74
リンの部屋はリアが夢で見た時と同じだった。リアは実際の部屋を見て、不思議な感覚になった。リンはリアと部屋に入ると、抱きしめて口付けをした。離れていた時を取り返すように、激しく、長く、深く語った。リアは口付けに甘い味を覚えた。口付けは夢より熱かった。リアは心が高揚した。リンは名残惜しげに口を離すと、赤い目を細めてリアを見つめた。
「しばらくは城から離れませんか、リア?」
リアは酔いに潤う緑の目で答えた。
「はい。週末は馴染みの町や城へ行くかも知れませんが、リンと一緒にいられる日は城にいます。週末も城にいられるよう、慣れようと思っています。チェスが始まって終わるまで、長逗留する仕事はないです。リンと一緒に居られます」
リンは子どものようににこりと微笑んだ。
「それでは、私はたくさんリアを愛でましょう」
リンはリアの額に軽く唇で触れると、リアを抱きしめたまま一緒に寝台に座った。リンは優しくささやいた。
「私はリアの足を癒して良いですか?」
リアは昔リンと一緒に旅をしていた時によく脚をマッサージしてもらっていたことを思い出した。リアは肯った。
「懐かしいですね。旅ではよく足を使ったので、宜しくお願いします」
リンはリアの長靴を脱がせ、足に浸ける湯の入った桶を現し、そっとリアの足に浸した。湯に浮かべた香草の心地良い香りがふわりと広がった。リアが湯に足を浸けている間に、リンはリアの左手を取り、手を揉んだ。リアはリンの温かい手の感触が心地良かった。夢では分からない肌の感覚に、リアは帰還を実感した。
リンがリアの両の手を揉むと、足に浸けた湯の桶を外し、清潔な布を現して足を丁寧に拭いた。リンは揉みほぐす時に使うパウダーを現し、手に馴染ませて、リアの左足に触れた。足の裏を押し、表をさすり、足の指に力を込めて触れる。リアはパウダーのすべすべ感が気持ち良く、リンが指で押す場所が、体の疲れた部位に伝わった。
リンはリアのズボンの裾を上げ、膝下まで施術した。右足も同じように癒やすと、手を洗い、リアの隣に座った。リンは言った。
「久しぶりだったでしょう? リアの疲れた部分は変わらないですね」
リアは足を丁寧に扱われて穏やかな気持ちでリンに礼を伝えた。
「リンの手業も変わらないのですね。僕のことを知っているのはリンだけです」
リンは心が弾み、リアの肩を抱くと、寝台の真ん中に乗り、一緒に倒れて横になった。リンはリアを抱いたまま体をずらして頭を枕に乗せた。リアは、枕元に若草の香りを感じた。床の香りはリアにリンの生活空間にいることを感じさせた。リンの眠る場所を意識し、リアはリンに包まれていると感じ、満足感に悦んだ。リンは再びリアに唇を重ねた。ゆっくりと、二人の時間を愛おしむように。リンはリアと心を繋げ、心を溶かし合い、高揚感を分け合った。リアとリンは夫婦の営みを交わし、熟れた時間を共にした。




