69
夢の時間だった。リンは自分の私室の寝台で隣に座るリアに言った。
「お師匠、私が付けた魔術の跡から私に愛情を送る時、強気ですよね。積極的なリアの愛情に、私は強い悦びを覚えます。私は受け身になれることが嬉しいのです。リアから直接口付けをして頂きたいのですが、高望みでしょうか?」
リアははにかんだ。
「リン、僕は面と向かってだと恥ずかしいです。魔術の跡は、僕の気持ちが昂ぶっていて、リンが見えないからやっています。最初は僕の自己満足でした。後からリンに何をしていたかを聞くと、とても恥ずかしく思っています」
「私はリアが一人で私への愛を訴えている所を見ることができたら悦んでいたでしょう。リアからの愛は私を恍惚とさせます。ここで私をもっと悦ばせて下さいませんか?」
リンからの懇願で、リアは小さくこくりと頷いた。
「少しだけでいいなら、やってみます」
リンは口元を綻ばせて、目を閉じた。リアはリンに唇を重ねた。優しく、穏やかに、リンの口で恋慕の語らいを綴った。リンはリアの落ち着いた愛情に心が酩酊した。酔いは心地良く、飲み慣れた美酒の味がした。リアは顔を赤く染めながら、口を離した。
「これで良かったですか?」
リンは眼を潤ませながら、リアを見た。
「返事は私の口付けで返しましょう」
リンはリアにお礼の口付けを交わした。ゆるりと、じっくりと、思慕を込めて。口付けが終わると、リンは再びリアに提案した。
「私はリアがアンクレットからの伝達でどう感じているか知りません。ここでアンクレットとイヤーカフを交換してみませんか? リアは嫌でなければ、私のアンクレットに触れてみませんか?」
リアは戸惑った。アクセサリーの交換は倒錯的だった。リンは多分アンクレットに唇を触れて、舌で舐めている。リアはリンが口に触れた物を自分も使うことに恥ずかしさを覚え、逆に夫婦として共有してみたかった。リアは再びこくりと頷いた。
リンは口元を緩め、足首からアンクレットを外すと、魔術できれいにした。リアはイヤーカフを外し、リンの足飾りと交換した。リンは耳飾りを右耳に装着した。リアは足飾りを撫でてみた。リンの耳に魔力が届いた。リアはアンクレットを口元に運び、舌の先でぺろりと舐めてみる。リンの耳に熱が触れた。リアは銀の輪を舌先で舐め続けた。リンは耳にリアの熱が伝わり、愛情表現に心が奪われた。リンは恍惚とした。リアは口を外し、唇で足飾りを吸った。リンは耳にこそばゆい感覚が走った。リアは再び唇を軽く付けると、リンを見た。
「どう、でしたか?」
「心地良かったです、お師匠」
リンはイヤーカフを外して微笑んだ。顔に多幸感が表れていた。リアとリンはそれぞれの装身具を交換した。リンは寝台から立ち上がり、桶に水を入れ、アンクレットを洗うと、足首に戻した。
リンはそろそろ目覚めの時だと気付き、リアに言った。
「また三日後に会いましょう」
「はい、リン」
リアはにこやかに答えた。
リンは挨拶が終わると、目が覚めた。リンは夢の多幸感にしばらく浸った。




