表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タマキシノビ絵巻  作者: 宅間晋作
シノビ修行編
5/5

死と白銀



「はぁはぁこっちだよ!」


 タマキは息を切らしながら子供達を扇動して裏口へ向かう。 盗賊達が使う逃げる裏口を使ってイーニと合流するのだ。


「おやおや? 雑魚じゃん? どうちたの」


 すると目の前に軽薄な口調の男が現れた。

 タマキよりも頭二つ大きい身長を持つ男だった。 軽薄な笑みを浮かべてタマキを見下していた。


「みんな。 逃げて私この人の相手をする」


「だ、ダメだよ! 相手は異世界転移者なんだよ!? あなたも逃げよう」


 そう言って十二歳の女の子がまたタマキの肩を掴んで涙を流す。


「大丈夫。 私はシノビだから」


 タマキは、クナイを構えて目の前の敵を睨んだ。


「へー生意気じゃねぇか! 俺の名前はオノ・マナブよろしくなぁクソガキ!!」


「シノビ見習いタマキ!」


 互いに戦士の名乗りにも満たない声の名乗りをあげて激突した。


「やっ! せい! がば」


「トロイぜ!! ガキガァァァァ」


 タマキは、クナイを投擲しマナブの動きを制限しようとしたが俊敏なマナブは既にタマキの目の前におり腹を蹴り上げられていた。 全身に魔力を巡らせていなければ即死だったとタマキの本能が告げた。



「あぅあ」


 痛みで動けなかった。 普通シャヤとの組み手でもこれぐらいの痛みならすぐに立ち上がる事が出来るのに全く動けなかった。


「オラどうしたよ? なぁクソガキ。 萎えさせんな!」


 するとマナブはタマキの頭を掴み力を込め始めた。


「や、やめて!」


「お、お姉ちゃんを離せ!!」


 すると周りの子供達がマナブに石を投げ始めた。

 タマキの劣勢が見ていられずに微力ながら加勢しようとしたのだ。


「あんうぜぇよ。 スキル『威圧』」


「うっ!?」


「みんな!?」


 すると、十二歳の女の子以外はマナブのソウルスキル威圧により気絶してしまった。


「あん? お前気絶しねぇのか。 どうやら精神耐性のスキル持ってるみてぇなだな」


「……スキルって何?」


 女の子は首を傾げて困惑する。 村人として生きてきたあまりにスキルという情報がないのだ。


「教えてやるよ。 スキルは皆にある平等の力! 圧倒的なチートのギフトなんだよ。 子供にも遺伝するしすげえ力なんだぜぇ?お前いいなぁ大人になったら俺と遊ぼうぜ?」


「い、嫌っ!?」


 女の子に目線を合わして、マナブは舌なめずりした。 十二歳の女の子は恐怖のあまり涙を流して錯乱する。


「う、うぁぁぁぁぁ」


「うぉ!?」


 タマキは無理やり意識を叩き起こし、魔力の砲撃を浴びせた。 コントロールの枷を外して撃ったので魔力枯渇生命が始まり、自身の黒髪が少し白く染まったが自身はそれに気づかなかった。


「シノビは諦めない! シノビは人を助ける英雄なんだ!!」


 吐血しながらタマキは、ふらふらとよろけて立ち上がった。


「クソガキガァ!! ウゼェんだよ!!」


 いきなり魔力放出をしたタマキにマナブは逆ギレし、そのまま自身の魔力を解放して突っ込んできた。


「ガキが舐めるんじゃねぇ!!」


「あがぁ!?」


 タマキは、マナブの動きに反応出来なかった。 脳からの出血に全身の骨折そして魔力枯渇という重荷の中九歳の子供が十六歳の高校生に勝てる訳もなかった。


「死ね」


「あっ……う」


 タマキは、そのままマナブの拳を顔面に受けて命を落とした。



「あ、あぁ」


 女の子ティルナは絶望していた。

 ガルーシャ帝国の兵士に村を蹂躙されたと思ったら盗賊に捕まり売られそうになった。

 そしてシノビを名乗る女の子に助けられて希望が見えたと思ったら、女の子は目の前で死んでしまった。



「ねぇ。 あなた! あなたってば!!」


 ティルナは立ち上がり、タマキの体を揺すった。

 だが、タマキの反応は帰って来ず瞳には生気が宿っておらず目は虚だった。

 タマキは、マナブの拳で確実に殴殺された証拠だった。



「ひゃはは!! 俺は神なんだ!! 俺は無敵だ!! この異世界で俺は神なんだ」


 そんなタマキとティルナには目もくれず、マナブは両手を挙げて高笑いを浮かべた。

 戦闘でテンションが上がっているらしい。


「死んで」


「あん?」


 マナブがタマキを殺し、高笑いを浮かべると目の前に灰色の髪に猫耳が生えた獣人が現れた。


「よくもタマキを殺す」


 猫耳の獣人は瞳孔を細めて、魔力を滾らせていた。 


「あん? そのガキの姉か? 残念だったな俺が生意気だったからぶっ殺してやったぜ」


「私はシャヤ。 キツネ班の護衛」


「あっそう? 俺はオノ・マナブ仲良く殺し合おうぜ!」


 互いに名乗りをあげてシノビと転移者の戦いは第二ラウンドへ突入した。


「ははっ! スキル『喧嘩自慢』」


 スキルの解放宣言を行うと全身から魔力が迸った。



「きゃあ!?」


 そばにいたティルナはタマキの遺体を庇いながら悲鳴を上げた。



「……身体能力を上げるスキル。 私も同じタイプ」


「へー俺ら赤い糸で結ばれてるタイプ? まじ神じゃん」


「殺す。 スキル『護衛官』」


 すると猫耳の獣人もスキルを解放した。 相手のスキル解放宣言にマナブのテンションは上がり笑みをさらに釣り上げた。


「いいよいいよ! こういうのがはぁ!?」


 調子に乗っていると既に猫の獣人の拳はマナブの鳩尾をぶち抜いていた。


「がはっ!? な、なんで!? 俺のスキルの方が強いのに!?」


 マナブは壁にぶつかり立てなくなった。

 


「たまたまスキルだけで勝てる奴と、スキルの補正を理解をして鍛錬してきた達人とでは天と地ほど差がある。 死んで」


「や、やめろ!! 俺はがぼぉ!?」


「おしまい」


 そして目の前の猫耳の獣人は、無表情の顔を変えずにずっとマナブの顔面を殴り続けてマナブの命を奪った。




「……ごめんなさい遅くなって」


「でもこの子が! この子がぁぁぁ」


 シャヤと名乗った猫耳の獣人がマナブを片付けた後。 タマキを抱きしめるティルナに駆け寄った。


「大丈夫。 まだ助かる」


 そう言ってタマキは胸から緑色の液体の入った瓶を取り出し、タマキの口に飲ませた。


「これで」


「えっ?」


 すると、タマキの体が輝きだした。

 まるでそれは生命が光を帯びたように輝いていた。


_________________________________




「あっ」


 炎と吹雪が見える。 白銀色の炎がとても暖かいがとても冷たく感じた。



「……私死んだんだ」


 タマキは吹雪の中を歩いていた。 これは小さい頃の記憶だ。

 四歳の時だ。 猛吹雪の中タマキは気付けば一人だった。

 口減しだったのか、それとも戦火から逃れようとしたのかは覚えていない。

 四歳の頃の記憶など自我が薄いので曖昧だ。


「……もっと生きたかったなぁ。 私、死んじゃった」


 両目から涙が溢れた。

 もっとイーニやバルメア様。 シャヤやエールニそれにスミレとも一緒にいたかった。 

 だがタマキは死んだ。 弱者なのだから当たり前だ。 

 弱い命はすぐに死ぬそれが世界の当たり前なのだから。


「……そうだよね。 死んだら天国に行かないと」


 死んだ事を理由にタマキは全てを諦める。

 すると肩を掴まれた。


「……誰?」


 顔は吹雪で分からないが顔のフォルムから女の子だと分かった。

 女の子は指を指しており、どうやらあっちに行けと言ってるようだった。

 指を指した方はとても明るく街の雰囲気を感じた。


「……ありがとう」


「あなたに色んな人の笑顔がありますよう」


「……えっ?」


 その言葉を聞いて振り向くと既にその女の子はおらず、世界はいつの間にか光に満ちていた。


「……暖かい」


 タマキは、そう言って意識を光に溶かした。


「んあ?」


 目を覚ますと、女の子とシャヤがいた。


「あれ? 私生きてる?」


「おはようタマキ」


 シャヤが、涙を流してタマキの頭を撫でてくれている。 それがとても暖かくてタマキは優しく笑った。


「ごめんねシャヤ。 私体が動かないのまるで筋肉痛のように。 それとなんでかな? 少し熱っぼいの」


 タマキは全身が痛み、発熱してる事に気がついた。

 それをなんとか言葉にしてシャヤに伝える。


「それは定着熱だ。 スキルがお前の体に定着しようとしているだから今は休め」


「うん」


 タマキはそう言ってまた眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ