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タマキシノビ絵巻  作者: 宅間晋作
バリエンツ編
15/16

薔薇と悪魔と黒幕と

「やれやれ。 これほど手駒を失うとは」


 杖をついた老婆が倉庫を歩き辺りを見回す。


「だがバリエンツの職人を眠らせて、金品をオウルド錬金国に運ぶ手筈は整えた。 これでわしの地位も安泰よ」


 そう言いながら老婆は男に液体を垂らすと体が光って男が復活した。


「ミアルの婆さん悪いなぁ。 ……くそ」


「ふん。 ザンキ情けないねぇこんな小娘に負けるなんて」


 ミアルは、ため息を吐いてタマキと死闘を演じた男ザンキを復活させた。

 寿命は減るが二度目の復活が可能なルグアの秘薬を使い、先ほど死んだ四人の男達の魂を素材にして作った禁薬でザンキを復活させたのだ。


「で? このシノビ殺すか?」


 ザンキは、目線をタマキに向けた。 タマキは既に動かずに倒れており、辺りには血の涙と出血で血のカーペットが出来ていた。


「ふん。 増血剤や解毒なきゃこの小娘は死ぬ。 ほっときな」


「へいへい」


 ザンキは頭を掻いて、ため息を吐く。 そして落ちた剣を拾い帯刀した。


「ほらさっさと虫を運びな。 カマキリに人型カブトムシ。 刺されば呪毒に侵される蜂羽化すれば経済の街なんて火の海さ!」


 ミアルは、陰惨な笑みを浮かべて倉庫の奥へ入った。



「な、なんだいこれ!?」


 ミアルは、倉庫の惨劇に驚いた。


「あら? 遅かったわね、おばあさん。 ここいらの一帯の拠点は全部無くしちゃたわ」


 そう言って、男の骨を片手で折って、放り投げる少女の姿があった。

 紫の髪に緑の瞳をしており、薄い革服を来ていた。


「お、お前はなんだい!?」


 ミアルが狼狽する。 この少女の情報はなかった。 バリエンツのシノビでないとしたら一体何者なのかわからない。


「私はニル。 ただの騎士よ? よろしく」


 手は既に血で濡れており、笑みは恐ろしく感じた。


「ザンキ! ととっと殺しなぁ!」


「おうよ!」



 ミアルの指示でザンキは剣を抜いて、ニルに切りかかった。


「あら? 同期接続」


 そう言うとニルの瞳が青から緑に変わった。 そのまま剣を抜いてザンキの剣を受ける。


「ちぃ! お前、怪力のスキル持ってんな! びくともしねぇ」



 両手で押しても、びくとも動かないニルを見てザンキは舌打ちした。 その後何度も切りつけたが適度な剣の受け流しでいなされた。



「あら? 傭兵はこの程度?」


「テメェこの感触人間じゃねぇな!? お前これ動かすオートマータか!」


 ザンキは、数回の手合わせでニルの状態に気付いた。 ミアルにオウルド錬金国にあるオートマータの知識を知っており傭兵業をしてオートマーたとの先頭経験があったからである。



「ええ、そうよ? すごいでしょ? オウルド錬金国のガラクタを改造しちゃった」


 そう言ってニルは、舌を出して笑いザンキとミアルを挑発する。


「ガラクタって事は、どこのどいつだい?」


 ミアルは、舌打ちをしてニルを睨む手には卵持っておりそれを握り潰すとカマキリの群れが出てきてニルに襲いかかる。


「死にな小娘! 勝手にうちの技術を悪用するんじゃないよ!」


 さらに手に風の魔力を集めて放つミアル。 相手が機械である以上遠慮はいない。 ただ壊すのみである。


「あら?」


 ニルの腕が地面に転がる。 カマキリの一撃がニルの腕を切り落としたのだ。

 腕のあちこちにコードがあり、彼女が機械であると分かる。


「あっ……れ?


「終わりだぜぇ! ガラクタ!」


 そして、腕が落ちたことにより鈍ったニルの隙を見逃さずザンキが首を刎ねて、ミアルの風がニルの胴体を倉庫の壁に向けて押しつぶした。


「はっはっ! 弱いなぁ! ガラクタ!」


「ふん。 技術悪用するからだよ」


「俺の発汗の汗毒でよぉ! 回路が鈍ったみてぇなだしよぉ」


 そうザンキとミアルは、ニルを嘲笑して嘲笑う。 ガラクタがバラバラにされて舐められた溜飲が下がりさら解体しようとしたその時だ。


『緊急コマンドチェンジリング発動』


「「はっ?」」


 いきなりニルの体が発光して、地面に魔法陣が現れた。 どうやら誰かを召喚するらしい。



「こんにちわ。 私はメイベル・プラチナよろしく」


 紫の髪に緑の瞳。 銀の甲冑に身を包み柔らかく微笑み、薔薇と紅茶の匂いをメイベルから臭った。


「……お、お前あの薔薇の叡智のメイベル!? 異界宗教国のネクストチルドレン!!」


 ミアルは、メイベル・プラチナの登場に驚き固まった。 まさか当本人がこの場に現れるとは思わなかったのだ。



「今さっきまで紅茶飲んでいたけど、仮のテレポートシステムは素晴らしいわ。 機体が破壊されたときに内部の転移術式を作動するようにしたけど残念ね。 魂入りの魔石や機材もエネルギーとして消費されちゃったこれは改造ね。 術式だけ作動するようにもう少し予備魔力石を入れないと」


 そう言いながらメイベルは、近場にいるタマキの胸にアンプルを刺して液体を流し込む。


「ごほ」


 刺されたタマキが痙攣し、血を吐いた。


「安心なさい。 これ解毒剤と増血剤少しの睡眠薬。 起きられても困るしね」


 そう笑みを浮かべ、立ち上がりながら抜刀しザンキとミアルに対峙する。


「さぁ、来なさい」


 レイピアを抜き、メイベルは微笑む。

 そのまま互いに動かず一分が過ぎ、先に動いたのはミアルだった。


「行きな! カマキリども!」


 ミアルが号令を掛けると、カマキリが一斉に動き、視界が緑一面になるがメイベルは冷静だった。


「ソウルスキル薔薇ノ叡智 ーローズタスクー」


 スキル解放を宣言して、景色が透過して見える。

 薔薇ノ叡智ーローズタスクー。 

 それは未来予測に加えて相手の性質分析を宿したスキルであり、つまり解析と予測に特化したスキルである。


「はいおしまい」


 高速の刺突。

 カマキリの合間を縫い、回避しながら切り裂き突き上げ、刺突し無駄を省いた動作。

 未来予測があるからこそ可能な、回避と効率的な剣術。

 早いはずなのに、まるで両手で刺突しているかのような手数の多さを実現していた。

 体を血に染めていたであろう、カマキリの群れ。 それらは、倉庫に血を染めてズタズタに引き裂かれて消沈する。


「な、何故私の最高傑作のカマキリを!?」


「虫が最高傑作だなんて。 所詮魔獣の筋肉と虫の触覚合わせただけのキメラでしょ? ちゃんちゃらおかしいわよ」


 狼狽するミアルを他所にメイベルは、いつのまにか持っていた黒色の柄ハンカチで剣についた血を取っていた。


「ぐ、ザンキ。 やりなぁ! たかがネクストチルドレン。 ここで討ち取ったら成り上がりだよぉ!」


「イッテェ。 全く悪党使いが荒いぜ」


 ミアルは、杖を振り回してザンキの背中を突く。 杖の衝撃でザンキは、メイベルの前に出て腰をさすり、剣を抜いて肩に担いだ。


「あら? 次はあなたが相手してくれるの?」


 メイベルは頬に手を当てて、楽しげに微笑む。 _まるで恋バナしよう。と言わんが態度でザンキを挑発した。


「ふざけんじゃねぇ!!」


 ザンキは、腰の剣を抜いて振りかざす。


「あらごめんなさい?」


 憤怒に身を任せたザンキの一撃をメイベルは、華麗に回避して心臓を貫いた。


「ごふっ」


 ザンキの口から血が流れる。 もうソウルスキルの命日伸_ライフオーダーも使えない完全な生命の終わりだった。

 メイベルのレイピアが胸から引き抜かれると、ザンキは、力なく地面に倒れた。



「ミアル最後は貴方だけ。 どうする?」


 メイベルは、剣を払って血を落とし首を傾げる。


「ふん小娘。 奥の手は取っておくものよ。 デーモンコール!!」


 だがミアルの反応は冷静だった。 伊達にオウルド錬金国で暮らし、魔術と錬金術を学んだわけではない。

 ミアルは、杖をかざして持っている魔石にカマキリの死体。 更にはザンキの死体を対価に悪魔を召喚したのだ。


「ぐへへ。 呼んだ?」


 すると細身の悪魔が地面から現れて、その姿を月夜が照らす。


「ふぅん、悪魔召喚ね。 まぁまぁの強さ……え?」


 メイベルが瞬きする間に、悪魔が目の前におり驚いた。 


「俺、強いもんね!」


 そう発言して、悪魔はメイベルの腹を殴り飛ばす。

 気付けばメイベルは、倉庫にある箱の側面にめり込み一瞬気絶していた。

_痛いわね。

 頭からも血を流し、劣勢であった。


「フハハ! どうだい小娘。悪魔の力は!?」


 ミアルが両手を広げて高笑いする。

 その姿はさながら、ショーのダンサーのパフォーマンンスのようで月光もありスポットライトのような優雅さがある。


「ソウルスキル麗華剣爛_ビューティレイ_」


 すぐさまメイベルは第二のスキル麗華剣爛_ビューティレイ_を発動した。

 効果で身体補正と魅力の補正。更には剣術向上もあるバランスの良いスキルなのだ。


「ぐぎゃぁぁ!?」


 メイベルが高速の剣技で残像を作りながら悪魔に肉薄した。

 悪魔は、メイベルの残像に惑わされて困惑し立ち往生。


「あら? 悪魔とはいえ脆いわね?」


 額の傷を無詠唱の回復魔法のヒールで治しつつ、猛攻を仕掛けるメイベル。

 経験と洞察そしてスキルが織りなす、戦術のハーモニーだった。


「ぐぎ! ぐぎる」


 悪魔の体はズタボロで既に絶命寸前まで体力を失っていた。


「さよなら、心臓は貰うわね。 いい研究資料になるから」


 メイベルは、そういいながら細い指を悪魔の胸に突っ込み、ぶちぶちと言わせながら心臓を引っこ抜き自身の魔力蓄積が出来る紫色のバラブローチに収納した。

 心臓を抜かれた悪魔は灰になり消滅した。


「ば、馬鹿な!? あ、悪魔だぞ!?」


 ミアルは狼狽し、尻餅をついた。

 既に魔力は失い、もう反撃も出来なかった。


「あなたのスキルの薬調合ースリバチーは貰っていくわ? いいスキルだもの」


「ま、待て!! ごぶっ!?」


 ミアルの言葉を待たずに、メイベルは手を胸に突っ込んで心臓を貫き、魂を徴収して、ソウルスキル妬身ーネタミーでミアルのソウルスキルを奪った。

 既にミアルの目には生気は無く絶命していた。


「さよなら。 オウルド錬金国の老婆様」


 そう微笑みメイベルは手についた血を舐め取り、魂を蓄積する指輪についている魔力を使い、ワープゲート作って茶会に戻った。

 倉庫には老婆の死体と、命を繋いだ少女だけが残った。

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