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「おっし!こいや!」
「じゃあとりあえず本日二度目の状況の整理ね」
「オッケー」
二度目の状況整理は、主に先程の高校生たちとの会話で得た情報についてだ。
あの男子生徒は映像の視点になっていた女子生徒のクラスメイトで、彼らの学校は明日から文化祭がある。そして彼のクラスは焼きそばをやると言っていた。いっそドッキリを疑うぐらいに、秀輔が見た映像の内容と何からなにまで一致する。
しかし、こんな一般人にドッキリを仕掛けるほどテレビ局だって暇じゃない。いや、違うか。何も疑わないし、信じないのだから、ドッキリの可能性も否定してはいけない。ドッキリである可能性も捨てず、もし本当にそうだった時のために盛大に踊らされる準備もしておくのだ。
けれども現状は、あの映像は未来からの救難信号で、文化祭で起こる事件だか事故だかを防いで欲しいというメッセージである、というのが一番しっくりくるストーリーだろう。ならばまずはそれから備えていくべきだ。
「時を超えて自分の身を守る時代になってきたのか……」
「先進的だね」
俺と秀輔は感心とも、呆れとも取れないため息をこぼす。
映像から察するに、事が起きるのは文化祭当日の午前中。おそらく開場前の準備段階、外の水道で。
人通りがまったくなかったから校舎裏かもしれないということだ。
「つまり、公開時間より前に行って原因を突き止めて阻止する必要があるってことだよな?できっかな」
「事件か事故かによっても結構変わりそう……」
「どっちっぽい?」
原因を突き止めるとか、阻止するとか、言葉にすると意外と簡単そうに感じるが、はたして何とかなるものなのだろうか。何とかなっている様子はまだ想像すらつかない。
阻止すると言ったって、突っ込んできた車に撥ねられたとかだったら正直手の打ちようがない気がする。
身一つで車を止めることはできないし、女の子を移動させるにしても、車に気づいた時点で間に合わない可能性の方が高いだろう。
せめて、事前に事件が事故かぐらい検討がつけばいいのだが。
「目撃者もいなさそうな場所だったし、どっちも有り得そうなんだなぁ」
それは今持っている情報じゃわからないらしい。ならば情報整理はここまでだ。
「とりあえず時間調べるか」
「そだね」
次にやるべきことは、新しい情報を探すこと、そしてそれと同時進行でこれからの立ち振る舞いを考えることだろう。
スマホを取り出すと、俺たちはそれぞれあの男子高校生たちが教えてくれた学校名を調べ出す。
「文化祭二日間あんな」
「うわ、忘れてた。そうだったかも……そっかそうだよな」
ホームページから文化祭情報を探し出し、秀輔にも見えるようにスマホをテーブルに置く。
俺たちだってたった二年前は同じ立場だったはずなのに、ホームページに映っている高校生たちの姿がやけに眩しく感じる。
「どっちだ……」
「わかんないね……」
二人して顔を顰めながら画面を覗くが、そんなことをしていても答えが浮かび上がってくるわけではない。
「初日の公開時間が遅いのは多分オプセレとかあるからだよな」
「そうだと思う。都立だと屋台の準備ってオプセレ前にしてた?」
オープニングセレモニー、所謂オプセレは言うならば開会式のようなものだ。秀輔も当たり前のように知っているということは、都立だけではなく全国的に文化祭前には行う式なのだろう。
「あ〜……そういえば俺かき氷だったから教室でやってたわ……」
「氷は室内だね……」
腕を組み唸りながらも必死に記憶を掘り起こす。
しかし、そもそも高校も、出し物も違うのだ。思い出せたとしてもあまり参考にならない気がする。
「秀輔が見た映像はそのままそば焼きそうだった?オプセレありそうだった?」
「うーん……」
一回しか見ていない映像からそこまで推測することは至難の業だ。
一縷の望みをかけて秀輔に聞いてみるが、案の定眉間に皺を寄せたまま固まってしまった。
「あ、そういや女の子水汲みに行ったんだっけ?」
ふと、秀輔の実況を思い出す。
女の子は水を汲みに行くことになったと言っていた。
しかし、この時期外に置いた水はすぐにぬるくなってしまうだろう。
オープニングセレモニーは開会の挨拶だけではなく有志の演目があるのが通例だ。……多分。同じ都立なら似たようなものだろう。
一、二時間はかかるその会を前にして先に水を汲みに行かせるようなことがあるのだろうか。
「ならさ、二日目じゃね?」
なかなか冴えた推理だ。自画自賛をしながら、晴れやかな気持ちで自信満々に秀輔を見る。
けれども、納得の表情を浮かべてくれていると思っていた秀輔の顔には、依然として眉間のシワが寄ったままだった。
「事故なら、そうだと思う。けど……事件だったら……」
「え、あ……そういうこと?わざと一人にさせるために、とかある感じ?」
途中で言葉を止めてしまったが、さすがにそこまで言われたらその先は推測できてしまう。
続けられる予定であったであろう言葉を俺が口にすると、秀輔が気まずそうにもごもごと頷く。
「可能性としては無くはないかなって。オプセレで人が体育館とかに集まるから、発見を遅れさせるためにわざと初日に、とか……」
「こっわ……」
本当に怖いのは幽霊とかじゃなくって人間だっていう意見は、こういうところからくるのではないだろうか。
俺は思わず身震いをする。
「やっぱり両方行くしかないか……」
「だな……」
ため息混じりに秀輔がそう結論づける。
たしかにどう転ぶのか全く予測がつかない今、それが一番いい策と言えるだろう。
けれども、事件じゃないといい、そんな気持ち込めて俺はそれに頷いた。




