私の部屋
私は、お母様と別れて、リビングの反対方向に歩いていた。
中央階段まで戻ってきたところで、私は目を閉じた。
脳裏に、ケーキを勧めてきたお母様の瞳が蘇ってくる。
あれは食べちゃダメだ。
もし、あれを食べたら―――
そこまで考えて、私は考えることを止めた。
これ以上考えても、お母様の想いは変わらないから...。
そう思った私は、近くにあった石畳を見下ろせる窓に近づいた。
丁度誰かが正門から敷地内に入ってくるところだった。
多分、お父様のお客さんだと思うけれど。
敷地内に入ってきた人を暫く眺めてから、私は窓の側を離れて、通路を歩き始めた。
リビングの反対方向――中央階段から見て左側の通路の先には、私達の部屋がある。
私達の部屋の扉の横には小さなテーブルが置かれており、その上に花瓶に入れられた花が飾られている。
その花で執事さんやメイドさんは誰の部屋なのかを判断している。
私のところには、青色のハイドレンジアが、お母様のところには、白色のジャスミンが、お父様のところには、白色のイベリスが置かれている。
ここに置いてある花は保護魔法で枯れないようになっているから、花が枯れて誰の部屋かわからない、なんてことは無いようになっている。
私は、青色のハイドレンジアが置いてある扉を開けた。
白色に金色の装飾が施された壁に、大きな窓がいくつも取り付けられていれ、床には絨毯が敷かれた部屋には、机や椅子、本棚、ベッドなどいろいろな家具が置かれていたが、元々の部屋が広いため、家具など気にならないほど広々とした空間が広がっていた。
メイドさんがいつも掃除してくれているお陰でもあるけど。
私は鞄を置き、本棚に近づいた。
今日の授業で、魔法生物について調べたくなったから、これとそれと...あと、あれね。
私は本棚から三冊の分厚い本を取り出すと、机に置いた。
魔法生物は、凶暴な生物も多いけど、友好的な生物も多い。
でも、凶暴な生物と見た目が似ている友好的な生物もいる。
仲良くなろうとしたら、襲われたっていうのもよく聞く。
生物とふれあいたいと思っているなら、ちゃんと勉強しないとね。
また今度、ソフィアと魔法生物が展示されているところに行ってみようかしら?
そう思いながら椅子に腰掛け、一冊目の本を開く。
一冊目の本から、ずらりと生物の情報が事細かく記されていた。
私は、全ての文字に目を通しながら、頭の中で情報を整理していく。
一回は読んだことある本ばかりだけど、何度も読み直したりしないと、知識として定着しないから、定期的に読み直している。
私は、静かな部屋で一人、本を読み続けた。




