生物の価値
私は、目の前にいるこいつに腹が立ってしょうがない。
「ホーリーを離して!」
「は?なんで?」
そう言うこいつの目は、さっきとは打って変わってギラギラしている。
まるで、獲物を狙う獣のようだった。
「お母さんの大切な飼い猫なのよ。それ以上の理由が必要?」
「はっ!お前の母親の飼い猫だろうが、どうでもいいな。お前を従わせるためなら、どんな手でも使うからな。」
「なっ...!」
こいつを殴り飛ばしたいところだけど、ホーリーを猫質に取られていたら、手の出しようがない...。
どうしよう...。
「それに、お前の母親はもう死んでるんだろ?なら、別にいいじゃねぇか。もう飼い主が死んでいる猫なんざ価値がないも同然だからな。」
こいつの口からその言葉が放たれた瞬間、私は理性を失った。
「...は?」
「耳が遠いようだから、もう一度言ってやるよ。飼い主が死んでる猫なんざ価値がねぇんだよ!」
「ふざけるな!」
自分でもびっくりするくらい大きな声が出た。
「飼い主が死んでる猫は価値がない?ふざけるな!ホーリーに限らず、どんな生物だって必死に生きてる!どんな生物だって元々は野生だ。飼い主は、その子が生きるための手助けをする存在。飼い主が捨てたから?死んだから?そんなことで生物の価値はなくならない!」
ホーリーは私に生きる希望をくれた。
私にたくさん懐いてくれた。
お母さんじゃなくても、たくさん一緒にいてくれた。
だからこそ、ホーリーを含めたたくさんの生物について考える機会が増えた。
生物がいる意味も知った。
そうしたらいつの間にか生物に対する感情は、どんなに凶暴な生物もどんなに怯えている生物もどんなに有効的な生物も、大好きになっていた。
だから、価値がないって勝手に決めつけて、飼い主の方が立場が上だって、そう思い込むやつのことが大嫌いだ。
「どんなに綺麗事を言っても、こんな猫、俺にとってはどうでもいいんだよ!さっさと言う事聞きやがれ。さもないと、この猫を焼き切る。」
さっきよりは落ち着いた声色で話している。
でも、ギラギラした瞳は変わらないし、むしろ冷たく鋭い声色になっている。
私は、背筋が凍ってくのを感じた。
ホーリーがいなくなったら、私はもう生きる気力がなくなるかもしれない。
でも、こいつの言うことを聞いて、こいつの言っている"あの人"に何かされたら、オリビアと過ごせなくなる。
ホーリーの命か、自分の日常か...。
...そんなのもう決まってる。
オリビアには申し訳ないけど、ホーリーの命のほうが大切だ。
「...わかった。あなたの言うことを聞く。」
と言おうとしたところで、玄関の扉が開いた。




