親友の異変
昼食を食べ終わると、いよいよ午後の授業が始まる。
Ⅴ限目は、魔法戦闘実技の授業だった。
「みんな、自分の魔法属性は覚えているな!?」
中庭に響く大声で話しているのは、ヴァルター・シュミット先生。
いわゆる熱血教師タイプで、何事にも全力で熱い先生なんだ。
ただ、熱すぎて、時々生徒から引かれる時があって、その時は、炎が消えたみたいに、しゅんとしてるから、子犬みたいに見えるんだよね...。
「一人一体ずつ練習用の人形を設置した!その人形に向かって、自分の魔法属性の中で一番苦手な魔法を撃て!」
うん、いつも通り熱血だ...。
その勢いに生徒たちは苦笑いするしかなかった...。
「それじゃあ、準備ができた者から始めていけ!」
その先生の言葉を合図に、続々と生徒たちが人形に向かって、魔法を撃つ。
私は、大きな土塊を生成するのが苦手だから、土塊を出す練習をした。
大きな土塊を出せるようになると、土塊に魔力を注いでゴーレムも作れるようになるし、攻撃魔法としても使えるようになるから、土塊が出せるようになるだけで、結構幅広くいろいろなことができるようになるんだよね。
使えるようになるかは別だけど。
*:゜+。.☆.+*✩⡱:゜ *:゜+。.☆.+*✩⡱:゜
どうしよう...。
何度土塊を生成しても、小さなものばかりで、大きなものが一個もできない...。
前オリビアに教わった、イメージしながら魔法を撃つこともしっかりしているのに...。
もう一度、と思った瞬間、先生が生徒たちに声をかけた。
「そこまで!魔法を撃つのをやめろ!」
すると、生徒たちの呪文を唱える声が一瞬で消え去った。
「苦手な魔法を思っている風に撃てなくて、行き詰まっている生徒も大勢いるであろう。そんなお前たちに助言ではないが、アドバイスをしよう。教師としてな。」
生徒たちが息を呑む気配がする。
「苦手な魔法を克服するのは難しい。それは俺達教師も勿論知っている。俺達教師も、苦手な魔法があったからだ。だが、誰一人とて使えない魔法はない。どんなに苦手な魔法があっても、どんなに魔法が扱えなくても、誰でも魔法は使える。全員が、努力次第ですべての魔法を扱えるようになる。そして、逆に言えば、自分の使い方次第で良いようにも悪いようにも扱えてしまう。ただ、俺達教師は、魔法を良いように使ってほしい、魔法を使える楽しさを感じてほしい、そういう思いで授業をしている。それだけは忘れないでいてほしい。」
ヴァルター先生の言葉は、私達生徒の心の奥深くに染み込んだ。
先生の話を聞いて、顔つきが変わった生徒も居た。
それほどまでに、先生の言葉は生徒たちに響き渡った。
そこで、ちらりとオリビアを盗み見ると、私は息を呑んだ。
オリビアが、今までに見たこともないような表情をしていたからだ。
無表情なのに、どこか悲しそうにも苦しそうにも見えるその表情は、何かを抱えているように感じられた。
しかし、私が目を瞬くと、いつものオリビアの表情に戻っていた。
今のは...何だったの...?
ねぇ、オリビア...私に何を隠してるの...?




