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リアはリンの私室へ戻ると、しばらく隣で眠るリンを眺めた。そっと頭を撫でた。リアルに嫉妬して甘えるリンはどんな顔なのだろうと思った。それを知るリアルにリアは嫉妬し、リアの知らないリンの一面を可愛いと思った。
リアが朝目を覚ますと、リンが起きていて、リアの頭を撫でていた。リアはあくびをした。
「今日も早いですね、リン」
「今日は夕暮れの部屋へ行きましょう、リア。私が創った部屋の中でも美しい部屋ですよ」
「分かりました」
リアはリンが子どものように喜々としてリアを誘う様子に、幸福感が心にじわりと広がった。
リンは朝食の後、リアと手を繋いで城の奥へと進んで行った。古く歴史を重ねた扉の前で立ち止まった。きっと、部屋が創られたのは古いのだろうとリアは思った。リンは扉を開けた。夕闇色の草原だった。顔を上げると空が広がっていた。空は橙色で、薄い雲が夕日の色に染まっていた。気温は程よく、風は無かった。リンは草の上に座った。リアは隣に腰を下ろした。リンはリアの肩を抱いた。
二人はしばらく無言で夕焼け空を眺めていた。橙色は澄んでいて、地は影色が広がっていた。
「きれいですね、リン」
リアは二千年前の旅を思い出した。よく旅の中で一緒に夕暮れ時を歩いたものだった。リンは同じことを思ったのか、一言告げた。
「懐かしいでしょう、お師匠」
「そうですね」
リアはにこやかに肯った。橙色は、やがてピンク色に変わっていった。一日の残り時間の短さを惜しみ、夜が迎えに来ることを愉しみに思わせる色だった。リアは美しい薄紅色の空を、時を止めて見ていたい気分になった。リンはリアが空に見とれていることを見て、楽しそうに言った。
「私が時間を止めましょう」
地の淵では紫色が滲んだまま、空は時間が止まった。リンは「リア」と呼び、振り向いたリアに唇を重ねた。影色の中で、リンはじっくりと口付けを贈った。リンの火照った心は、リアに移った。リアは陶酔した。リンはリアから顔を離すと言った。
「夫婦とは同じ夕暮れを見て、情緒を共にするものです。時間がある時は、たまにこの部屋に来ましょう」
「はい、リン」
リアはいつもリンから聞く夫婦観が好きだった。リアはリンと夫婦になれて嬉しい、と思った。リンはリアの耳や首筋にキスを贈った。いつの間にか空は静かに時間が流れていた。空は紫色が広がり、地は影が濃くなった。そこで時間は止まった。まるで花火の最後の光を止めたようだ、とリアは思った。リアはこの部屋が好きになった。




