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声を拾って  作者:
2/60

1.「失望の理由」

突然の出会いから数時間が経ち、私は、とても哀しい気持ちで、叫び疲れ、激しい感情の発露 出し尽くした彼が、まるで赤子のように身体を丸めてそのまま寝入った姿を見つめていました。


彼のほつれたガサガサの肩までの髪や、整えられることを忘れられた無精ひげ、疲れ切り肌に刻み込まれたような深い皺、擦り切れたような衣服からは判断がつかないほど、彼の肌は綺麗でした。


年齢は、恐らく肌の感じから見て、20代後半ぐらいです。切れ長の眼尻から一筋の涙がこぼれて、私は、彼のあまりの哀れさにまた涙をこぼしてしまいました。


なにがここまでこの男性を追い詰めたのか、私はこの初めて会った彼に強い興味を抱いていました。

探し続けた、あんなに何年も何年もどれほど年月が経ってしまったのかもわからなくなるほどに、恋焦がれて探し続けたあの透明な音を生み出すその手に、疲れ切った彼の姿に、よくわからない感情がごちゃ混ぜになり、私は、彼の手にすり寄りました。


触れることもみられることもないその様子を咎めるものはどこにもおらず、私は、孤独の中でやっとみつけた小さな温かさに対する希望だけをみながらそこでそうしていました。


どれくらいそうしていたでしょう。

私のもとに、いえ、疲れ切った彼のもとに、女性が近づいてきました。

小柄な彼女は、(きっと私よりも小柄です)私の水色の髪をすり抜けて、彼をゆすると幾分か苛立った口調で彼に呼びかけました。


「怜、怜!いい加減にして!いつまでも、そんな状態で!そんなことをしても、唯さんは帰っては来ないのに!いい加減にしてよぅ、お兄ちゃんがそんなんじゃ、いつか、私まで、まいっちゃうよ、お願い、お願いだから、お兄ちゃん、前のお兄ちゃんに戻って」


徐々に感情が高ぶっていくことを表すようにその女性は、綺麗な肩口までの黒髪をぐしゃぐしゃにしながら、顔をぐしゃぐしゃにして、最終的には彼の傍に蹲りました。彼ほどではないにしても、この女性もなにか痛みを抱えていることが私にも伝わり、事情は分からないままにツキンと私の胸を痛めました。


女性は、無反応のまま茫然と起き上がった彼を目にすると、その様子を見ていることに耐え切れなくなったのか、きっと彼のためだろうサンドイッチとパックの飲み物を投げつけると、ばたばたと踵を返して部屋を出て行ってしまいました。



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