鍛錬
「あれ?」
タマキは、朝日を浴びて眠りから覚めた。
体がとても軽くまるで自分の体が生まれ変わったような感覚を覚えた。
「熱もない」
タマキは、手のひらを開いたり握ったりして自分の体調が良くなった事を自覚すると布団を畳んで訓練の広場に出た。
「ふっ! やっ! せい」
タマキは、訓練用の的当ての人形と訓練用の武器を見て木刀を持って的に向かって木刀を振り始めた。
「あれ?」
タマキは、不思議な感覚を覚えた。
まるで剣の重さを失い、鉄の塊から綿棒の重さに変わった。 そんな感覚だった。
「どうして? 今までこんな事なかったのに」
タマキは、困惑した。 全能感も感じる。 さらには昨日まで重かった剣が本当に綿飴のように軽いのだ。
「一回私が死んだから? どうして?」
自問自答しても答えが返ってくる事はない。 ただ、困惑と戸惑いだけが体を支配した。
「それは。 スキルが体に完全に定着して馴染んだからだね」
「え?」
背後を振り向くとスミレがいた。 今日は珍しく仮面を被りやって来ていた。
「おはようタマキ。 目が覚めたのね」
「……スミレ先生。 ごめんなさい私負けて死んじゃいました。 シャヤが生き返らせてくれなかったら」
タマキは、涙を流して頭を下げた。
スミレに師事を受ける者としては不甲斐なくて、情けなかったからだ。
「タマキ、謝る必要はないわ。 相手は十六歳。 タマキは九歳。 筋肉の発達の差があるから腕力で負けるし、相手はスキルであなたを殺そうとした。 それだけ相手との実力差があるのよ」
「……でも、あの時は私は敵に勝たないといけませんでした。 後ろにいる奴隷の皆の為にも」
「……そう。 それと、奴隷のみんなだけど殆どは信頼出来る街に保護して一人はこのナナシノで預かる事になったらしいわ。 入りなさい」
「えっ?」
タマキは、スミレから奴隷の子供達の顛末を聞くとスミレは手を叩いて誰かを呼んだ。
「……こ、こんにちは」
「あなたは?」
「私は、ティルナ。 タマキ、あなたに助けって貰った子供よ」
それは、タマキが守ろうとし奴隷達のリーダーになっていた十二歳の女の子だった。
「……えっとティルナちゃん? って言うんだね。 よろしく」
「ええ、よろしく」
タマキは、恐る恐る手を伸ばすとティルナは手を握り返してくれた。
「よかった生きてて。 私、これからナナシノ国の魔術師団で生きる事にしたから」
「えっ!? どうして」
タマキは、いきなりの情報に戸惑った。
「……裏の世界を見てしまったし、何よりタマキの力になりたいの。 これからよろしくね?」
タマキは、ティルナの覚悟を見て頷いた。 何か思い決意がある以上下手に聞くのは礼儀がなっていないと思ったからだ。
「さて今日は、ソウルスキルについて改めて説明しましょう」
スミレが、手を叩き空気を変えた。
「タマキ。 あなたはスキルを体に定着させた。 それは生命の進化なのよスキルを会得したり進化をすると身体能力も上がるし、魔力総量や質もより良いものになるの」
「……そうなんですね」
「ええ。 ティルナ。 あなたもスキルも持っているようだけどまだまだ自覚してないようだから修行をつけるわね?」
「はい。 先生」
横にいるティルナもスミレの顔を見て頷いた。
「さぁ、今日からスキルと魔法も組みわせた。 高度な練習をしましょう」
そして、スミレの授業が始まった。
「さて、タマキ寝たきりだったけど筋力が衰えてない感覚がするでしょ?」
「えっ?」
タマキは、スミレの発言に驚いた。
確かにスミレの言う通り、筋力の劣化はないように感じる。 倦怠感は無くむしろ前よりも好調なそんな感覚だった。
「それはスキルが定着して体が進化したのよ」
「進化?」
「ええそうよ」
スミレは、笑いながら剣を抜いて構えた。
「さぁ二人共。 スキルを使って私と闘いなさい」
「わかりました! はぁ」
タマキは、木剣を持ちスミレに切り掛かった。
「まだまだね」
「え?」
スミレとの木刀が交差するが片手で押されて地面に転がった。
「うっ」
「なるほど。 やっぱり少しだけ成長しているわね筋肉も速さも一年前と比べると相当強くなっているわ。 だけどそれはスキルをちゃんと使えるようになってから分かるわね」
「シャイニス!」
「光の魔法ね。 まだまだ遅いわ」
ティルナが、光の魔法を放つとその高速のビームはノールックでスミレは木刀で打ち払った。
「まだまだ殺気と言うか魔力の漏れがあるわよ」
「はい! スミレ先生」
こうしてタマキは、十歳から十一歳をティルナと共にコンビで動く練習とスキルを上手く使いこなす為の鍛錬で過ぎていった。




