暗闇
タマキは、翌日から朝は寝て夜に起きる習慣をつけた。
体には悪いものの、仕方ない。 敵は夜動くのでどうしても体力の温存と魔力循環による体の誤魔化しも考えたが魔力を節約する為に純粋に睡眠をとることにしたのだ。
「やはり、魔力が途切れる。 どこにいるの?」
タマキは屋根上を歩きながらため息を吐く。
相手が魔力を隠すのがうまくて追跡が難しいのだ。
「なぁ。 虫を運んだか?」
「あぁ。 そろそろだぜ」
男達がタバコや葉巻を咥えてニヤニヤと笑っていた。 笑みが気持ち悪くて少し体臭が変で思わず鼻をタマキはつまんだ。
「そろそろ? 何をするつもりなの?」
タマキは、忍足を使って男達の背後をつける。
体臭から恐らく違法薬物や肉を食べて無理矢理強くなっている。
ジュンタが教えてくれたあるぅぴぃじぃの応用で相手のレベルを考えて、二十以上の相手だと推測した。
理由としては自身よりも大きく、筋肉もある。 年齢が三十歳で剣も古いように見えたのでそう推測した。
ジュンタやイーニ、スミレからも相手のレベル及び強さは常に上で自身はレベル十以下と思えと言われて生きてきた。
だからこそタマキもその教えに従い、相手を高く見積もり自身を低く見積もる。
「あっ」
男達が、倉庫の中に入るのを見かけたのでタマキも中に入り物陰から観察する。
「へっ。 オウルド錬金国の虫は最高だぜ」
「ああ、呪詛に機械型。 技術進歩やべぇ。 異世界の知識で戦車や飛行機作ってる国はイカれてるぜ!」
そう言いながら男達が酒盛りをしていた。 人数は五人くらいで酒と薬で体臭がとても臭いが分かりにくい。
恐らく追跡を阻害する術式があるのだろう。
タマキの場合、演算スキルと魔力の感知の鋭さ故にここに辿り着けたのだろうと察する。
でなければバリエンツの衛兵がここに来るはずなのだ。
「どうする?」
タマキが刀の柄に触れて、手を強張らせる。
暗殺は出来る。 だが、悩めば悩むほど敵はバリエンツの人を眠らせる。
だからタマキは、無謀を選んだ。
「貴様らを排除する!」
「なっ?」
「ガキガァ!!」
男達が、タマキの声に反応して獲物を取る。 だが、酒を飲んでいるので足元がふらついてうまく獲物を手に取れなかった。
「ウィンド!」
そう宣言して刀を抜き、風魔法で地面の砂で目眩しを作る。
「うぉ!?」
「前が見えねぇ!」
「ふぅ!」
タマキは、背後に回って二人同時に首を刎ねた。
「ちっ!」
「テメェ!」
男二人が拳銃の弾丸を撃ってきたが、タマキは演算スキルの常時発動により弾丸を避け刀で弾き、その後二人を切り捨てた。
「さぁ、あなただけよ?」
タマキは刀を向けて宣言した。 一人だけあまり酒にも酔っておらず、自身を舐め回すように見る男がいたのでその男の事をタマキは強く警戒した。 一目見ただけで自分よりも強く大柄で、さらに恐らくスキルを持っている。 タマキの知識と演算がそう告げていた。
「ヒュウ! やるなぁ嬢ちゃんだがよ」
そう言って剣を抜き、男は錠剤を噛み砕いた。
「う、うぉぉぉ!!」
男の魔力量が上がりタマキを睨む。 そして、気づけばタマキは床に転がっていた。
「がっ」
地面に転がり蹴られたということにやっと気づいた。 演算が追いつかない。
それだけタマキと相手との実力に乖離があると知った。
「う、あ」
震えて立てない。 恐らく毒があるのだろう。 同時に死の恐怖と実力の乖離よる無力感。
それがタマキの体を震えさせて、立ち上がらせてくれない。
「頬に傷はない……からスキル?」
「正解だぜぇ? 俺のソウルスキルは毒手ードクノテー。 相手の体内に毒を仕込んでいるんだよ」
「あっ、うごほごほ」
「へへ。 毒巡りって来たなあ?」
口から血が溢れる。 視界が赤く染まり恐怖で思考が止まる。
「はっはっ! このスキルで俺は強い奴や生意気な奴をぶっ殺してきたんだ!」
そう男が宣言すると、タマキは力なく倒れた。
「あ、がぁ」
痙攣が止まらない。 血も目から出て辛い。
「イーニママ。 みんな」
幻影が見えて来た。 走馬灯のように記憶が巡る。 するとほっかむりをしたバルメアが出て来た。
「……バルメア様?」
「大丈夫。 お前の体は」
バルメアが何か言おうとするが聞こえない。 だが意識がはっきりとして来た。 弛緩が止まり、血の流れも止まった。
「あれ?」
声も出て立ち上がれた。 腹の痛みも毒で鈍っている。
「なっ!? てめぇどんなスキル使った!?」
「スキルじゃない……これは食事?」
タマキは不思議と推測に辿りついた。 恐らくバルメアの手料理には毒が入っていたのだろう。 数多の抗体が体の中に出来ておりそれはどうやらスキルに対しても有効らしい。
「ありがとうございますバルメア様」
そう言って、タマキは全身をバネにして突撃した。
「く、くそ! てめぇ!?」
タマキは容赦なく男の心臓を貫き戦いに勝った。
「こ……これで」
タマキは刀を杖にして、歩こうとしたその時悪寒が走った。
「えっ?」
心臓が再生していた。 刺した傷口が塞がり男が笑みを浮かべていた。
「わりぃな。 俺一回だけ復活出来んだよ! 一日一回の奥の手ソウルスキル。 命日伸-ライフオーダー」
「う、嘘。 ごはぁ!?」
「テメェスキルひとつしかねぇんだろ? スキル一つと二つじゃよぉ差は大きいぜぇ? 魔力量も肉体の強度もレンガとダイヤモンドぐらい違うぜ? 三つある奴はミスリルって聞くがヨォ」
そう言って男は容赦なくタマキの頭を踏み潰す。
「う、うぅ」
タマキは、男の足首を掴み電流を流して思考を巡らせる。勝つ方法を考えてこの男を殺す。
「うぉ!?」
男は電気に驚き飛び去り、剣を構えた。
「はぁ。ゼェごほごほ」
体がボロボロで痛く、毒での誤魔化しも無理になって来た。時間が経てばタマキは死ぬだろう。
「はぁ……はぁ。 エレック」
タマキは、雷魔法を刀に流して青眼で構える。
「……これしかない。 ソウルスキル努力真面目-マジメ-」
タマキは頭から血を流して、目を赤く染めながらも敵を見据えて感覚を研ぎ澄ませる。
スキルの解放宣言を行った事で時間の流れが緩慢になり、相手の動きがよく見えた。 普段より黒くノイズが走って辺りが、ぶれて見えた。
_この一撃で自身は死ぬかもしれない。
だがそれでも街を守るべく命を賭ける。
「そこだぁぁぁ!!」
右脇の締めが甘かったので右下から横へ刀を滑らせて男の体と下半身を別れさせた。
電動による細胞破壊もあり簡単に切れた。
「え?」
男は何も分からずに目を点にして、絶命した。
「あ、ごほごほ」
タマキは、咳き込んで血を吐きそのまま地面に倒れた。 抗体があるとはいえ体は悲鳴をあげている。 一応解毒剤を飲まなければタマキは死んでしまうだろう。
「さ、寒い」
感覚麻痺もあり、寒気がする。 血を流しすぎたのだ。 毒の症状による出血がタマキの体を蝕んだ。
「……みんな」
タマキが最後まで思い浮かべてたのはナナシノ国の皆の顔だった。 そうしてタマキは最後まで握った刀を手放して、意識を失った。




