしてリビングに連れてけよ、俺……!!


「そ、それで話って何だ……?」

「ん、おぉ。まあゆずるちゃんの事とか、祭りの事とか、色々と話したい事はあるんだがな……」


 しかし後悔してももう遅い。

 ここはさっさと要件を済ませて、何とか長谷川を部屋の外に誘導しないと――。


「その前にだ、赤堀!」

「お、おぉ……?」


 ――そう、思っていた。


「とりあえず、爺さん達から譲り受けた浴衣を着てみないか!!」

「はぁっ!?」

「……!?」

「……!?」


 ――長谷川が突然、上着を脱いで、上半身裸になるまでは。

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