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3.
「お姉さんは、気づいたと思うんです。この部屋の違和感に。彼の様子に」
男の子は、そう前置きをして哀しそうな顔をします。
僕のわかる範囲でしか言えませんが、と、必死に拙い口調で話す彼の姿を目にして、私の眉がわずかに顰められました。
私は、小柄な女性が先程の会話の中で口にしていた唯さんという女性が青年の様子に関係していると予想していたのですが、男の子はそれとは違う視点で彼の様子の説明をすると気付いたからです。
そう、この居心地の良すぎる清廉な空気が満ちた部屋の違和感。
濃密な緑から放たれる強い命の匂い。
私が長い間、恋焦がれ追い続けてきた透明な音をキャンバスから生み出せる青年の手。
この部屋を内包するように包み込むように守るように満たされた安心する青年の匂い。
人には強すぎる、それ。
そして、それに対照的な生気のない青年。
男の子は知っているのでしょう。
そう、精霊なら、本能で知っているのです。
私も知っていました。見たことはありませんでしたが、濃密な空気感に知っていると本能が叫びます。同時に、私は更に青年が哀れになります。
「彼は、咎人です」
男の子は、哀し気な顔をしながらそう、告げました。




