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「したらこのまま水道探しに行くってことで合ってる?」
自分たちが後悔や罪悪感を持たないために、できることを全部やる。
たどり着いた結論は結局ここに来る前に話していたものと変わっていない。
ただ、それを達成するために準備したり調べたりする時間がなかったせいで、行動するたびにてんやわんやしてしまっている。
それはきっとこの後同じだろう。行動するたびに想定外の事態が起きて、毎回行動方針を話し合うことになりそうな予感がひしひしとしているのだ。
けれど今回に関してはこのやり方がきっと正しい。
「うん。あと、カメラがあるかも確認しよう」
「了解」
秀輔の提案に頷く。
しかし普段の生活であまり防犯カメラを意識をしたことがないので、どんなところにどのように設置しているのかがわからない。はたして見つけることが出来るのだろうか。
防犯のために設置するのだから当たり前ではあるのだが、スマホで調べてみるもそこまでの情報は見つけることができなかった。
それなら素人には見つけ出せないことも想定して、見つかっても見つからなくても、設置されているという前提で動く方がいいだろう。
「あったら映っておいた方がいいよね……?」
「え、なんで?」
すべてのカメラを避けて行動することは俺たちにはできない。だから映っていると思って行動した方がいいのは同意する。
しかし、秀輔の言い方は「自ら進んで映りに行く」といったものだった。
どういう意図なのかがわからず首をひねる。
「ほら、定期的にカメラの映像確認してる時のために。疑う余地を残しちゃうと何かあったら犯人にされちゃうから、いっそ全部の行動を見てもらえた方がよくない?」
たしかに、もし俺たちが不審者扱いされたときのためにもそれを否定する材料は多い方がいい。
秀輔の言う通りもし俺たちのすべての行動をカメラに残すことができれば、侵入はしてしまったが、それ以上のことはしていないという証明もしやすいだろう。
「なるほど……たしかにだけど、そんなうまくいくか?」
けれど今さらではないだろうか。
先ほど確認したとおりここがカメラに映らない場所だというのなら、俺たちはすでに空白の時間を作ってしまっている。
逆に映っているのだとしたら、今の先ほどまでの俺たちの行動は不審に思われてしまうはずだ。
いや、やらないよりは今からでも意識して映っていった方がいいのかもしれない。
何もわからないというのは、こんなにもたくさんの可能性について検討しなければいけないのか。
普段よりかなり頭を使っている感覚がする。
「いけばいいなーって。あーでももし門にカメラなくってまだどのカメラにも映ってない可能性に賭けるなら映らないほうがいいか……」
まだどのカメラにも映っていない。正直なところこれが一番理想だ。
しかし、一番可能性が低いであろうことも想像がつく。
「でもさっき思ったんだけどさ、カメラってどう設置してるかわからなくね?もしかしたら今のこの状況も撮られてるかも」
「うわー……難しいね……」
考えれば考えるほどどの行動が一番いいのかがわからなくなってくるし、頭もこんがらがってくる。
できるならこの学校のカメラの位置をすべて把握してから動き出したいが、一介の大学生である俺たちがそんなことできるわけもない。
「あー……全部映ってる前提で動くけど、万が一も想定して今日は見つけたカメラは避けるってのは?」
「うん……そうだね。そうしよっか」
「で、帰りに校門にカメラあったか確認する、って感じで」
本当にやりたいことはままならない中でも、どうにか実現できる範疇での最善を探す。
とりあえず、今までの行動がもし記録されてしまっていたとしても、これからの行動はなるべく不自然に見えないように心がける、今の俺たちにはそれぐらいの選択肢しか思い浮かばない。
これ以上考えても堂々巡りにしかならなそうだ。
「暫定完璧」
「はは、だろ」
秀輔も同じなのだろう。
俺たちは顔を見合わせるとあきらめたように小さく笑った。
「あとは……中庭を突っ切る覚悟決めるだけだね」
「いやいやいやいや」
笑いながら放り込まれた言葉に勢いよく首を振る。
いや待て、その覚悟は決めなくていいだろう。
というか、なんでそうなった。
「え、でもフェンスは嫌って律稀も言ってたじゃん」
それは確かに言った。だからといってじゃあ中庭を突っ切るかと言われたら、それも話が違う。
「いや、あのさぁ、俺たちは水道の場所が知れれば中庭からの行き方は別にわかんなくってもいいっしょ?」
「あ」
秀輔が小さく声を漏らす。言いたいことが伝わったらしい。
俺たちの今日の目的は、映像の中のルートを辿ることではない。現場になるであろう水道が、現実のどこにあるのかを確かめられさえすればいいのだ。
「あー……うん」
「右行って左行って左行くんだろ?」
「うん」
秀輔が覚えている映像の中の道順を確認する。
中庭で焼きそばの屋台に背を向けたまま右に進んで、左に曲がって、もう一度左。その先に水道があるとのことだ。
だったら、逆に考えればいい。
「じゃあ俺たちがもうちょい直進して右行けば鉢合わせる」
先の道から回り込むのだ。
これなら、大勢の生徒がいる中庭を真正面から突っ切るよりはよほど現実的な方法ではないだろうか。
さらにそれで水道を見つけられたら、同時に焼きそばの屋台の位置もほぼほぼ映像内と同じであると考えてよくなるだろう。
「盲点……」
秀輔は頭の中で道順を組み替えるかのようにしばらく沈黙した後、ぽつりと呟いた。
その時の顔を見て、俺は思わず笑ってしまう。
「焼きそばから水道じゃなくって、水道から焼きそばの場所を推測しよう」
おそらく秀輔は映像を見てしまっていたからこそ、その中の順序に引っ張られていたのではないだろうか。
けれども俺たちが今知りたいのは、映像の中と同じ道順ではない。
目的地が現実のどこにあるのか。それだけだ。
「天才。おっけー」
勢いよく秀輔が頷く。
よし、話がまとまった。水道到着までの指針の再決定完了だ。




