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「でも予想したところに焼きそばがないと……水道探しは振出しに戻っちゃう」
頷きつつも様々な可能性について思案していると、秀輔が現状水道があると予想される場所にピンを立てながらそう呟いた。
やはり一番気がかりなのはその点だ。予想通りでない場合、水道探しは一からになる。せっかく校内に入ることができたのだから、そうなってしまうのは避けたい。
でもそれを理解しつつも戻ると言い出したからには、カバーできるような策を思いついているのだろう。
「そうだな」
はたしてそれはどんな方法だろうかと次の言葉を待つ。しかし秀輔は少しだけ気まずそうに視線を動かしたきり、黙り込んでしまった。
どうしたのだろうか。
数秒間沈黙が流れる。
不思議に思い声を掛けようとしたところで、秀輔が勢いよくこちらに顔を向けた。その表情にはどこか覚悟が見て取れた。
もしかして、かなり難しい作戦なのだろうか。
自然とつられるように姿勢が伸びる。
「まず、予想通り焼きそばを見つけられたら外から乗り込みます」
「はぁ?」
しかし、聞こえてきたのは一ミリも予想していなかった内容だった。反射的に声が漏れ出る。
乗り込むだなんて、それこそ見つかったら言い訳のしようがない。どうしてその方法にたどり着いたというのだ。
「で、見つけられなかったら……」
「え?あ、はい」
こちらの困惑にも気づいているのだろう。秀輔の声はどんどん小さく、そして頼りなくなってきている。
そんな態度にも、話の内容にもツッコミたいことや、疑問点が次々思い浮かぶ。けれどもまだ秀輔がしゃべっているのでとりあえず一旦最後まで聞くべきだろうと思い、それらを必死に押しとどめた。
「律稀……」
「俺?」
だがまさかの自分の名前が出てきたではないか。瞬間、ここから先を聞くのが少し怖くなる。
それでもじっと続きを待っていると、秀輔は気まずそうに俺から視線を逸らしつつ口を開いた。
「誰かに聞いてくれない?」
「…………ちょっと待て」
思わず秀輔の肩を掴む。
予想通り焼きそばの屋台が見つかった場合の行動にもいろいろ言いたいことはあるが、それよりもまず見つからなかった時についてだ。あまりにも俺に丸投げすぎではないだろうか。
下からガンを飛ばしていると、明後日の方を向いていた秀輔が申し訳なさそうにしながらもこちらにへらりと笑いかけてくる。
「いろいろ言いたいことあんだけど、まずは……お前もしかして水道の場所確認する方法思いついてなかったな?」
「うん」
即答だった。
なんということだ。さっきまで自信ありげにこの後の行動を指示していたというのに。その時にはまだ焼きそばの屋台を確認する方法しか思いついていなかったらしい。
おそらく「振出しに戻っちゃう」と呟いていた時に気付いたのではないか。
「はー……まあいんだけどね、俺はそれすらも思いついてなかったし。むしろめっちゃありがたい」
ありがたいのは本音だ。実際、秀輔がいなければ何も始まっていなかったし、ここまで来ることすらできていないだろう。
だから文句を言おうとも思っていないが、だがしかし、ため息が勝手に口からこぼれていくのは許してもらいたい。
「……いけると思ったんだけどなぁ」
隣で秀輔もため息をつきながらうなだれている。
あれだけ自信がありそうだったのだ。おそらく映像を見た秀輔的にわたあめの看板が置いてあった屋台は、焼きそばの屋台の向かいにあった屋台だと確信していたのだろう。だから〝予想〟と言いながらも〝正確〟な水道の位置がわかった気になってしまった。
映像がすべて正しい現実を反映したものだと証明できるのであれば、それでも問題はない。
だが、今回は映像が現実と異なっている可能性も捨てきれないので、現物を確認しておきたかった。それを思い出したと同時に自分の思い込みに気付き、焦ってあんなことを言い出したのではないか。
「や、いけるだろ」
けれどそんな秀輔のおかげで俺も一つ確認する方法を思いつくことができた。
「え、律稀は外からフェンス乗り越えての侵入賛成派?」
「反対派だわ。てか秀輔も反対派なら勢いで提案するなよ」
しかし秀輔はいまだにフェンスにとらわれているらしい。確かに一度ひらめいてしまったら、それ以外が思い浮かばなくなることってよくあるよな。
「とっさにそれしか思い浮かばなくって……」
「外から乗り込むのはまだ早い。これ以上罪を重ねるな」
「なんか刑事ドラマみたい」
刑事側のセリフを言っているが、俺たち二人は現在犯人側だ。
生徒の証言、もしくは防犯カメラから顔が割れて逮捕、といった感じで捕まる犯人。こんなんでは視聴率も全然取れないだろう。
「あ」
……待った、防犯カメラ。
刑事ドラマという言葉で思い出す。
いつだったか忘れたけど、大学の奴が高校時代に部活の仲間が学校で喫煙してたことが防犯カメラでバレて最後の大会出れなかったって、そう愚痴っていたような。
この高校に防犯カメラはついているのだろうか。
「やばいかも」
慌てて周囲を見渡す。
秀輔が驚いた顔をしているが今はそちらに構っていられない。
俺たちのこの不審な行動が、もしかしたら今この瞬間もずっと記録されているかもしれないのだ。




