私の禁句
「......やっと終わった〜!」
私はカフェの席で大きく伸びをした。
「お疲れ様、ソフィア。」
そう言いながら、残りのアールグレイを口に運ぶオリビアの姿は何度見ても様になっている。
「こんなに長い時間やる羽目になるとは思わなかったよ〜。」
課題をやる前は淡い蒼玉色の太陽だったのが、今ではすっかり淡い翠玉色の太陽に変わっている。
「課題はそれくらい時間をかけてやるものよ。もしかしてソフィア、これまで短時間で終わらせてきたのかしら?」
「うっ...。......はい...。」
「ソフィア......。」
うっ...。
そんな呆れるような目で見ないでよ!
勉強が苦手で嫌いな人が長時間も課題に取り組めるわけないし!
これでも頑張ってる方なんだからね!
私はヤケクソで、アフタヌーンティーの上段においてあった最後のケーキであるガトー・オ・ショコラを手に取って頬張った。
そんな私をオリビアは優しい目で見ていた。
「ソフィア、ハムスターみたいにそんなに頬張ったら喉に詰まるわよ。」
「ふぇ!?はふふはー!?へふにはふふはーひゃないひ!ほへにほほにふはふはんへはひへはひひはいほーふ!」
「大丈夫とかないから。ほら、食べながら話すとお行儀が悪いわよ。食べ終わってから話しなさい。」
「ふっ...。は〜ひ...。」
そう言って私は、もぐもぐと口を動かし始めた。
.........ガトー・オ・ショコラか...。
そういえば、ミネルヴァが一番好きなスイーツだったっけ...。
ここでテスト終わりとかに二人で一緒にケーキ食べてたなぁ...。
懐かしいな......。
私が―――してから、みんなの好きなものとか思い出の場所には行かないようにしてたのに...。
オリビアと帰ってきちゃった...。
でも、これからも来ることになるんだろうな...。
オリビアと一緒に過ごすようになってるから...。
違う。
オリビアと一緒に過ごすようになってるからじゃない。
......自業自得だからだ。
...............。
あははっ。
そうだよ。
全部私が悪いんだ。
もし、何かの拍子にオリビアが―――たら、私のせいだ。
もし、何かの拍子にオリビアが―――たら、私のせいだ。
もし、何かの拍子にオリビアが―――たら、私のせいだ。
もし―――
...............。
......っ。
......そんなの嫌だよ...。
ミネルヴァ...イリス...ヘカテ...リリス...。
私が、―――を望んだから...。
みんなは、私から―――
そこまで考えたところで、私は、ガトー・オ・ショコラがなくなっていることに気付いた。
まだ...話すつもりはないから...暗い顔してたら心配するよね...。
「ねぇ、オリビア!時間も時間だし、そろそろ帰らない?」
「ええ。そうね。こんなに遅い時間まで付き合わせてごめんなさい。」
「ううん、大丈夫!アフタヌーンティーも美味しかったし!」
「それなら良かったわ。」
「...また来ようね!」
「ええ。」
......ダメだ。
あれは言っちゃダメだ。
言ったらそう思ってしまうから。
そして、―――から。
だから、心の中で言う。
またね、オリビア。
もし、何かの拍子にオリビアが―――たら、私のせいだ。
もし、何かの拍子にオリビアが―――たら、私のせいだ。
もし、何かの拍子にオリビアが―――たら、私のせいだ。
これらの―――には全て違う言葉が入ります。
そして、みなさんが気になっていることは、多分大体伏線を張っていると思います。
探してみてください。




