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件は夢を選べない  作者: 弘井 まどり


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 ここから先、俺たちは果たして何をすればいいのだろうか。

 この場所で何が起きて、どうして女子生徒が倒れることになるのかについては、映像では全くわからなかったと秀輔は言っていた。


 だから当たり前のように対処法もわからない。

 水道に使用禁止のテープでも張っておけばいいのか、それとも女子生徒が来たら追い返せばいいのか。

 いくらわからないことは一旦考えないでおくといっても、これに関してはある程度あたりをつけておかないといざというときに動けるか不安だ。


 いや、そもそもそれ以前に、俺たちは明日どうやって文化祭公開時間よりも早くここに来るのだろう。


「明日どうやってここまでくる?」


 俺は思いついた疑問をそのまま秀輔に投げかけた。


 右には校舎、左にはなにかの建物、まっすぐ行ったら突き当りで木が生えている。これが今見える景色だ。

 木に沿って校舎の外周を歩けるように道があり、そこを右に行くとおそらく中庭に行ける。

 じゃあ左はとそちらを見てみると、テニスコートが広がっていた。


「んー……あの木の向こう側って何があるのかな?」


 秀輔が目を細めながら木の向こう側を指す。

 木の向こうは学校の敷地外だ。しかし、このあたりにたどり着く前に学校の中を覗けるような道がなくなってしまい歩くことをやめたので、何があるかは確認できていない。


「どうだろ、人んちだったり」


 学校の外周を歩いていた時、急に学校と道の間に民家が現れてきた。

 ならばおそらくこのあたりも住宅が立ち並んでいるのではないかと思う。


「人んちだ」

「あーね」


 カメラを避けつつも何とか木のふもとまで移動し、その隙間から外を見る。


 そこにあったのはやはり住宅だった。


 それなら外からフェンスを越えてここまで来ることはできない。

 さすがに人の家を突っ切って水道まで行くのは無理がある。学校への侵入よりよろしくない。一発アウトだろう。


 そう思って視線を校内に戻そうとしたところで、秀輔がもう一度木の向こうを覗き込んでいる姿が見えた。


「ねえ……あっちは道路じゃない?」

「え、まじ?」

「ほらあそこ」


 指されたのはここから数メートル左に行ったぐらいのところ、そこにかろうじて車が一台通れそうな道が伸びていた。


「道じゃん」


 思わず声が弾む。


 道路があるなら話は早い。堂々と誰に憚ることなく歩いてこれるではないか。

 その後に行うことは人目を憚る不法侵入なのだが。


「あそこカメラ映らなそうだよね?」

「いけんね!じゃあそっから侵入だ」


 先ほど見つけた防犯カメラを振り返ると同時に、他にもカメラがないか周囲を一瞥する。

 今いる場所から見る限り、それらしいものは見当たらない。うまいこと死角になっているのかもしれない。


 これはもう明日の登校ルートは決定だな。


「ここの家の人に見つかったら終わりだけど……」


 たしかにその道は右も左も住宅に面している。

 俺たちの登校時間にたまたま外を見ている人がいる可能性も大いにあるだろう。


 しかしもしそうであっても、俺たちがこの学校の生徒だと誤解してもらえれば問題ない、と思う。


「制服っぽい服で来ようぜ!どっちが寄せられるか勝負ってのは?」


 なんならスクールバックも持って、文化祭にみんな着るであろうクラスTシャツも着てやろう。

 多分三年分まだしっかりと家にあるはずだ。


 そのうちの二枚発掘できれば秀輔の分も用意ができる。


「カモフラになるかなぁ……確かに白シャツにグレーのスラックスなら家にありそうだけど……」

「文化祭のためにはっちゃけて髪染めたから先生にバレずに入りたい、っていう設定で」


 俺の提案にもすっきりしないような表情でいる秀輔のために、裏設定も披露してみた。


 自分で言ってみて、意外と悪くない気がする。

 文化祭当日なら髪を派手にしている高校生がいても、そこまで不自然には見えないだろう。


「微妙にリアル……なんですぐそんな思いつくわけ?」


 しかし送られてきたのは呆れたような目線だった。お気に召さなかったのだろうか。


「賢くってごっめーん」

「悪知恵だけは働くってことか」

「おい」


 失礼な。聡明と言ってもらいたい。

 まあ三年間校則を守ってきたであろう秀輔には思いつかないような話であるのはたしかだ。


 口をとがらせる俺を無視して秀輔がスマホの画面を開く。


「まだ時間ある?」


 横から俺も覗き込むと、時刻は十六時を少し過ぎたところだった。

 十七時までにここを出ればバイトには間に合うので、まだ問題ないだろう。


「えーっと……いける」

「そしたらここから出てみよう」

「もう帰るん?」

「いや、明日迷わずここまで来れるようにあの道から知ってる道まで歩きたいだけ。帰りは門から出よ。防犯カメラあったら映ってる可能性あるから」


 なるほど。事前に道を確認しておくことは大切だ。

 当日迷子になってはかなわない。


 でも、帰るのはちゃんと校門から。

 防犯カメラだけではなく、俺たちは男子高校生たちにも道を聞いてしまっている。彼らはあれだけ足をペンキまみれにしていたのだからこの時間で移動したとも考えにくい。


「帰る姿ないのも不自然か」

「そういうこと」

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