魔術師、看護師、ナルシスト、シノビ娘
一方、ティルナは目の前にいる五十名を相手に杖を握り締めて敵対していた。
「ふーん。 こんな子供が相手なんだー貴方何歳?」
「……十五歳よ」
ティルナの目の前にいるのは、ピンク髪をツインテールにし、ピンクの瞳。 そして白と赤のビスチェを着た少女で見た目は十八歳くらい。 何よりも目が行くのはその豊満な胸であったが、ティルナは少し恥ずかしくなって目を逸らす。
「あらあら? ヘレナちゃんの胸元チラ見してましたか? いやーん」
そう言いながら揶揄うようにチロリと舌を出してピンク髪の少女_ヘレナは笑う。
「……周りの女性陣は貴方の部下ですか?」
ティルナは、茶色の瞳を細めて問う。
「うん。そだよーヘレナちゃんの部下でクローン型のネクストチルドレンの子達。 あっ私はちゃんと強いよークローンとかと話にならないからー」
「ちょっ。 ヘレナ様挑発はおやめください!」
「別にいいじゃん? 勝てば正義でしょ」
慌てて部下が、ヘレナを嗜めるがヘレナはどこ吹く風で唇を尖らせて暇そうな態度を取る。
「まぁ。 私はネクストチルドレン。 貴方のような小娘には負けないから」
胸に手を当てて、嗜虐な笑みをヘレナは浮かべた。 まるでネズミを目の前にした猫または餌を目の前にした犬のようにその目は人間ではなく狩りを楽しむ獣の目だった。
「……全くガルーシャ帝国といい、盗賊と言い。 その戦闘狂いなところなんとかならないわけ? タマキの方が大人に見えるわよ」
三角帽子の唾を手に掛けながら、ティルナはため息を吐く。 そうしてる間に僅かに魔力を使いソウルスキルの冷静参謀-チンチャク-を使い戦略を立てる。
まずはネクストチルドレンは個人差はあるのか。
これはあるのだろうとティルナは思う。 ナナシノ国のシノビ達でさえ、種族による魔力量や肉体強度の差があるのだ。 同じくネクストチルドレンという種族にもこれは適応されるべき暗黙の了解というものである。
「貴方。 まだ味方いるの?」
そう言いながら少しずつ自身の魔力を霧にしてティルナは走る。 魔法使いならば接近戦。 情報を多く与えて判断を鈍らせる。
「あらぁ? 接近戦やるつもり? 行きなさい」
ヘレナは、ティルナの接近に気づくと手を伸ばして五十名のネクストチルドレンをけしかけてきた。
だがそれが狙い目である。
「エレック!」
「「えっ? ぐぁぁぁぁ!?」」
薄い霧に電撃を流して、ネクストチルドレン五十名を感電。 出来るだけ傷つけずに倒す。 しばらくは起きないだろうと思考するが、その暇さえなく、目の前にヘレナが杖を振りかぶり撃ちつけて来た。
「くっ!?」
ティルナは、魔力を体に流して腕力で拮抗だが腹に蹴りをぶち込まれて地面を転がった。
「げほげほ」
「ねぇ。 舐めているですかぁ? こっちはどんだけ血反吐吐く訓練やってきたと思っているんですぅ?」
笑みがたおやかだが笑っていない。 どうやらヘレナはプライドが高いらしい。 クローンとネクストチルドレン。 やはりネクストチルドレンと名を冠していても何かしらの差は必ずあるのだと悟る。
例えば鍛錬。 食事、環境何よりも基礎となる肉体の強度や遺伝子そちらの方に秘密があるのではとティルナは悟る。
「タマキでも、こんなに馬鹿力ないわよ」
そう言いながらティルナは、ヘレナを見上げる。
タマキとて元は奴隷であった。 故に栄養失調を抱えてサテライト細胞の未発達が課題であり、ヘレナはその逆つまり、サテライト細胞が逆に異常発達しているのだと考察する。
「貴方。 どんだけごほごほ。 馬鹿力なんですか」
血を吐きながら杖を支えにティルナは立ち上がる。
「ふふ。 我々は元々遺伝子レベルでサテライト細胞が育ちやすい肉体なのです。 それ故に膨大な魔力量、魔獣にも匹敵する身体そして何よりも強靭なスキルの会得に成功しているのです」
ヘレナは、手を握ったり開いたりをしながらニコニコ笑う。
「軽く魔力を流すだけでほら」
そう言ってヘレナはパンチを繰り出した。 体がミシミシ言ってティルナは地面を転がり近場の岩石に背中を打った。
「くっ。 エレックウィンド!」
「ふん! いくら魔法を撃っても……あ、あれ?」
ティルナの一撃を受けて、ヘレナが膝をついた。 意識があるが体が動かない。
「……なに……お……し」
声が言葉にならずそのままヘレナは気絶した。
「……はぁはぁ。 体が頑丈でも人間の電気信号で骨と筋肉は動く理屈からは逃れられません。 だから……脳の神経伝達を麻痺させていただきました」
ティルナは、気絶したヘレナを見ながらため息を吐きそのまま自身も気絶した。
「ティルナ殿! むっこれは」
「いかんでござんる! ティルナ様の治療を!」
「捕虜はハントするでござる!」
そう言って戦場に来たシノビ達が気絶した五十二人を回収しながら、テキパキと背負い飛び去った。 そこには静謐だけが支配していた。
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「やれやれ。 こんだけ戦略と人材がいるなんて商業国舐めすぎたかしら?」
「……そんな事はないと思います。 戦場はいつだって変わりますから」
「あらあら口がお達者ね?」
タマキが剣を抜いて構えていると、目の前に薄紫の髪に緑目を宿した少女が現れた。
「改めてまして、私はメイベルプラチナ。 あなたの宿命の相手とでも言っておきましょう」
「よろしくおね」
タマキが律儀に礼を返そうとしたその時既にメイベルは目の前におり、咄嗟にその一撃をタマキはガードした。
「あら? 真面目だから不意打ち掛かると思ったけどさすがシノビ。 反射神経と判断力は驚嘆に値するわ」
「ぐっ!?」
タマキは、力を込めて踏ん張るがメイベルの片手だけでタマキの両腕で込めた刀を押しのけつつあった。
「じゃあ。 エレック」
「うぐあぁぁぁぁ」
タマキは、剣の金属伝導による雷撃をモロに受けて膝から崩れて落ちた目の前にメイベルの蹴りが飛んできて顔面が吹き飛ばされそうになったが転んで回避した。
「あ、うぐ」
電撃でフラフラする。 感電ではなく完全に電気マッサージを数倍にした痛みがタマキを襲った。
「まだ生きているなんてシノビはタフね。 でも手なんて緩めてあげないから」
そう言いながらメイベルは、左手を腰に当てながら右手に持った剣で切り付け、突き上げタマキを蜂の巣にしようとする。
「くっ」
タマキはなんとかソウルスキル努力真面目-マジメ-を使い反応速度を上げるがそれでも自身の体が遅く感じるレベルでメイベルの剣捌きは早かった。
「ほら。 頑張りなさいよ」
「ごはぁ!?」
いきなりの横腹への蹴りに対応出来ずにタマキは地面を転がった。
「ほら。 動かないと死体に変わるわよ?」
「ウィンド!」
風魔法を刀の先から出して放つが、メイベルは片手で払い風の弾丸は霧散した。
「……うそ」
「嘘じゃないわ。 魔力の練度が違うわね。 まだあなたの才能なら出来るはずだけど期待ハズレかしら?」
冷たい目線に、タマキの筋肉は萎縮しただがすぐさま切り替えて大きく振りかぶった。
「うぉぉぉ!」
「恐怖に支配されてるわね」
「がばぁ!?」
そんな小さな臆病さを見抜かれながらタマキは顔面を殴られて地面に転がった。
「あ……ぐ。 えぐ」
血を吐きながらフラフラタマキは立ち上がる。 圧倒的な修羅場を踏んだ数の少なさと才能差をタマキは感じた。
「……あなたこう言う一方的な蹂躙を受けたのは一度や二度だけじゃないでしょう? 考えを止めたら負けるわよ? でも負けたらね……あなたの大事物を壊してあげる」
メイベルの妖艶な笑みを見てタマキの心は真っ白になった。
_奪う? 壊す?
心がひび割れた。 八歳のマキを殺すのか。 スミレを殺してあの桜みちるナナシノ国を血の雨で染めると言うのか。
「させないそんな事! 私は許さない!」
タマキは全身を魔力を包み、意識を覚醒させソウルスキル努力真面目-マジメ-をフル回転させてメイベルに斬りかかる。
「あら。 やっとやる気になった?」
するとメイベルが回避しようとしたが左頬が切れて血が流れた。
「……才能ではないけれど。 瀕死のがむしゃらは恐ろしいわね」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
タマキは果敢に攻めを始めた。 達人故の隙のない構えにある僅かな隙を責め始めた。
「……くっ!」
メイベルもタマキの攻め方が変わり、対応を変えざるおえなかった。 スピードによる剣戟ではなく、しっかりと基礎と応用を兼ね備えた返しをする必要が出てきたのだった。 たまにくるフェイントに教科書に載っているような綺麗な返しするが長年生きてきた癖が足を引っ張ってしまった。
「そこっ!」
「……お見事」
メイベルは胸に一撃を受けて、吐血し膝から崩れ落ち地面に血の池を作った。
「殺さない。 後で尋問受けて貰うから」
「それは楽しみね」
タマキに背負われながら、メイベルは意識を手放した。




