アシュリット・ヴァレンティア
アシュリットヴァンティアは転生者である。
とある世界では狙撃手として女性ながら軍に配属されていた。
だが上官に捨て駒として自爆剤として使われて命を落として異世界に転生した。
アシュリットの心は絶望に駆られた。
_何故また生きて死を望まなければならないのだろうかと。
自身の体はまだ未熟で、玉のような大きさだった。
異世界人の細胞を培養したクローンタイプのネクストチルドレンと言う人種にアシュリットは転生した当時に悟った。
「お前はこれより、我が国の切り札として運用する」
数年が経ち五歳になった頃、白衣の来た男や女達に囲まれてアシュリットの生活は始まった。
魔獣を倒したり他のネクストチルドレンと戦ったり、文字通り兵器を作る為の施設であった。
体術、魔術、知識、そして何よりもスキル開眼。
それらを求められて文字通りアシュリットは血を吐いた。
十二歳になり、冷静戦略-クールオブ-と言うスキルを手に入れた。 演算には及ばないが適切な戦術を組み合わせて勝率を上げると言う自動的に発動するスキルだった。
簡単に言えば習慣が完全に身につくスキルだ。 例えばご飯を食べた後は歯磨きをすると言ったように、何かをする場合、した後の行動を思考を介さなくても反射神経で行えると言う言いなりの人生になって来た自分にぴったりで皮肉なスキルだった。
十五歳になり、アシュリットはレラルド枢機卿の部下となり仕事をする事になった。
レラルドは寡黙で、仕事に失敗ても文句を言わなかった。
「……そうか」
資料を見ながらそう告げるだけで、アシュリット自身には興味ないのかと思っていたが数年仕えてみるとレラルドは無駄に期待せず能力を最大限に使う効果的を考えて部下を駒とは扱わない珍しい枢機卿だった。
他の枢機卿は、自爆の駒に夜の相手、はたまた売却をして金を肥やすなど外道そのものであったがレラルドは違った。
任務の資料を渡す。 たまにお菓子や武器を買ったり、はたまたチルドレンが死ねば墓を立てるなど変人と言っても過言でなかった。
だからこそアシュリットは、命を賭ける事が出来る同じプロフェッショナルとして心で理解していた。 敵が強敵であれ、挑まないと言う選択肢はない。
「私は、アシュリット・ヴァレンティアだ!!」
「……私はメルクニ・マルカニラ。 お手柔らかに頼むよ。 兵士殿」
走馬灯のような回想を終えてアシュリットは、突撃する。
魔力を最低限で体に流して、身体能力を上げる。 これだけで勝てるつもりはないが何もしないよりかはマシだ。
ソウルスキルの冷静戦略-クールオブ-も働き、的確な打撃を繰り出す事が出来た。
「おや。 早いね経験値が見て取れる。 長生きかい?」
「……ちっ」
メルクニは、微笑みながらアシュリットの拳を受けては流し、はたまたカウンターを打ち込んできた。
対処は遅れない。 何故なら反射神経で致命的は免れているからである。
「くっそぉ!!」
そのまま顔面に向けて銃を発砲。 殺すのではない、フェイクと距離を作り観察と思考の時間を増やして勝ち筋を見出す為だ。
「遅いね。 魔力量まだあるだろう? 段階を上げないのかい?」
「っ!?」
一歩、アシュリットが下がると目の前にメルクニがいた。 驚きのあまり思考を停止しそうになったが冷静戦略-クールオブ-が発動し、手のひらから魔力の砲弾を浴びせて無理やり距離を作った。
「はぁはぁ」
急な魔力消費で肩で息をする。
_怖い。
幾つもの戦場を股にかけて来たがここまで、経験や身体能力が上な相手とは戦って来た事がアシュリットにはなかった。
恐らく相手は相当な場数を踏んだ手練だ。
命を賭けるでも安すぎる程の強敵。 だが思考停止する理由にはならない。
「やれやれ、バーテン服がやぶれたね」
そう言いながら、メルクニはボロボロのバーテン服を払いながら歩いて来た。
最大威力に近い砲撃だったがそれでもダメだったらしい。
「私はお前に勝つ! 勝たなきゃみんなが死ぬんだ!」
震える心を律してアシュリットは突撃する。 勝たなくてはいけない。 いけない理由がここにある。
そう心で叫びアシュリットは突撃した。
「……君は優しい子だね。 特別にサービスだよ」
「ごぼぉ」
アシュリットが気づいた時にはお腹から背中掛けてメルクニの手が貫通していた。
「あっ。 い……や」
力なく呟いて、アシュリットの目は虚になりそのまま手は引き抜かれて砂漠に落ちて血の池を作る。
「……下手に暴れられても困る。 戦士の礼節として一度君を殺すよ。 聞こえないけどあえて言おう。 ここは君の勝ちだ。 精神では君は勝ってた」
聞こえないアシュリットにメルクニは呟きながらアシュリットの遺体を担ぎ歩く。
「大丈夫。 君は蘇生して仲間に合わせてあげよう。 私達の目的は殺戮ではないからね」
誰に呟くでもなく、褐色のバーテンの声は砂漠の風に埋もれて消えた。




