68
63話の続きです。
リンは夢の中でリアがリンの私室で寝台に座っているのを見つけると、隣に座り、無言で抱きしめた。リアは、リンが一昨日の夜に、リアの愛情をすぐに返せなかったことの詫びなのだと察して、そのまま抱擁に身を任せた。リンは言った。
「リアが城に帰ってきたら、三人の約束を改めて見直しましょう。七月にはチェスの準備が始まり、私とリアルの時間は長くなります。私はリアとの時間に飢えています。
私はリアとリアルに、もう一人の伴侶の付き合いを見せないようにしてきました。リアは望まないことを私は承知していますし、私はプライベートを明かすことを望んでいません。リアルはリアとの付き合いを見せても良いと言われましたが、リアルにもまだ難しい所があるようです。また、リアルにだけ全てを伝えては、リアがリアルとの対等な立場から離れます。それは望みません。
私はリアとリアルの時間が対等になれることを欲しています。ですが、そうするにはまだ時間が必要なことを許して下さい」
リンは心の内を伝えた。言葉は切実であり、誠意があった。リアはリンの王の側近をしていた頃の顔を見た。リアは一言お礼を言った。
「ありがとうございます、リン」
リンは無言でリアを抱く腕に力を込めた。二人は心を温め合った。リンは表情を緩め、軽口を流した。
「お師匠が魔術の跡で送って下さる愛情は、大胆ですね」
「僕はリンにどう受け止められているか見えないので分からないのですが、何かありましたか?」
リンは口元を緩めた。
「いいえ、心配しないで下さい。私はいつも悦び、高揚しています。今日も魔術の跡を付けましょう」
リンはそう言うと、リアの左手首を取り、手をかざした。今回は、リアが跡を吸う時、リンに刻む跡がリアルには見えないようにこっそり魔力を調整した。リンは跡を付け終わると、跡を撫でた。それからリアの手首を口元に持っていき、跡に唇を付けた。リアはふと唇に温かい魔力が触れる気がした。リンは口につけた跡を舌で舐めた。リアは口付けを交わしたような陶酔感が頭を包んだ。リアは顔を赤く染め、リンに言った。
「いつもリンはこんな感じで伝わっていたのですね……」
「ええ、そうです」
リンはにこりとすると、静かに跡を吸った。リアは首筋にリンがいつも長くキスをしてくれる時の感覚が走った。リアは気持ち良くリンの愛情に身を任せた。
「もしかして、僕はリンの首筋に跡を残してしまいましたか?」
リンは微笑んだ。
「リアからの愛の跡は、私だけのものです。リアルには見えないようにしています。リアと私の秘密にして下さい。私は秘密が好きなのでしょう」
「……分かりました。恥ずかしくなりますね」
リンはリアの手首から、手のひらに唇を付けた。それから舌で触れた。リアはこそばゆいような、大切にされているような感覚がした。リンは赤い目で静かに見つめた。
「お師匠、私はお師匠が城へ戻るのを待ち焦がれています。帰ってきたら、料理を用意します。ゆっくり一緒に過ごしましょう」
リアは応えた。
「はい、僕もあともう少し、城へ帰るのを待ちます。帰ったら、できたら体を癒して下さい」
リンはにこりとした。
「ええ、そうしましょう」
リンはそろそろ夢の時間が終わる時だと察知した。空間は霧のように溶け、リンは寝台で目を覚ました。リンは次の夢の時間を待ちわびた。




