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声を拾って  作者:
3/60

2.

小柄な女性が部屋を出ていった後の彼は、更に沈み込んでしまったかのようでした。彼の部屋は、彼の匂いが満ちていて、私にはひどく居心地の良い空間のように思えました。飴色の木で囲まれた彼の部屋には、生気のない彼とは対照的に緑が多い空間でした。緩やかに香る命の匂い。緑の多い空間に異彩を放っていたのは、育ち過ぎた枝垂れ藤。開け離れた窓の向こうには見事な枝垂れ藤がゆるりと揺れています。近くには川が流れているのか私にも居心地の良い風が吹き込んできました。ひんやりとした空気が肌を撫でます。ふと景色に気を取られていると、微かな声が聞こえてきて、私はぱっと振り返りました。藤色の瞳の小さな男の子がじっと私を見つめていました。私は、そっと目線を動かすと彼を見つめてなるべく柔らかく聞こえるように気を付けながら、男の子に話しかけました。


「もしかして、今の、君が話しかけてくれたの?」

枝垂れ藤の精霊は肯定するかのように頷きます。まだ、幼い雰囲気の男の子です。きっと生まれてまだ数年程しか経っていないのでしょう。


「ん、お姉さん、あの、もしかして、精霊さんですか?」


私たち精霊は、特殊な例を除いて、自然の中から偶然に生まれてほぼ孤独の中で生活をします。このように別の精霊に出会うことなど本当に稀で、私はさすがに初めてではありませんが、男の子は恐らく私が初めて会った精霊だったのでしょう。肯定すると嬉し気に目を輝かせました。美しい藤色の瞳が光を反射してきらきら輝きます。ふっくらとした頬は薄く色づき幼い頬は柔らかそうです。


「僕、初めてです。あえてうれしいです」


きっと、初めて精霊にあえてうれしいと言っているとすぐに察して私も嬉しくなりました。数少ない同胞に出会えることは私にとっても嬉しい経験です。


この場所は、精霊がいることからも考えてやはり気が澄んだ場所なのでしょう。

私は、すぐ男の子に尋ねました。


「私も嬉しい、仲良くしてくださいね。……同胞の君が知っている範囲で構わないのだけれど、君は、あの青年が何故あんなにも気落ちしてしまっているのか、知りませんか?」


男の子は、ふっと哀しそうな顔をすると私に彼のことをつとつとと話してくれました。

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